法令・契約関連
【完全ガイド】店舗賃貸借契約書とは?出店前に必ず押さえるべきポイント総まとめ

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事業を始める際、物件選びと同様に重要なのが賃貸借契約書の理解です。特に店舗物件は住宅とは異なる要素が多く、事前の把握が不可欠です。本記事では「店舗の賃貸借契約書」に関する基本知識から注意点までを解説します。これから出店を考えている事業者や、賃貸人側の関係者にも有益な内容です。
契約書のポイントを押さえることで、トラブルを未然に防ぎましょう。
店舗の賃貸借契約とは?
店舗の賃貸借契約とは、事業用として建物を貸し借りする契約のことです。住居用とは異なり、営業目的に特化した契約内容が含まれる点が特徴です。たとえば、「賃料には消費税が課される」「造作の扱い」「契約解除条件」が異なります。
契約対象の物件には、路面店、テナント、居抜き物件、スケルトン物件などがあります。また、契約の種類には「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」があります。普通契約では自動更新があり、定期契約では再契約が必要であることに注意が必要です。
定期借家について、普通借家との違いや賃貸借契約上のメリットを解説しているコラムもご参考になさってください。
事業用としての契約は、営業利益や設備、工事などに直結するため、内容に曖昧さがあると営業停止や損害賠償リスクにもつながります。
【店舗賃貸借契約書の必要性と役割】 はこちら▼
【テナントで課税対象となる費用を解説】 はこちら▼
店舗賃貸借契約書の必要性と役割
民法上は口頭契約にも法的効力が認められますが、実務上はトラブル防止の観点から書面による契約締結が一般的です。
契約書がなければ、賃料・契約期間・解除条件などで揉めるリスクが高まります。また、契約書は許認可取得や融資申請の際に提出を求められるケースがほとんどです。
銀行融資や助成金申請時に求められる場合も多く、信頼性を担保する資料としても重要です。契約書は賃貸人と賃借人双方の権利義務を明確にし、トラブルを未然に防ぐ重要な書類です。
特に原状回復や中途解約、保証金返還などの場面では契約書の文言が根拠となります。
【契約書に記載すべき項目と注意点】 はこちら▼
契約書に記載すべき項目と注意点
店舗賃貸借契約書の主な記載事項と注意点を説明します。
店舗や事務所など事業用の賃貸借契約書のテンプレートは、以下の機関から入手することができます
物件の特定
所在地、家屋番号、構造、専有面積などを正確に記載します。
登記簿謄本との整合性や床面積の測定方法も確認しておきましょう。
建物全体のどの部分か(例:1階の一部、2階全体など)も明確にすることが望ましいです。
使用目的
「飲食店」「オフィス」「美容室」など、用途を具体的に明記します。
法令や用途地域の制限、必要な許認可との整合性も確認が必要です。
想定外の業種での使用は契約違反とされるリスクがあるため、用途の記載は非常に重要です。
契約期間と更新
「契約開始日〜終了日」までを明記し、更新の有無も記載します。
定期借家契約の場合、再契約が必要であり、再契約の合意がないと継続できません。
普通借家契約では自動更新される場合もありますが、更新料の設定も確認が必要です。
賃料・敷金・保証金・礼金
賃料の金額、支払期日、支払方法(振込先)などを正確に記載します。
保証金や敷金の返還条件、礼金の性質(償却されるか)なども明示します。
一時金の償却については、契約書に明確に記載され、賃借人に説明されていない場合には、消費者契約法等により無効と判断される可能性があります。」
原状回復と設備
原状回復や設備の取り扱いに関する契約内容は、スケルトン物件か居抜き物件かによって大きく異なるため、契約時に明確に定めておくことが重要です。
照明や什器、エアコンなど設備の所有者や撤去・譲渡条件を明確にしましょう。
原状回復義務の範囲が不明確だと、退去時に高額な請求を受ける恐れもあります。
関連コラム: 原状回復工事とは?範囲・費用・スケジュールに関する注意点を解説
解約・解除条項
中途解約する場合の通知期間(例:3か月前)や違約金の有無を確認します。
債務不履行時の解除条件も明記しておくと安心です。
賃料滞納が何回続いたら解除できるのかなど、具体的な基準も明示しておきましょう。
連帯保証人
個人がテナント契約する際には、連帯保証人を求められることがあります。
保証人の責任範囲や代替として保証会社の利用条件なども記載されます。
保証人が第三者である場合は、保証意思確認書の取り交わしが求められることもあります。
特約事項
契約書には記載されない特別な条件を盛り込む欄です。
営業時間、看板設置のルール、造作買取の有無、禁煙・騒音対策などが含まれます。
火災保険の加入義務や、共用部の利用条件など、細かな条件も特約として明記されます。
賃貸人・賃借人の義務
賃借人は営業継続の責任、賃貸人は設備維持の責任など、お互いの義務を記載します。
共用部の使い方やゴミ出しのルール、騒音・臭気への配慮なども明記しておくと良いでしょう。

契約締結までの流れと準備
物件の内見後、申込書を提出し、審査を経て契約に進むのが一般的な流れです。契約書は賃貸人と賃借人で2通(場合によっては3通)作成し、記名押印を行います。書面契約が基本ですが、電子契約も可能な時代となっており、印紙税の扱いに注意が必要です。
店舗賃貸借契約書印紙代は契約金額によって異なるため、税務面でも確認が必要です。
トラブル事例と回避策

賃料滞納
賃料滞納が発生した際、催告の要否や契約解除の条件が契約書に記載されていないと、対応が遅れトラブルに発展します。「何回滞納で解除可能か」「催告の方法」などを事前に定めておくことで、紛争を回避できます。
原状回復
原状回復の範囲を明確にしないまま契約すると、退去時に壁紙や床材の補修をめぐってトラブルになりがちです。設備や内装の現況は写真で残し、契約書にも復旧義務の範囲を具体的に記載しておくことが大切です。
中途解約
中途解約の際、いつまでに通知すれば良いのか、違約金が発生するのかといった条件が不明確だと、賃貸人・賃借人間でトラブルに発展します。通知期限や違約金の金額・発生条件を契約書に明示しておきましょう。
用途制限
店舗物件の使用目的が契約内容と異なっていたり、臭気や騒音が発生する業態を制限している場合、クレームや契約解除の原因になります。契約前に用途制限の内容を確認し、明記しておくことが必要です。
保証人関連
連帯保証人を設定する場合、責任の範囲を明文化しないと、支払い義務の認識で揉める恐れがあります。また、火災・地震等による不可抗力で営業不能になった場合の契約解除や減額条件も、特約として定めましょう。
居抜き・スケルトン物件の注意点
居抜き物件
造作・設備の所有権、譲渡契約の有無、設備の状態確認を徹底します。譲渡価格や名義変更の手続き、営業許可の引継ぎの可否なども確認しましょう。
スケルトン物件
内装工事の仕様、施工許可、費用負担、原状回復範囲を確認しましょう。工事業者の指定、営業時間外の工事制限なども契約に盛り込まれることがあります。
いずれも「現況渡し」の条件を契約書に明記することが重要です。
【居抜き・スケルトンの基礎知識】はこちら▼
オフィスとしての利用時の注意点
オフィス利用の場合、OA機器の電源容量や配線条件を事前に確認しましょう。用途制限がある場合、業種によっては利用できない可能性があります。静穏性やセキュリティ、ネットワークの整備状況なども評価ポイントになります。
契約書には「事務所使用に限る」と明記されることが多く、来客頻度の多い業態は注意が必要です。
契約更新・解約の手続き
更新手続きの条件(自動更新か否か、更新料の有無)を確認しましょう。定期借家契約は、原則として再契約が必要で、賃貸人の合意がないと継続できません。解約時には、通知期間、書面での通知義務、明渡し期限などを明記しておきましょう。
特に繁忙期の解約は、後継テナントとの引継ぎや造作譲渡にも影響するため、スケジュールを前倒しで調整する必要があります。
【事業用不動産の契約書の基礎知識】はこちら▼
契約不適合責任について
契約時と異なる内容(例:雨漏り、エアコンの故障など)が発覚した場合、賃貸人に責任が生じます。賃借人は通知義務を果たすことで、修補や契約解除、損害賠償を請求できることがあります。
契約書に『現況有姿で引き渡す』と記載されていても、隠れた瑕疵(重大な雨漏り、構造的欠陥など)があれば、賃貸人は契約不適合責任を負う場合があります。
まとめ
店舗賃貸借契約書は、安心して事業を始めるための「設計図」ともいえる存在です。契約書の項目を一つひとつ丁寧に確認し、トラブルの芽を事前に摘むことが大切です。
契約前には専門家に相談し、不安な部分を解消してから締結することをおすすめします。賃貸人・賃借人双方が納得できる契約を結び、長期的な信頼関係を築いていきましょう。また、物件や事業内容に応じた柔軟な契約内容の設計も重要です。
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