法令・契約関連

2024年問題で医療現場はどう変わる?働き方改革がもたらす変化と対応策

目次
  1. 医業の現状
  2. 医業の2024年問題・法改正のポイント
  3. 2024年問題が医業にもたらす影響と課題
  4. 医業の2024年問題における解決策・対策事例
  5. 医業の2024年問題、早めに対策しよう

医療を取り巻く環境は常に変化しており、医療従事者には最新の情報への対応が求められます。特に、医師や看護師などの医療業界の労働環境や働き方の見直しが求められる2024年問題の影響により、医療業界は大きな転換期を迎えると予想されています。本記事では、医療従事者、特に医師や医療機関経営者に向けて、2024年問題が医業に及ぼす影響について解説します。法改正のポイント、具体的な影響と課題、そして乗り越えるための解決策や対策事例を紹介します。

医業の現状

日本の医療現場は、少子高齢化の進展による医療需要の増加と医師不足といった深刻な課題に直面しています。医師の偏在や長時間労働は深刻化し、医師の負担増加は医療の質低下につながりかねない状況です。

2023年11月の厚生労働省の「労働経済動向調査」によると、医療・福祉分野の労働者の不足感は62%で、全産業の中で最も高く、不足から過剰を引いた数値でも建設、運輸に次いで3番目となっています。この数字は同年5月に58%、8月に65%と推移しており、慢性的な不足感が見て取れます。

参照:労働経済動向調査(厚生労働省)

また、看護師・准看護師の有効求人倍率は、2019年度は2.31倍、2020年度は2.05倍、2021年度は2.12倍、2022年度は2.20倍と高水準を維持しており、一時的に新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの2倍台で推移しています。このことからも、医療業界における医師・看護師不足が大きな課題であることは明らかです。

参照:看護師等(看護職員)の確保を巡る状況(職業安定分科会)

このような状況下、政府は医療制度改革を推進しています。医療費抑制と医療の質向上を両立させるため、病院の機能分化や地域医療連携の強化を進めています。また、医療現場の業務効率化と医療の質向上を目指し、電子カルテシステムの導入やオンライン診療の普及など、医療のデジタル化も加速しています。
しかし、これらの改革は医療現場に大きな負担を強いる可能性もあり、現場の状況を踏まえた丁寧な対応が求められます。医療現場における「働き方改革」の実施期限を迎えることで起きる2024年問題は、こうした日本の医療が抱える構造的な問題と改革の必要性を浮き彫りにするものでもあります。

医業の2024年問題・法改正のポイント

医業の2024年問題の中で特に注目すべきは、働き方改革関連法の導入です。これにより、医療従事者の働き方が大きく変わることが予想されます。医師と看護師それぞれの働き方改革について、具体的にどのような変化があったのか、詳しく解説します。

医師の働き方改革

①労働時間規制
医師については、労働時間が規制されました。医師の時間外労働(休日労働含む)の上限は以下の3つの水準に設定されています。

A水準: 年間960時間(医療機関勤務)
B水準: 年間1,860時間(地域医療確保のため)
C水準: 年間1,860時間(技能向上のため)

②面接指導義務化
月100時間以上の時間外労働が予見される医師には、面接指導が義務付けられました。面接指導を行わなかった場合は医療法違反となります。

③休息時間の確保
B/C水準の医師は、勤務間インターバル(通常9時間、当直18時間)を義務付けられ、急な呼び出しの場合は代償休息が必要となります。

④割増賃金率引き上げ
2023年4月から、月60時間を超える時間外労働について、割増賃金率を50%以上に引き上げられました。

看護師の働き方改革

労働時間規制
月45時間、年間360時間以内の平日の時間外労働が定められており、特別な事情がある場合は年間720時間、休日労働込みの時間外労働は月平均80時間以内、月100時間未満を遵守することが求められています。

参照:時間外労働規制のあり方について③ (厚生労働省)

以上の規制は医療従事者の健康と働き方の改善を目指しています。

2024年問題が医業にもたらす影響と課題

2024年問題は、医療現場にさまざまな影響と課題をもたらすと予想されます。ここでは、特に深刻化が懸念される問題点と、その具体的な影響について詳しく解説します。

人材不足の深刻化

医師の働き方改革関連法による時間外労働規制は、医師不足に悩む医療現場に更なる負担を強いる可能性があります。医師の労働時間短縮は、診療時間短縮や患者受け入れ数の制限につながりかねず、医療へのアクセスが悪化する可能性も懸念されます。医師の業務を分担し、効率的に業務を行うための体制構築が急務です。

コスト増加への対応

電子カルテシステムの導入義務化や医療情報システムの標準化は、医療機関にとって大きなコスト負担となります。特に、中小規模の医療機関やクリニックでは、導入費用やシステム運用費用が経営を圧迫する可能性もあります。政府による財政支援制度の活用や、業務効率化によるコスト削減など、多角的な対策が必要です。

医療の質の維持

医師の負担増加や人材不足は、医療の質低下につながる可能性があります。また、電子カルテシステム導入に伴う操作習熟やシステムトラブル発生時の対応など、新たな負担も懸念されます。医療の質を維持・向上させるためには、医師の負担軽減、人材育成、そして円滑なシステム運用体制の構築が不可欠です。

地域医療格差の拡大

2024年問題の影響は、都市部と地方部で異なる可能性があります。特に、医師不足や高齢化が深刻な地方部では、2024年問題の影響を大きく受ける可能性があります。地域医療の崩壊を防ぐためには、医師の偏在解消や地域医療連携の強化など、地域の実情に応じた対策が求められます。

医業の2024年問題における解決策・対策事例

2024年問題の課題を克服し、質の高い医療を提供し続けるためには、医療機関は積極的に変化に対応していく必要があります。ここでは、2024年問題に対する具体的な解決策と、実際に取り組まれている対策事例を紹介します。

IT化による業務効率化

電子カルテシステムや医療情報システムなどのITツールを積極的に活用することで、業務効率化を図り、医師や看護師の負担軽減を目指します。例えば、オンライン資格確認システム導入による受付業務の効率化、電子カルテシステムと連携した会計システム導入による請求業務の自動化などが考えられます。また、オンライン診療や遠隔医療といった新たな医療提供体制を構築することで、医師不足の解消や医療アクセス向上を図る取り組みも重要です。

【対策事例】タスクシフト・シェアによる業務効率化
医師の業務の一部を看護師や薬剤師、事務スタッフなどが分担する「タスクシフト・シェア」を導入することで、医師の負担軽減と業務効率化を実現している医療機関が増えています。例えば、特定の処方箋発行や特定の疾患に関する患者指導などを、医師の指示のもとで看護師が代行することで、医師はより専門的な業務に集中できるようになります。

人材確保と育成

医師や看護師不足を解消するために、積極的に人材の確保と育成に取り組む必要があります。待遇改善や労働時間短縮など、働きやすい職場環境を整備することで、離職防止と人材確保を目指します。また、新人教育やスキルアップ研修などを充実させることで、質の高い医療を提供できる人材を育成することも重要です。

【対策事例】女性医師の働きやすい環境整備
出産や育児と両立しやすいよう、短時間勤務制度や院内保育所の設置など、女性医師が働きやすい環境を整備することで、女性医師の活躍を促進し、人材不足解消につなげている医療機関もあります。また、結婚や出産などで離職した医師の復職支援制度を導入することで、経験豊富な人材の確保につなげる取り組みも効果的です。

地域医療連携の強化

医療機関同士が連携し、患者を適切な医療機関へ紹介する地域医療連携システムを構築することで、医療資源の効率的な活用と医療の質向上を目指します。また、地域住民に対して健康増進や疾病予防に関する情報提供や相談窓口を設けるなど、地域全体で健康を支える体制を構築していくことも重要です。

【対策事例】オンライン診療による地域医療への貢献
オンライン診療システムを導入することで、都市部の病院と連携し、専門医による診療を遠隔で受診できる体制を整えている地方の医療機関もあります。これにより、専門医不足の解消や、患者が遠方まで移動する負担を軽減できるなど、地域医療の充実につながっています。

患者への理解促進

2024年問題による影響や医療機関が取り組む対策について、患者に丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。ホームページや院内掲示などを活用し、診療時間変更やオンライン診療導入などの情報を発信することで、患者との信頼関係構築に努めます。また、医療費負担や待ち時間増加の可能性など、患者にとって負担が大きくなる可能性がある点についても、丁寧に説明することが求められます。

【対策事例】患者向け説明会の開催
2024年問題に関する患者向け説明会を開催し、制度変更の内容や医療機関の取り組みについて詳しく説明することで、患者の不安解消と理解促進を図っている医療機関もあります。説明会では、質疑応答の時間も設け、患者からの質問に直接答えることで、丁寧な情報提供を心がけ、不安の解消と信頼関係の構築につなげています。

医業の2024年問題、早めに対策しよう

2024年問題は、日本の医療制度にとって大きな転換期となります。医療機関は、法改正や制度変更に伴う影響を正しく理解し、積極的に対策を講じることで、変化を乗り越え、質の高い医療を提供し続けることが求められます。そして、患者と医療従事者が互いに理解し合い、協力しながら、より良い医療システムを構築していくことが、2024年問題を乗り越える鍵となるでしょう。

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