不動産関連

賃貸借契約書とは?確認すべき項目と法人が契約する時の注意点

目次
  1. 賃貸借契約書の基礎知識
  2. 賃貸借契約書の見方
  3. 賃貸借契約書の条文で確認すべき内容
  4. 法人が賃貸借契約を結ぶ際の注意点
  5. 賃貸借契約書を読み込んで契約を交わすことが大切

賃貸物件を借りる際の手続きのひとつに、契約書の締結があります。契約書には、物件の基本情報や家賃に関することなど、重要な内容が記載されています。契約前に内容を丁寧に確認することが大切です。ただし、慣れていない場合は書面の見方がわからず、重要なポイントを見逃してしまうこともあるかもしれません。特に、法人の場合は個人契約の場合と異なる文言が記載されることもあるため注意が必要です。事前に賃貸借契約書の読み方を確かめておきましょう。今回は、賃貸借契約書の基本的な情報や確認しておきたい項目、法人が契約を交わす際の注意点などをご紹介します。

賃貸借契約書の基礎知識

賃貸契約を結ぶ際に欠かせない存在である賃貸借契約書は、どういった目的で発行されるのでしょうか。こちらでは、賃貸借契約書の特徴や、重要事項説明書との違いを解説します。

賃貸借契約書とは?

賃貸契約書は、賃貸物件を借りる際に借主と貸主が締結する契約書のことです。2部作成し、借主、貸主それぞれが1部ずつ保管します。

国土交通省は、賃貸借契約書の雛形となる「賃貸住宅標準契約書」を公開しています。契約をめぐる紛争防止や、借主の居住の安定、貸主の経営の合理化などが目的です。

賃貸借契約書と重要事項説明書の違い

賃貸契約の際は、賃貸借契約書のほかに重要事項説明書を交わします。両者ともに必要な書類ですが、それぞれ目的や内容が異なります。

重要事項説明書は、借主が重要事項の内容を理解して同意したら署名・捺印する書類です。この場合の重要事項とは、賃貸借契約を結ぶ上で、当事者同士で重要になる事項のことを指します。建物の状況や賃料、解約、利用条件などが該当します。重要事項の説明は、必ず宅地建物取引士の資格を持つ人物が行わなければなりません。

賃貸借契約書は契約を結んだことを証明するものですが、重要事項説明書は借主が重要事項を把握したことを示すものに過ぎません。重要事項説明書に署名・捺印した状態では、まだ賃貸借契約は成立していない点を覚えておくと良いでしょう。

賃貸借契約書の見方

賃貸借契約書の形式は、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」が基準とされるケースが見られます。こちらでは、賃貸住宅標準契約書の書式を参考に、賃貸借契約書の読み方を解説します。

【出典】「賃貸住宅標準契約書 平成30年3月版・家賃債務保証業者型 契約書本体」(国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html

賃貸借の目的物

賃貸借契約書には、所在地、構造、間取り、面積、築年数など、賃貸物件の情報が記載されています。物件の基本的な情報となるため、間違いがないか十分にご確認ください。

また、設備欄の「有」「無」のいずれにチェックがあるかも確かめておきましょう。「有」にチェックがある項目は、物件の設備です。通常の使用による故障の場合は貸主が修理費用を負担します。「無」にチェックがあるのは、物件内に備わっていない設備です。設備が存在するにもかかわらず「無」にチェックが入っている場合は、前の借主の残置物となります。故障しても貸主は修理費用を負担せず、退去時に処分が必要になることがあるため注意が必要です。エアコン、ガスコンロ、照明などが残置物になっていることがあるため、使用しない場合は撤去してもらいましょう。

契約期間

賃貸借契約の期間が記載されます。契約期間を2年と定めているケースが一般的ですが、物件によって異なります。期間が終了する前に契約の見直しが行われ、借主の希望があれば、合意の上で更新することが可能です。貸主は、正当な理由がない限り、契約更新・解除を拒否できません。

賃料等

家賃に関する内容を記載する場所です。毎月の賃料や共益費のほか、敷金、一時金などの金額が明示されます。また、駐輪場や駐車場などの附属施設の使用に料金が発生する場合は、附属施設使用料の欄に金額が記載されます。

加えて、費用の支払い期限や支払い方法などもこちらに記されます。物件によっては支払い方法が指定されているケースもあるため、チェックしておきましょう。

貸主及び管理業者

貸主や管理業者の名前、連絡先などが記載されます。貸主とは不動産を貸し出している人のことです。賃貸人や大家さんとも呼ばれます。個人の場合もあれば、不動産会社のように法人が貸主となるケースもあります。物件の所有者と貸主が異なる場合は、所有者の連絡先も記入されるのが基本です。

入居してから部屋や設備に修繕の必要が生じたら、貸主や管理会社などに連絡する必要があります。契約書を見ながら、トラブル時はどこに連絡を入れたら良いか確かめておきましょう。

賃貸借契約書の条文で確認すべき内容

一般的に、賃貸借契約書の後半には借主と貸主の間で守る条文が記載されています。条文のなかにも確認しておくべき内容が含まれているため、しっかりと読み込んでおくことが大切です。以下では、賃貸借契約書の条文のなかで確認しておきたい項目や内容をご紹介します。

解約予告期間

賃貸契約では、解約予告期間と呼ばれる、解約の申し入れ(通知)を行う期間が設けられます。解約予告期間は退去希望日の1~3カ月前とされることが多く見られます。期間については賃貸借契約書に定められているため、よく読んで確認しておきましょう。

解約予告期間を過ぎて退去する場合は、その分の家賃を払うことになります。例えば、解約予告期間は2カ月前で、借主が1カ月前に貸主に解約・退去を伝えた場合、退去時には1カ月相当の家賃を支払うことになります。解約予告のタイミングによって、支払う金額に差が出ることもある点に留意してください。

更新時にかかる費用

賃貸契約を更新する際に更新料が発生することがあります。更新料の金額についても、契約書に記載されているため確認が不可欠です。金額に規定はなく、物件によって設定が異なります。

また、更新料に加え、更新事務手数料を求められることもあります。主に、管理会社の書類作成にかかる手数料となります。

さらに、連帯保証人を用意せず、保証会社を利用している場合は、更新の際に保証料を支払うケースもあります。更新に際して必要な費用をしっかりとチェックしておきましょう。

違約金の条件と金額

契約書に違約金に関する事項が記載されていることがあります。違約金とは、契約違反が起こった際に支払われるお金のことです。

違約金が発生する条件や金額は物件ごとに違います。例えば、契約から1年たたずに途中解約した場合、家賃1カ月分の違約金を請求するとの記載があれば、指定の金額を支払うことになります。

契約書に違約金についての記載がなく、契約時の説明もなかった場合は、支払いの義務は生じないとされています。金銭トラブルを避けるため、違約金についての項目は丁寧に確認しておくことがおすすめです。

特約による禁止事項

物件によっては、特約により禁止されている項目があります。ペットの飼育、楽器の演奏、石油ストーブの使用、無断転貸(又貸し)、共用部分での迷惑行為などが代表的です。

禁止事項を破った場合の処遇についても契約書に記載されています。違約金の支払いを求められることもあれば、退去に応じなければならないことも。契約時に確かめておきましょう。

原状回復費用の負担

賃貸物件を退去する際、入居者は原状回復義務によって部屋の修繕費を負担することがあります。損耗の度合いや入居した年数など、複数の要素によって負担する費用は変わります。料金は国土交通省の定める「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に則して請求されるのが基本です。ただし、契約書に記載がある場合、費用負担の範囲が変わることがあります。

また、原状回復費用は敷金や保証金などから差し引かれるのが一般的です。ただし、特約として記載がある場合、実費ではなく一定額が引かれるケースもあります。

原状回復費用に関するトラブルを避けるためには、契約書の内容をよく読んでおくことが不可欠となります。不当に感じた場合は、契約を結ぶ前に交渉することも可能です。

法人が賃貸借契約を結ぶ際の注意点

法人が賃貸借契約を結ぶとき、個人が賃借人になる場合とは一部異なるルールが課されることがあります。従業員用の住宅としてアパート・マンションを契約する場合や、事務所・店舗用として借りる際などは、以下のポイントに気をつけましょう。最後に、法人が賃貸借契約を交わす前に知っておきたい注意点をご紹介します。

必要書類が異なる

法人が賃貸借契約を結ぶ場合、個人の場合とは必要な書類が異なるケースがあります。貸主が信用力を判断する対象が違うためです。会社の規模や事業内容、支払い能力などを確認するための書類が必要とされます。

一般的には、登記事項証明書や代表者の印鑑証明書などの提出が求められます。また、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表、会社概要などの提出を求められることもあります。スムーズに契約へ進めるよう、必要な書類を準備しておくことが大切です。

契約書の文言が異なる場合がある

法人の場合も賃貸借契約書を交わしますが、内容や文言が異なる場合があります。例えば、一般的な個人での賃貸契約は、同じ人が住み続けることが基本です。対して、社宅として借り上げる場合、複数の従業員が入れ替わりで入居する可能性があります。その場合、契約書には入居者の変更を認める内容の記載が必要です。想定する用途に応じた契約書を作成することが重要です。

物件によっては法人契約できないことがある

すべての物件が法人契約可能というわけではありません。例えば、店舗として借りようとした物件が事業所として使用することを想定していない場合、契約を断られることがあります。事業用物件だったとしても、業種によっては契約を拒否されるケースもあります。

また、会社の信頼性が低いと判断された場合も、契約に至らない可能性があります。断られた場合は、ほかの物件を探しましょう。

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賃貸借契約書を読み込んで契約を交わすことが大切

賃貸契約を交わした後に不都合な部分が発覚すると、思わぬトラブルに発展することもあります。できるだけ契約前に対応することが大切です。賃貸借契約書には、契約内容が細かく記載されています。各項目の読み方をおさらいし、内容を漏れなくチェックできるように気をつけましょう。

賃貸物件の法人契約でお困りごとがありましたら、ぜひビズキューブ・コンサルティングにご相談ください。契約更新に伴う煩雑な業務だけでなく、退去時の手続きや業務はもちろんのこと、原状回復工事などのサポートも幅広く承ります。物件診断をもとに適正な家賃を策定する賃料適正化サービスなどのコスト削減に関するコンサルティングも行っています。興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。