不動産関連

事業用不動産の契約書の基礎知識|賃貸借と売買のチェックポイント

目次
  1. 事業用不動産の賃貸借・売買契約にかかわる主な書類
  2. 事業用不動産の賃貸借契約書のチェックポイント
  3. 事業用不動産の売買契約書のチェックポイント
  4. 不動産の契約を交わす前に契約書を読み込んでおこう

事業用不動産の賃貸借や売買が行われる際は、内容に応じた契約書を交わす必要があります。契約書の記載項目は多岐にわたりますが、細かい部分までしっかりと読んでおくことが大切です。事前に契約書を読むときのポイントを確かめて、適切な契約が取り交わせるように準備しておきましょう。今回は、事業用不動産を契約する前に知っておきたい、契約書に関する基本的な知識を解説します。店舗用の物件をお探しの事業者様は、ぜひ参考にしてみてください。

事業用不動産の賃貸借・売買契約にかかわる主な書類

事業用の土地や建物を借りる、もしくは購入する場合、以下のような書類が発行されることがあります。まずは、主な書類の特徴を押さえておきましょう。

賃貸借契約書

不動産を貸す・借りるための不動産賃貸借契約で用いられる書類のことです。トラブルが起こりやすい項目については、あらかじめ特約が定められていることが多くなります。物件情報など書面の記載内容をよく読んでから契約を交わすことが重要です。契約の際には実印による捺印を求められるケースがあります。

賃貸借契約書とは?確認すべき項目と法人が契約する時の注意点
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売買契約書

不動産を購入・売却するための不動産売買契約で用いられる書類です。不動産売却は売買代金が高額となる取引であるため、一般的に記載項目が多い傾向にあります。賃貸借契約書と同様、印鑑は実印を使うことが基本です。

重要事項説明書

賃貸借契約、売買契約いずれの場合も作成される書類です。宅地建物取引士が重要な内容を説明し、最終確認を行うために交付します。契約書とは役割が違いますが、重要書類であることに変わりはありません。ただし、不動産仲介会社を通さずに契約する場合は発行されないことがあります。

書面には、物件の詳細や、契約の条件に関する情報が記載されます。建物の安全性や仲介手数料、設備に関する注意点などは、不動産会社との重要事項説明の際に詳しくチェックしましょう。

事業用不動産の賃貸借契約書のチェックポイント

賃貸借契約書には、所在地や床面積、構造などのほか、以下のような項目が記載されることがあります。いずれも重要な項目となるため、詳しく見ておきましょう。

使用目的

賃貸物件を何のために使用するかを限定する項目です。例えば、契約当初と異なり不特定多数の顧客が出入りするようになると、クレームや事故などのリスクが高くなります。こういったトラブルを防ぐために使用目的を定め、入居時とは異なる目的での使用を禁じます。契約書の記載と別の目的で使用する際は、貸主の承諾を得ることが基本です。

営業補償に関する特約

営業補償とは、物件に何らかの事情があり営業活動が行えなくなった場合に、貸主が補償金を支払うことです。建物や設備のメンテナンス、破損などが該当します。営業補償の請求が不可能となるよう、契約書に特約が盛り込まれるケースが多く見られます。

造作買取に関する特約

造作買取とは、借主が建物に加えた造作を貸主に時価で買い取らせる権利のことです。建具、電気水道設備などの、貸主に承諾を得て設置したものが該当します。造作買取を禁止する特約が盛り込まれるケースもあります。

賃料

月々の賃料に関する項目です。賃料改定の条件や賃料据え置き期間などを定めておくことがあります。

契約の解除

賃料を支払日までに納めなかった場合や、信頼関係が損なわれる事態が生じた場合など、賃貸契約に違反することがあれば、無催告で契約解除できるように定めているケースがあります。

違約金

賃貸借契約を中途解約する場合は、違約金を求められることがあります。違約金の金額については契約書に記載することが基本です。

原状回復

賃貸物件を明け渡す際は、賃借人が原状回復義務を負うこととなります。原状回復が行われなかった場合の費用負担についても明記されていることがあるため、しっかりと確かめておきましょう。

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事業用不動産の売買契約書のチェックポイント

事業用不動産の売買契約時に交わす契約書には、以下のような項目が設けられていることがあります。最後に、事業用不動産の売買契約を行う際に見ておきたい確認ポイントをご紹介します。

手付金

手付金は、売買契約締結時に買主が売主に支払う費用のことです。一般的に、手付金は残代金の精算時に売買代金の一部として無利息で充当されます。売買契約書にて手付金の金額を定めていることがあるため、確認しておきましょう。

また、手付解除に関する項目もチェックすることが大切です。一般的に手付解除期日までであれば、売主は手付金の倍額を買主に支払うことで、買主の場合は手付金を放棄することで、売買契約を解除できます。

境界

境界とは、基本的に土地と土地の境目を指す言葉です。売買契約書には、売主が境界を明示するように定める項目が設けられることがあります。

所有権の移転

契約書には、所有権移転の時期が記載されることがあります。時期を指定しておくことで、引き渡しにおけるトラブルを防止することが期待できます。

公租公課等の分担

公租公課とは、国や地方公共団体への金銭負担を指します。公租には法人税や所得税、固定資産税、印紙代など、公課には社会保険料や健康保険料などが含まれます。こういった金銭負担を、買主と売主でどのように分担するか定めておくのが基本です。

契約不適合責任

売買した物件に契約内容とは不適合となる部分があった場合、売主は契約不適合責任を問われることがあります。契約書には、契約不適合責任を負わないとする特約や、責任の生じる期間を定める内容などが記載されるケースがあります。

設備の引き渡し

物件に付帯設備がある場合、設備の引き渡しに関する項目が設けられます。トラブルを避けるため、付帯設備表が作成され、それぞれの状態を明記することが基本です。

融資利用の特約

住宅ローン審査が通らず、融資が下りなかった場合、契約を解除できる特約です。住宅ローン特約やローン特約などとも呼ばれます。

違約金

契約違反があった場合の違約金について記載されていることがあります。損害額が生じた場合に備え、あらかじめ請求できる金額を決めておくパターンと、損害賠償額とは別に違約金の支払いを定めるパターンがあります。

不動産の契約を交わす前に契約書を読み込んでおこう

不動産に関する契約書は、細かい部分まで目を通しておくことが大切です。ご紹介したポイントを中心に、契約内容を確かめていきましょう。契約によっては、登記事項証明書や登記簿謄本などの書類も必要となります。契約完了までに多数の書類をくまなくチェックすることになるため、重要なポイントを見逃さないように注意してください。

もし賃貸物件の法人契約でお困りごとがありましたら、ぜひビズキューブ・コンサルティングにご相談ください。契約更新に伴う煩雑な業務だけでなく、退去時の手続きや業務はもちろんのこと、原状回復工事などのサポートも幅広く承ります。物件診断をもとに適正な家賃を策定する賃料適正化サービスなどのコスト削減に関するコンサルティングも行っています。興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。