法令・契約関連
定期借家の再契約とは?店舗運営で利用するメリット・デメリットやトラブル回避方法
定期借家を契約している店舗マネージャーの中で、再契約について以下のような疑問や不安を抱えている方は多いでしょう。
店舗契約は営業を続けていく上で欠かせない手続きです。本記事を読むことで、定期借家を再契約する際のメリット・デメリットやトラブル回避のポイントについて知識を深められます。
定期借家の再契約について十分に把握した上で、最適な店舗運営をしましょう。
定期借家の再契約とは
定期借家の再契約とは、契約期間が満了したために退去予定の物件を再度契約することを指します。
本来の定期借家契約であれば、1年や3年などの契約期間があらかじめ定められています。
しかし、賃借人と賃貸人の双方に合意があった場合、再度契約を結び直すことが可能です。普通借家とは異なり、契約の更新ではなく再契約となるのが定期借家の特徴です。
店舗を定期借家で再契約するメリット
店舗を定期借家で再契約するメリットは、以下の3つです。
定期借家には、普通借家にはないメリットがあります。長期間の契約ができたり、反対に1年未満の契約ができたりとさまざまです。
長期間の契約をする利点と短期間の契約をする利点をそれぞれ比較して、契約期間を検討しましょう。
店舗を普通借家ではなく定期借家で再契約するメリットを詳しく解説していきます。
メリットその1:店舗計画を立てやすい
定期借家で再契約するメリットの1つ目は、店舗計画を立てやすいことです。
定期借家は、契約期間の裁量が大きいため、長期間と短期間のどちらかを選択できます。長期間なら安定した経営戦略が立てやすくなります。一方で短期間であれば、お試しで出店することも可能です。
また、短期契約は、出店に不確定要素が多い場合や新しい挑戦をしたい場合の保険として利用できます。売り上げが不調であれば撤退でき、好調なら契約を終えて、もっと良い条件の場所でオープンできます。
このように再契約時に店舗計画を立てる上で、定期借家の恩恵を受けられるでしょう。
メリットその2:店舗の賃料を抑えられる
定期借家で再契約するメリットの2つ目は、引き続き店舗の賃料を抑えられることです。
定期借家は契約期間があることで、相場より賃料が安い傾向にあります。契約が成立しないことによる空室を防ぐためです。
結果、抑えられた分の賃料を、別の分野に投資できるようになります。また、固定費が抑えられることは、店舗運営においてリスク軽減できる意味があります。
店舗の家賃相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
メリットその3:長期契約で更新の手間が省ける
定期借家で再契約するメリットの3つ目は、長期契約で更新の手間が省けることです。
普通借家契約の場合、一般的に2年ごとの更新が必要になります。しかし、定期借家であれば5〜10年といった長期での契約が可能です。
結果、店舗経営者は通常業務に集中できるようになります。店舗経営者は、自分にしかできない業務に専念できる環境作りが大切です。
このように、長期間での定期借家契約の再契約をしておけば、何度も書類作成や契約手続きに時間を取られる心配はありません。
店舗を定期借家で再契約するデメリット
店舗を定期借家で再契約するデメリットは、以下の3つです。
定期借家の再契約にはさまざまなリスクがあります。そのため、あらかじめリスクを把握した上で再契約するようにしましょう。デメリットに遭遇してからでは遅いため、以下の章を参考にしてください。
デメリットその1:店舗は途中解約できない
再契約するデメリットの1つ目は、解約留保条項を定めている場合などを除き、原則として途中解約できないことです。
途中解約を認めてしまうと、残存期間の賃料が受け取れないという理由で賃貸人側が不利になるからです。そのため、解約をするときは残存期間の賃料相当分の違約金を支払う旨の条項を入れることが通常です。
もし、契約期間中に売上が悪化し、店舗経営の継続が困難になっても原則として解約できません。そのため、契約期間中に経営が悪化しても問題なく営業できるか、また売上見込みが問題なくあるのか調査しておきましょう。
途中解約を賃貸人側に申し出ても拒否される場合もありますので、事前に契約条件を確認することが重要です。
どうしても定期借家契約を途中解約したい方は、以下の記事を参考にしてください。
デメリットその2:再び手数料を支払う
再契約するデメリットの2つ目は、再び手数料を支払うことです。
定期借家の再契約は、更新ではなく新規契約となります。普通借家であれば契約更新という形になりますが、定期借家は新規契約となるため手数料が発生する点に注意してください。
具体的には最初の契約時に支払った事務手数料や仲介手数料を再び支払う必要があります。急な請求に驚いたり、支払いが遅延して賃貸人からの印象が悪くなったりしないようにしましょう。
普通借家であっても更新料は発生しますが、定期借家の再契約の際の費用のほうが一般的には高いです。定期借家の再契約には普通借家よりも費用がかかることを理解しておきましょう。
デメリットその3:事務手続きが増える
再契約するデメリットの3つ目は、事務手続きが増えることです。
定期借家の再契約は、更新ではなく新規契約になるため、契約書作成や書面交付説明を受ける必要があります。手続きの際は郵送でのやり取りではなく、対面もしくは電話をすることになります。
説明を聞くためにスケジュールを空けたり、署名と押印をした契約書を作成したりと事務作業が増加します。
普通借家の更新とは異なり、定期借家を再契約するたびに、事務手続きが必要になることを理解しておきましょう。
また、必要書類の提出が遅れた場合は、賃貸人から再契約を断られる可能性もあるため余裕を持って対応してください。
定期借家を再契約する際に注意すべきポイントは?
定期借家を再契約する際のトラブルは、以下の2つです。
店舗を経営する上でトラブルは可能な限り避けたいものです。
再契約時によく起こるトラブルをあらかじめ把握しておき、再契約のタイミングで賃貸人と揉めないようにしましょう。
トラブルその1:再契約を申し出たが賃貸人から断られる可能性がある
再契約する際のトラブル1つ目は、再契約を申し出たが賃貸人から断られる可能性があることです。
定期借家契約は、原則として再契約を想定していません。一度きりの契約であり、満了したのちは別の用途に使用されることが多いです。
そのため、過去に問題なく再契約できていたにもかかわらず、次回は定期借家の再契約ができない可能性は十分にあります。
店舗運営が順調で契約を継続したいと賃借人側が考えていても、双方の合意がないと再契約はできません。経営が好調の場合でも次回再契約ができる保証がないことは想定しておきましょう。
トラブルその2:再契約の際に賃料を値上げされる可能性がある
再契約する際のトラブル2つ目は、再契約の際に賃料を値上げされる可能性があることです。
定期借家の再契約において、重要なのが双方の合意です。そのため、あえて再契約の条件として賃料の値上げを要求する賃貸人がいます。
値上げを要求されると、賃借人は賃料を現状のままで再契約することは難しくなるでしょう。もし賃料の値上げを提示された場合は、条件を受け入れるか、退去するかのどちらかになると理解しておくと良いです。
また、最初の契約段階で再契約の条件に賃料の値上げが事前に記載されている場合は、値下げ交渉する余地がないので注意してください。
賃料が再契約時に値上がりするリスクがあることを知った上で再契約するのか検討しましょう。
定期借家を再契約する際のトラブル回避方法
定期借家を再契約する際のトラブル回避方法は、以下の2つです。
定期借家の再契約にはトラブルになる要素が潜んでいます。しかし、注意していてもトラブルに巻き込まれる可能性はあります。
本章の回避方法を読んで、実際にトラブルに遭遇しても、冷静に対処できるように参考にしてください。
回避方法その1:トラブル時は弁護士に相談する
トラブル回避方法の1つ目は、トラブル時は弁護士に相談することです。
一度揉めてしまうと専門家の介入なしには、解決に時間がかかるでしょう。
定期借家の再契約時によくあるトラブルの1つに、原状回復について賃貸人と揉める場合があります。話し合いでの解決が見込めない場合は、弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談することで、法的なアドバイスと指導が受けられるため、リスクを最小化できます。さらに弁護士は、賃貸人との交渉を代理したり複雑な書類作成を代行してくれるため、事務作業の負担が減ります。
トラブル時は、自分1人の力で解決しようとはせずに、法律のプロである弁護士に一度相談しましょう。
もし、いきなり弁護士に相談するのは敷居が高いと感じる方は、ビズキューブ・コンサルティングの再契約サポートに一度ご相談ください。
回避方法その2:再契約の際は書面で内容を確認しておく
トラブル回避方法の2つ目は、再契約の際は書面で内容を確認することが望ましいです。
契約書の内容を確認しておかないと、自分にとって不利な条件で契約させられる場合があるからです。
とくに、定期借家の再契約時には賃料についての記載には注意しましょう。再契約の条件に賃料の値上げが記載されることがあります。
契約時の確認も大切ですが、再契約の期間が近づいてきたら、再度確認しましょう。再確認するために契約書や重要事項説明書は、適切に保管しておくことが大切です。
また、電子帳簿保存法の改正により、賃貸人から電子データで契約書が送付された場合、電子データとしての保存が義務化されました。
紙に印刷しての保存ができないため、注意してください。
賃貸借契約書の保存期間や電子データの保存について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
契約終了時期になったら対応しておくべきこと
定期借家の契約が満了に近づいてきたら、あらためて契約書や重要事項説明書の内容を確認し再契約するのか、そのまま退去するのか検討しましょう。また、賃貸人から契約終了通知書が届いているかも確認してください。
定期借家で契約期間が1年以上の場合、賃貸人が契約期間満了の1年〜半年前までに賃借人に対して契約期間終了を通知する義務があるからです。
契約終了の半年〜当日までに通知が届いた場合は、通知が届いた日から半年後に契約が終了になります。この通知は再契約する場合にも必要です。
もし、1年以上の契約をしている、今後する予定の店舗経営者は、契約終了通知書に注意しましょう。
契約書について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
定期借家の再契約を把握した上でベストな店舗運営をしよう
定期借家を再契約した場合のメリットとデメリットをしっかり把握した上で、ベストな店舗運営ができるように検討しましょう。定期借家の再契約は、安定した店舗経営ができる代わりに、原則として途中解約ができない仕組みだからです。
また、店舗経営者にとって、再契約するかどうかの判断は難しい場合があります。もし判断に困った場合は、プロに相談するのが有効な方法です。
ビズキューブ・コンサルティングの再契約サポートでは、戦略立案からコンサルティングまで再契約に関して総合的なサポートを提供しています。相談してみたいと思った方は以下のページからご連絡ください。
賃貸人に対する賃料の相談や経営安定のためにコスト削減したい方は、ビズキューブ・コンサルティングをご活用ください。
【監修者】幸谷 泰造(弁護士)
東京大学大学院情報理工学系研究科修了。ソニー株式会社で会社員として勤めた後弁護士となり、大手法律事務所で企業法務に従事。一棟アパートを所有する不動産投資家でもあり、不動産に関する知識を有する法律家として不動産に関する法律記事の作成や監修、大手契約書サイトにおいて不動産関連の契約書の監修を行っている。