コスト関連
【業界別動向】原材料高騰時代の自動車業界/実践すべきコスト削減対策を解説
近年、自動車業界は電気自動車(EV)の普及や自動運転技術の進化といった技術革新に沸く一方、原材料価格の高騰という課題にも直面しています。このコスト増加は、製造から販売まで多くの段階で影響を及ぼし、特にカーディーラーにとっては経営に大きな負担となっています。本記事では、カーディーラーがコスト削減を実現するための具体的な方法と、そのメリットを分かりやすく解説します。
原材料価格高騰の背景
1.世界的な供給チェーンの混乱
世界的な供給チェーンの混乱は、パンデミックやさまざまな国際情勢を要因に主要な原材料の生産国や供給路に影響が出ることで生じています。これにより、主要な原材料の生産国や供給路が影響を受け、需要に対して供給が追いつかない状況が続いています。特に、中国やロシアなどの大国からの原材料供給への依存が露呈しています。サプライチェーンの混乱は、自動車産業全体にも影響を及ぼしています。
2.需要の急増
需要の急増も原材料価格高騰の要因です。特に、ハイブリット車、電気自動車(EV)の急増に伴い、リチウム、ニッケル、コバルトなどのバッテリー材料の需要が増大しています。これらの材料は従来の内燃機関車(ICE)よりも多く必要とされ、需要と供給のバランスが崩れ、価格が上昇しています。
国内における乗用車の販売状況について、燃料別登録台数(輸入車を含み、軽乗用車を除く)の内訳を見ると、2022年はハイブリッド車が(HEV)49.0%で、ガソリン車の42.2%を初めて上回っており、2022年の新車登録車の半分がハイブリッド車(PHEVを含む)となっています。
3.環境政策と規制の強化
環境政策と規制の強化により原材料価格が上昇し、自動車業界では温室効果ガス削減やカーボンニュートラルに向け、リサイクル可能な素材や低炭素材料の導入が進められています。しかし、低炭素材料はコストが高く、神戸製鋼の「コベナブルスチール」は通常の2~3倍の価格となり、トヨタや日産の一部車両に限定的に採用されるにとどまっています。
参照:素材メーカー各社 脱炭素の取り組み強化、課題はコスト(日刊自動車新聞)
カーボンニュートラル化を目指す企業の例として、ホンダは国ごとのEV需要の違いを考慮し、地域別に電動化戦略を進めています。
中国:2027年までに10機種のEVを投入し、2035年までに全モデルを完全EV化します。
北米:「Prologue」と「ZDX」を2024年に発売し、2025年以降は中大型EVやEV専用プラットフォームを順次拡大。また、充電ステーションへの投資も行います。
日本:2026年までに4機種のEVを投入。2024年にN-VANベースの軽商用EV、2025年にN-ONEベースのEV、2026年には小型車カテゴリーの2機種を予定しています。
参照:【図解】3分で分かるHondaの四輪電動化戦略〜電気自動車を取り巻く環境とHondaの目指す先とは〜(Honda公式サイト)
自動車業界への影響
1.製造コストの上昇と利益率の圧迫
製造コストの上昇と利益率の圧迫は、自動車業界における深刻な課題です。原材料価格の高騰がアルミニウム、スチール、銅などの重要な素材のコストを押し上げ、製造コストを増加させています。このため、メーカーは価格を引き上げざるを得ず、市場競争が激化する中で利益率の圧迫に直面しています。結果として、一部の企業では十分な利益を確保することが難しくなり、新技術やモデルの開発に必要な資金を集めるのも困難になる可能性があります。
2.技術革新への影響
技術革新への影響も重大です。原材料の価格上昇がEVバッテリーなどの重要部品に及ぶと、EVの価格競争力が低下し、一部の市場で普及に遅れが生じる恐れがあります。さらに、高コスト化した素材は、軽量化や高性能化を目指した新素材の採用に制約を与え、革新のペースを鈍らせる要因となります
自動車業界のコスト削減方法
自動車業界で取り組めるコスト削減方法は多岐にわたりますが、ここではその中から3つの具体的な方法を紹介します。自社でも取り組める内容となっていますので、出来ることから取り組んでいきましょう。
1.ITシステムの統合
販売、在庫、顧客管理などの各業務をシステムで一元管理できるよう、ITシステムを統合することで、手作業の削減やデータの正確性向上が図れ、運用コストを大幅に削減できます。また、リアルタイムでの情報共有が可能になり、意思決定のスピードも向上します。ITシステムの統合について、以下に具体的な方法と効果を詳しく説明します。
1.業務の一元管理と自動化
従来、カーディーラーでは販売管理、在庫管理、顧客関係管理(CRM)、整備管理などが別々のシステムで運用されることが多く、情報の分断が発生していました。統合システムを導入することで、これらの業務を一つのプラットフォームで管理できるようになり、以下のような効果が期待できます。
● データの自動更新:例えば、在庫データが更新されると、自動的に販売システムやCRMにも反映されるため、手動での入力やデータ転送にかかる時間と労力が削減されます。これにより、ヒューマンエラーのリスクも低減します。
● リアルタイムでの情報共有:販売部門、整備部門、管理部門がリアルタイムで同じ情報を共有できるため、在庫確認や顧客対応がスムーズに行え、迅速な意思決定が可能となります。
2.顧客体験の向上
CRMシステムの統合により、顧客の情報(購入履歴、整備履歴、問い合わせ内容など)を一元的に管理できます。これにより、以下のようなメリットが生じます。
● パーソナライズドサービス:顧客の購入履歴や嗜好に基づいたサービス提供が可能となり、顧客満足度が向上します。例えば、次回の車検時期に合わせたリマインダーや、過去の整備履歴に基づく最適なサービス提案ができるようになります。
● マーケティング効率の向上:顧客データに基づくターゲティング広告やキャンペーンを展開しやすくなり、効果的なマーケティング活動が実現します。
3.コスト管理と予測の精度向上
ITシステムの統合により、経営管理のためのデータを集約し、コスト管理と予測の精度を高めることができます。
● データ分析の強化:売上データ、在庫データ、整備コストなどの情報を統合して分析することで、どの車種が売れ筋なのか、どの部分でコストが発生しているのかをより正確に把握できます。これにより、経営資源の最適配分が可能になります。
● 予算管理の効率化:各部門の収支情報を統合して予算管理を行うことで、予算の超過や不足を早期に察知し、適切な対策を講じることができます。これにより、無駄な支出の抑制や予算配分の最適化が図れます。
2.サプライチェーンの効率化
サプライチェーンの効率化は、仕入れや物流の最適化によるコスト削減につながります。例えば、需要予測精度を高めて在庫の適正化を図ることで、余剰在庫や欠品のリスクを低減し、在庫保管コストや販売機会損失を減らします。また、サプライヤーとの協力関係を強化することで、リードタイムの短縮や輸送コストの削減も可能です。以下に具体的な方法と効果を詳しく説明します。
1.発注プロセスの自動化
発注業務の効率化により、仕入れコストを削減します。
● 自動発注システム:在庫が一定の水準に達した時点で自動的に発注が行われるシステムを導入することで、発注ミスやタイムラグを防ぎます。例えば、特定の車種の在庫が少なくなった際に、システムが自動的に最適な数量を発注するように設定すれば、注文処理にかかる手間や時間を削減し、人的エラーを減らせます。
● 発注先の統合と集中購買:発注先を統合し、集中購買することで仕入れ価格の引き下げを実現します。また、サプライヤーとの取引条件を一元管理すれば、より有利な条件での契約交渉が可能になります。
2.物流と輸送の効率化
物流プロセスの最適化により、輸送コストの削減を図ります。
● 輸送ルートの最適化:配送ルートの最適化ソフトウェアを利用して、輸送ルートを効率化します。これにより、輸送距離を短縮し、燃料コストや配送時間を削減します。また、バックホール戦略を採用し、配送後の空荷の利用を最適化することで、輸送効率を高めます。
● 共同配送の活用:他のカーディーラーやパートナー企業と共同配送を行うことで、輸送コストのシェアリングが可能になります。これにより、個別配送よりも効率的な輸送が可能となり、コスト削減につながります。
3.エネルギーコストの削減
エネルギーコストの削減は、店舗やショールームのエネルギー効率を改善することで実現します。LED照明の導入や省エネ設備の設置により、電気代を削減し、長期的なコスト減少を図ります。加えて、スマートメーターの活用し、エネルギー使用状況を詳細に把握すれば、さらなる省エネ対策も可能です。
1.エネルギー効率の高い設備の導入
省エネルギー機器への投資には、初期費用がかかるものの、長期的にはコスト削減につながります。
● LED照明の導入:オフィスビルでの照明エネルギーは夏季は23.1%、冬季は29.8%をしめています。蛍光灯からLED器具にリニューアルすることにより、同じ台数で大幅な省エネになります。例えば、オフィス・会議室の28台の蛍光灯をすべてLEDに変更すると、年間で約158,800円のコスト削減につながります。
参照:オフィスの照明をLEDに交換 省エネ性や照明制御のポイントをご紹介(LED照明ナビ)
●高効率HVAC(暖房・換気・空調)システムの導入:最新の高効率HVACシステムを導入することで、空調にかかるエネルギーを削減できます。温度センサーと連動した自動制御機能を持つシステムを導入すれば、空調の無駄をなくし、エネルギー削減が期待できます。
● モーションセンサーとタイマーの利用:人感センサーを使えば、人の出入りが少ない場所の照明や空調を自動でオン・オフするように設定できます。これにより、無人時の無駄なエネルギー消費が防げます。
2.エネルギー消費行動の見直し
日常的なエネルギー使用を見直すことで、無駄な消費を抑え、長期的なコスト削減につなげます。
● エネルギー効率の教育と意識向上:スタッフに対してエネルギー効率の重要性を教育し、具体的な節電行動を促します。例えば、業務終了後に照明や空調をオフにすることを徹底させる、使用しない機器の電源を切るなどの行動を奨励します。
● エネルギー使用ポリシーの策定:企業全体でエネルギー使用に関するポリシーを策定し、全社員に徹底させることで、組織的にエネルギー消費を管理します。例えば、エネルギー使用のガイドラインを設定し、定期的に見直すことで、効果的な節電を図ります。
賃料削減でコスト削減が効果的
カーディーラーにとって賃料の負担は、毎月の固定費用の中でも特に大きな割合を占めます。在庫管理やエネルギーコスト、スタッフの労働効率向上など、さまざまなコスト削減方法がありますが、賃料の見直しは即効性があり、大きな経費削減につながる方法です。
賃料を削減することで、毎月の固定費が直接削減され、余剰資金が生まれます。この余剰資金を活用して、新しい店舗の開設や既存店舗のリニューアル、最新の設備導入、効果的なマーケティング施策などに再投資することが可能です。結果的に、賃料削減は単なるコストカットに留まらず、店舗の競争力を高め、事業の成長を促進する重要な戦略となります。
賃料削減に向けて、まずは賃料の適正価格を把握しよう
現在の賃料が市場価格に適しているかどうかを確認するためには、競合店舗や同地域の賃料相場を詳細に調査しましょう。
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