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【業界別動向】カラオケ店運営のコスト削減方法とは?今すぐ実践したいステップを紹介
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日本人がこよなく愛する文化の一つ、カラオケ。友人と楽しく過ごすひとときや、日頃のストレス発散、仲間との絆を深める場になるなど、その魅力は多岐にわたります。しかしながら、近年は少子高齢化や娯楽の多様化といった社会構造の変化、そして追い打ちをかけるような新型コロナウイルス感染症の流行など、カラオケ業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。生き残りをかけて、各店舗はさまざまな対策を講じる必要性に迫られています。
カラオケ業界の現状と課題
カラオケ業界は、新型コロナウイルス感染拡大で大きな打撃を受けましたが、2022年度には業績が急回復しました。東京商工リサーチ(TSR)が全国の「カラオケボックス運営企業」124社の業績を調査した結果、売上高は前年比38.5%増と大幅に改善し、利益も3年ぶりに黒字転換しています。
2022年度の売上高は2,252億8,700万円で、コロナ禍前の2019年度の売上高(2,713億2,100万円)の約83%に回復しましたが、全面回復にはまだ至っていません。また、2022年度のカラオケ参加人口は3,240万人で、2019年度の約70%にとどまっていますが、外出機会の増加により前年より650万人増加しました。
TSRの2022年度の売上高調査では、124社中、売上高が「1億円未満」の企業が半数近くを占める一方で、「100億円以上」の大手4社の売上高が全体の66.7%を占めていることも明らかになりました。
参照:「カラオケボックス」運営124社の業績が急回復 ダーツ、VRカラオケなどサービス展開で利用客数に差(東京商工リサーチ)
カラオケ業界の最新トレンド
カラオケ業界では、コロナ禍を契機に大手を中心として、カフェやレストラン、居酒屋に対抗するため、カラオケ利用だけでなく飲食分野の強化にも取り組む企業が増えてきました。また、ダーツバーやビリヤードバーの併設、VRカラオケ、プロ仕様のスタジオ撮影・収録施設など、新たなサービスを次々と提供する動きも見られます。
コロナが5類に移行し、感染対策が定着するにつれて、利用者数も回復傾向にあります。しかし、少子高齢化により将来的な利用者の減少が見込まれることは、業界全体の課題となっています。こうした中、大手企業は設備拡充や新サービスの提供を積極的に進めていますが、集客力や資本力に課題がある中小企業には難しい状況が続いています。
カラオケ店舗運営における実践的なコスト削減方法
コスト削減は、経営改善に向けた重要な第一歩となります。まずは現状におけるコスト構造を把握し、無駄な支出がないか、改善できる点がないかを分析することが大切です。その上で、具体的なコスト削減策を計画的に実行していくことが求められます。
定期的な設備メンテナンスによる長期的なコスト管理
カラオケ機器は高額で、故障時の修理費もかさみやすいため、定期的なメンテナンスが重要です。適切なメンテナンスを実施することが機器の寿命を延ばし、長期的なコスト削減につながります。また、設置環境に配慮して埃や湿気から機器を守り、利用状況に応じたメンテナンスを行うことで、故障リスクを最小限に抑えることが可能です。
店舗レイアウトの工夫
限られたスペースを最大限に活用し、顧客満足度を維持しながらコスト削減を実現するには、戦略的な店舗レイアウトが不可欠です。
①スペースの有効活用による賃料削減
カラオケ店における賃料は大きな固定費の一つです。そこで、デッドスペースを減らし、各部屋の面積を最適化することで、賃料負担を軽減できます。例えば、通路幅を見直したり、収納スペースを工夫したりすることで無駄なスペースを削減できます。また、壁面を活用した収納棚を設置すれば、部屋を広く見せる効果も期待できます。
②個室数の最適化
顧客ニーズを分析し、需要の高い部屋タイプを中心に配置することで、稼働率が向上できれば、結果的にコスト削減につながります。例えば、少人数向け個室の需要が高い場合は、その割合を増やすことで、効率的な運用が可能となります。
③動線を意識した設計による人件費削減
従業員の移動距離を最小限に抑えるレイアウトにすることで、業務効率が向上し、人件費削減につながります。例えば、ドリンクカウンターを店舗の中央に配置したり、部屋の配置を工夫したりすることで、従業員の移動距離を減らせます。
効果的な集客策とマーケティング戦略の実施
効果的な集客策として、割引キャンペーンや期間限定メニュー、ポイント還元サービスを展開し、顧客の来店意欲を高めます。また、SNSを活用した情報発信やターゲット層に合わせた広告展開を通じて、カラオケ店の認知度向上と新規顧客獲得を図り、収益性を向上させます。
デジタル化・自動化による効率化
デジタル技術や自動化システムを導入することで、業務効率化を図り、人件費削減や顧客満足度向上を実現できます。
①会計システムの自動化
セルフレジを導入することで、会計業務を効率化し、人件費削減に貢献できます。セルフレジの導入は、顧客の待ち時間短縮につながるため、満足度向上も見込めます。さらに、会計データの自動集計による業務効率化も期待できます。
②ドリンクオーダーのオンライン化
各部屋にタブレット端末を設置し、顧客が直接注文できるシステムを導入することで、注文受付や配膳にかかる人員を削減できます。注文システムは、注文履歴の確認や追加注文のしやすさなど、顧客にとっても利便性が高い点も魅力です。
③ロボットによる配膳
配膳ロボットを導入することで、従業員は他の業務に集中できるようになり、人材不足の解消やサービス品質の向上につながります。また、エンターテイメント性も高いため、顧客の注目を集めることも期待できます。
省人化のための業務フロー見直し
従来の業務フローを見直し、効率化を図ることで、人材不足に対応しつつコスト削減が実現できます。
①予約受付の外部委託
電話対応や予約システムの管理などを外部に委託すれば、人件費削減と同時に、従業員は接客などのコア業務に集中できる環境を整えられます。
②清掃業務の効率化
清掃業務のスケジュール管理や担当者の明確化により、効率的に作業を進められます。また、清掃ロボットを導入すれば、さらなる効率化と人材不足の解消につながります。
③マニュアル作成による業務の標準化
業務マニュアルを作成し、従業員全員が同じレベルのサービスを提供できる体制を構築することで、サービス品質の向上と人材育成の効率化を実現できます。また、マニュアル化によって、新人従業員への教育コスト削減も期待できます。
コスト意識を持ったサプライヤーとの契約の見直し
カラオケ店の運営には、ドリンクやフード、備品などさまざまなものを仕入れる必要があります。これらの仕入れコストは、利益に直接影響を与えるため、少しでも削減できる余地がないか、常に意識することが重要です。そこで有効なのが、既存のサプライヤーとの契約を見直し、より有利な条件を引き出す努力です。
既存契約の見直しポイント
まずは、現状における契約内容を細かく確認することから始めましょう。契約期間、価格、最低発注量、支払い条件、配送費用など、さまざまな項目が存在します。長年同じサプライヤーと取引している場合、契約内容が古いまま放置され、現在の市場価格や自店の状況に合わなくなっているケースも少なくありません。
例えば、ドリンクの仕入れ価格が他社と比べて割高になっていないか、確認する必要があります。また、最低発注量が設定されている場合、実際の発注量と照らし合わせ、余剰在庫が発生していないかの確認も必要です。もし、余剰在庫が発生している場合は、最低発注量の見直し交渉を検討しましょう。
テクノロジー活用による効率化
カラオケ業界においても、IoTやAIといった最新技術の活用が、業務効率化や顧客満足度向上に貢献する時代となりました。従来の人手に頼った運営方法を見直し、テクノロジーの力を借りることで、コスト削減とサービス向上という両輪を回すことが可能です。
①IoTセンサーによる空調の自動調整
各個室に設置したIoTセンサーが、室温や人の動きを感知し、空調を自動で調整するシステムを導入することで、エネルギーの無駄を省き、電気料金の大幅な削減が可能になります。例えば、人がいない部屋では空調を弱め、室温設定を最適化するなど、きめ細かい制御を行うことで、省エネ効果を最大限に引き出せます。
②AIによる需要予測に基づいた自動発注システム
自動発注システムは、過去の売上データや曜日、時間帯、天候などの情報をAIが分析し、ドリンクやフードの需要を予測することで、自動的に発注を行うシステムです。これにより、過剰な在庫を抱えるリスクを減らし、ロス削減に貢献します。また、発注業務にかかる時間を削減できるため、従業員は接客など、より質の高いサービス提供に集中できます。
③顔認証システムによる顧客管理
会員カードの代わりに、顔認証システムを導入すれば、顧客管理の効率化と顧客体験の向上が見込めます。来店時に顔認証を行うだけで、会員情報が自動的に呼び出され、スムーズな受付が可能となります。さらに、過去の利用履歴や好みの楽曲などを分析することで、顧客一人ひとりに合わせたサービス提供も可能となり、顧客満足度向上につながります。
④音声認識技術を活用したサービス
音声認識技術を搭載したデバイスを部屋に設置することで、曲の検索や予約、音量調整、照明の変更などを音声で操作できるようになります。リモコンを探す手間が省けるだけでなく、高齢者や機器操作に不慣れな顧客にとっても利用しやすい環境を提供できます。
自動化システムの活用事例
受付業務を自動化するタブレット端末の導入や、オンライン予約システムの導入によって、人手を介さない効率的なオペレーションが可能となります。
①JOYSOUND
JOYSOUNDでは、AIロボット「ロボホン」を活用し、受付業務のサポートを行っています。ロボホンはタブレット端末やモバイルプリンターと連携し、受付対応を効率化することで人の介入を減らし、応対時間の短縮を図ります。
ロボホンによる受付業務はJOYSOUNDの3つの直営店で実施がスタートし、全国展開も予定されています。また、ロボホンは多言語対応が可能で、外国人ユーザーへの対応も支援し、感染リスクを減らしながらスタッフの負担軽減と業務効率の向上につなげられます。
参照:会話ロボット「ロボホン」がJOYSOUNDの受付業務をサポート 3店舗で実証実験後、全国の直営店で本格稼働を目指す(ロボスタ)
②Servi アイリスエディション
Serviは、カラオケ店舗での配膳業務をサポートするロボットです。非接触型のサービスを提供し、従業員の負担を軽減することを目的としています。
このロボットは、厨房からカラオケルームまでの経路を自動で判断して商品を運び、経路やレイアウトの変更にも柔軟に対応します。また、衝突を避ける機能も備え、安全に配膳します。さらに、「通知システム」でロボットの到着を客に知らせ、スムーズな提供が可能です。
参照:「カラオケの気まずい」解消も コート・ダジュールで配膳ロボット稼働(港北経済新聞)
持続可能なカラオケ店舗運営の実現に向けてコスト削減に取り組もう
コスト削減は、短期的な視点ではなく、長期的な視点を持って計画的に進めていくことが重要です。顧客満足度を維持しながら、収益性の高い、持続可能なカラオケ店舗運営を目指しましょう。
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