コスト関連

効果的な採用コスト削減方法とは? 増える原因や注意点を解説

目次
  1. 採用コスト高騰の現状と企業が直面する課題
  2. 採用コストとは?
  3. 採用コストが増加する原因
  4. 採用コストを削減するための具体的な方法
  5. その他のコスト削減方法
  6. 採用コスト削減時の注意点
  7. 採用コスト削減と併せて固定費の見直しも

企業が持続的に成長するためには、優秀な人材の確保が不可欠です。しかし、採用活動には多大なコストがかかるため、そのコストを適切に管理することは、人材戦略を最適化する上で非常に重要です。採用コストを削減し、効率的な採用活動を行うことは、企業の競争力を高める直接的な要因となります。

本記事では、採用コスト削減の重要性を確認し、具体的な削減方法を解説します。また、コスト削減を行う際の注意点や、長期的視点に立った人材戦略についても考察します。企業の皆様が最適な採用活動を行うための一助となれば幸いです。

採用コスト高騰の現状と企業が直面する課題

近年、労働市場では少子高齢化による人手不足が深刻化し、採用活動がますます困難になっています。売り手市場が続く中、企業はより多くのコストをかけて人材を獲得する必要に迫られています。さらに、採用活動の長期化やオンライン化の進展も、採用コストを押し上げる要因となっています。

労働市場の変化(少子高齢化、売り手市場)による採用難

労働人口の減少により、求人倍率は上昇を続け、企業は人材獲得に苦戦しています。特に専門性の高い人材や若年層の採用は、より一層困難になっています。

厚生労働省が公表した令和6年10月の一般職業紹介状況によると、有効求人倍率(季節調整値)は1.25倍で、前月比0.01ポイント上昇しました。また、新規求人倍率は2.24倍(前月比0.02ポイント増)、正社員有効求人倍率は1.02倍(同0.01ポイント増)となりました。

10月の有効求人は前月比0.2%増加し、有効求職者は0.7%減少しました。新規求人(原数値)は前年同月比で1.2%増加しています

参照:一般職業紹介状況(令和6年10月分)について(厚生労働省)

採用活動の長期化とオンライン化の影響

採用活動が長期化するほど、企業は多くの時間とコストを費やす必要があり、オンライン面接の導入には新たな設備投資も必要になります。

採用コストとは?

採用コストとは、企業が人材を採用する際にかかるすべての費用のことを指します。求人広告の掲載費用から、面接官の人件費、入社後の研修費用まで、採用プロセス全体で発生する費用を指します。これらのコストを把握し、適切に管理することが、採用活動の効率化には不可欠です。

採用コストの内訳

採用コストは、大きく分けて外部コストと内部コストに分類できます。それぞれのコストが何であるかを理解し、具体的な削減策を検討していくことが重要になります。

1.外部コスト

求人広告費、人材紹介料、採用イベント費用など社外に支払う費用です。求人広告費は掲載媒体やプランによって大きく変動し、人材紹介料は採用決定者の年収に応じて発生することが一般的です。採用イベント費用は、会場費や出展料、運営費などが含まれます。

2.内部コスト

採用担当者の人件費、面接者の交通費、採用活動に関わる社内費用です。採用担当者の人件費は、採用活動期間中の業務時間に応じて算出されます。面接者の交通費は、遠方から面接に来る応募者に対して支給することがあります。

採用コストの算出方法

採用コストを正確に把握するためには、具体的な算出方法を理解しておく必要があります。採用コストを算出し、分析することで、改善点を見つけ出すことができます。

一人当たりの採用コストの計算式

 (採用コスト総額 ÷ 採用人数 = 採用コスト単価)

採用コスト単価を算出することで、採用活動の効率性を数値で把握することができます。例えば、採用コスト総額が1000万円で採用人数が10人の場合、一人当たりの採用コストは100万円になります。

採用コストを分析することで、どのプロセスでコストが多くかかっているのかを把握できます。コストが高い部分を重点的に見直し、改善策を実施していくことが重要です。

採用コストが増加する原因

採用コストが増加する原因は、以下の4つです。

  1. 採用活動長期化によるコスト増
  2. 企業予算に合わない求人広告や人材紹介会社の選定
  3. 社後のミスマッチによるコスト発生
  4. 早期離職がもたらすコスト増

それぞれ詳しく説明します。

1.採用活動長期化によるコスト増

採用活動が長期化すると、求人広告の掲載期間が長くなり、人材紹介会社への支払いが増えるなど、コストが増加します。 また、採用担当者の業務時間も増え、結果として人件費も増加することになります。採用活動は、できる限り効率的に行うことが重要です。

2.企業予算に合わない求人広告や人材紹介会社の選定

求人広告や人材紹介会社を選ぶ際に、自社の予算を考慮せずに高額なプランを選択すると、採用コストが大きく膨らみます。 費用対効果の高い求人媒体や人材紹介会社を選定することが、採用コスト削減の鍵となります。

3.入社後のミスマッチによるコスト発生

採用した人材が早期に離職してしまうと、再度採用活動を行う必要が生じ、二重にコストが発生します。 入社後のミスマッチは、企業だけでなく、求職者にとっても不利益となります。ミスマッチを防ぐためには、企業と求職者双方の理解を深めることが重要です。

4.早期離職がもたらすコスト増

早期離職は、採用コストだけでなく、教育コストや業務の損失など、さまざまなコストを企業に負担させます。早期離職を防ぐためには、入社後のフォローアップやキャリア支援も重要です。

採用コストを削減するための具体的な方法

採用コストを削減するための具体的な方法は以下の6つです。

  1. 採用フローの見直し
  2. オンライン採用の導入
  3. 採用管理システム(ATS)による応募者管理と選考プロセスの効率化
  4. 求人広告の最適化
  5. ミスマッチの防止
  6. 採用手法の見直し

それぞれ詳しく説明します。

1.採用フローの見直し

採用フロー全体を見直し、無駄なプロセスを省くことで、採用活動を効率化することができます。例えば、応募書類のスクリーニングを自動化したり、一次面接をオンライン化することが有効です。

2.オンライン採用の導入

オンライン面接や説明会を導入することで、会場費や交通費を削減できます。また、地理的な制約を受けずに、全国各地の応募者と接点を持つことができます。

3.採用管理システム(ATS)による応募者管理と選考プロセスの効率化

採用管理システム(ATS)を導入することで、応募者情報の一元管理や選考プロセスの効率化が可能になります。ATSは、応募者とのコミュニケーションを円滑にする機能や選考結果を分析する機能を備えており、応募者の進捗状況を可視化し、選考プロセスを自動化することができます。これにより、採用担当者の業務負担を軽減し、より戦略的な採用活動に集中することが可能となります。

4.求人広告の最適化

求人広告を最適化することで、費用対効果の高い採用活動を行うことができます。ターゲット層に響く求人広告を作成し、適切な媒体を選ぶことが重要です。

・ターゲットを明確にした求人広告の作成

ターゲットとする人材像を明確にし、その人材に響くような求人広告を作成することで、応募数を増やすことができます。ターゲット層が求める情報を盛り込み、魅力的な表現で訴求することが大切です。

・適切な求人媒体の選択(専門媒体、無料媒体など)

予算やターゲット層に合わせて、最適な求人媒体を選択することが重要です。専門性の高い人材を募集する場合は専門媒体を、費用を抑えたい場合は無料媒体を活用することも有効です。

・求人広告費の価格交渉

求人広告の掲載費用は、掲載期間やプランによって変動します。媒体社と交渉することで、掲載費用を抑えられる可能性があります。複数の媒体社に見積もりを依頼し、比較検討することも有効です。

5.ミスマッチの防止

入社後のミスマッチを防ぐことは、早期離職を減らし、無駄なコストの発生を防ぐ上で重要です。企業と求職者の相互理解を深めるための取り組みが求められます。

・企業情報の積極的な開示

企業文化や働き方、キャリアパスなど、応募者が知りたい情報を積極的に開示することが、ミスマッチを防ぐために重要です。企業の魅力を伝えるだけでなく、課題や改善点についても正直に伝えることで、応募者の理解を深めることができます。

・カジュアル面談の実施

選考プロセスに入る前に、カジュアルな面談を実施することで、企業と求職者の相互理解を深めることができます。面談では、企業側からだけでなく、求職者からの質問にも丁寧に答えることが大切です。

・コンピテンシー診断の導入

コンピテンシー診断を活用することで、応募者の能力や適性を客観的に評価できます。診断結果を参考に、自社に合った人材を選考することが可能です。

・体験入社やインターンシップの導入

体験入社やインターンシップを実施することで、応募者は実際の業務を体験し、企業文化を肌で感じることができます。企業側も、応募者の適性をより深く見極めることができます。

6.採用手法の見直し

既存の採用手法にとらわれず、新しい手法を導入することで、採用コストを削減できる可能性があります。自社に合った最適な採用手法を検討することが重要です。

・リファラル採用の導入・強化

社員からの紹介で人材を採用するリファラル採用は、採用コストを抑えつつ、企業文化に合った人材を獲得できる可能性が高いです。社員に協力してもらうためのインセンティブ制度を設けることも有効です。

・アルムナイ採用の導入

退職した社員を再雇用するアルムナイ採用は、企業のことをよく理解している人材を効率的に採用できる可能性があります。退職者との良好な関係を築くことが、アルムナイ採用を成功させる鍵となります。

・ダイレクトリクルーティングの活用

企業が直接求職者にアプローチするダイレクトリクルーティングは、費用を抑えながら、欲しい人材をピンポイントで獲得できます。採用担当者のスキルアップも必要となります。

・自社採用サイトやSNSの活用

自社採用サイトやSNSを効果的に活用することで、求人広告費を削減できます。企業の魅力を発信し、応募者とのコミュニケーションを深めることで、エンゲージメントを高めることもできます。

その他のコスト削減方法

採用コストを削減する方法は、上記以外にもたくさんあります。さまざまな方法を組み合わせることで、より効果的なコスト削減が可能です。

それぞれ説明します。

1.無料または格安の採用支援サービスの活用

無料または格安で利用できる採用支援サービスを積極的に活用することで、採用コストを削減できます。ハローワークや大学のキャリアセンターなども活用しましょう。

2.アウトソーシングの活用

採用業務の一部をアウトソーシングすることで、採用担当者の負担を軽減し、業務効率を高めることができます。専門的な知識やスキルを持った外部の力を活用することも有効です。

3.雇用形態の見直し(フリーランス、派遣社員の活用)

正社員だけでなく、フリーランスや派遣社員を活用することで、必要な時に必要なスキルを持った人材を確保できます。雇用形態を柔軟に見直すことで、人件費をコントロールできます。

4.助成金や補助金の活用

国や自治体が提供する助成金や補助金を活用することで、採用にかかる費用を一部軽減できます。自社が対象となる助成金や補助金がないか確認しましょう。

・中途採用拡大助成金

「早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)」は、中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用を拡大する事業主に支給される助成金です。

助成概要助成額
(A)中途採用率の拡大中途採用率を20ポイント以上上昇させた事業主に対する助成50万
(B)45歳以上の中途採用率の拡大以下のすべてを満たす事業主に対する助成
・中途採用率を20ポイント以上上昇させた
・うち45歳以上の労働者で10ポイント(45歳以上中途採用率拡大目標値以上上昇させた)
・当該45歳以上の労働者全員の賃金を前職と比べて5%以上上昇させた
100万

詳しくはこちらをご参照ください。

参照:早期再就職支援等助成金(中途採用拡大コース)(厚生労働省)

他にも、特定の求職者を試行的に雇い入れる場合(トライアル雇用)に利用できる助成金「トライアル雇用助成金」など、人材採用に活用できるさまざまな助成金や補助金があります。同じ制度でもコースや申請時期により条件や支給額が異なるため、詳細は厚生労働省の公式サイトなどをご確認ください。

参考サイト:厚生労働省|事業主の方のための雇用関係助成金

採用コスト削減時の注意点

採用コスト削減時の注意点は以下の5つです。

それぞれ詳しく説明します。

1.短期的なコスト削減に偏らない

採用コストを削減する際は、短期的なコスト削減だけにとらわれず、長期的な視点を持つことが大切です。安易なコスト削減は、採用の質を低下させる可能性があります。

2.採用の質を犠牲にしない

コスト削減を優先するあまり、採用の質を犠牲にしてはいけません。採用の質を落とすと、結果的にミスマッチによる早期離職を招き、さらにコストがかかる可能性があります。

3.社員のモチベーション維持

採用活動は、採用担当者だけでなく、現場社員の協力も不可欠です。採用コスト削減を行う際は、社員のモチベーションを維持することが大切です。社員の意見を聞きながら、より良い採用活動を目指しましょう。

4.長期的な視点を持つ

採用コスト削減は、短期的な視点だけでなく、長期的な視点を持つことが重要です。人材戦略全体を見渡し、最適なコストバランスを検討しましょう。

5.コスト削減と採用戦略のバランスを考慮する

採用コスト削減は重要ですが、採用戦略とのバランスを考慮することが大切です。コスト削減ばかりに気を取られると、企業の成長を阻害する可能性があります。採用戦略に基づいて、最適な採用活動を行いましょう。

採用コスト削減と併せて固定費の見直しも

採用コストの最適化は、企業にとって重要な経営改善の一手ですが、それだけでは十分とは言えません。人件費や採用コストと同様に、「固定費」も企業の財務に大きな影響を与える要素です。特に、オフィスや店舗の賃料は毎月確実に発生する大きな支出であり、見直しによって中長期的なコスト削減が期待できます。
採用コストと同じように、賃料も定期的な見直しと交渉によって、十分に最適化できる領域なのです。

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