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【業界別動向】塾経営における経費削減の重要性とは?実践的なアプローチを紹介
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少子化や景気の影響を受けやすいと言われる教育業界。中でも学習塾業界は、競争の激化や保護者のニーズの多様化など、経営を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。このような状況下で生き残り、さらに発展していくためには、これまで以上に収益力強化が求められており、そのためには、戦略的なコスト削減が欠かせません。
本記事では、塾経営におけるコスト削減の重要性を改めて認識し、具体的な方法を事例を交えながら分かりやすく解説していきます。
塾経営における経費削減の重要性
少子化と競争激化による塾業界の現状
少子化の影響により学齢人口が減少する中、大手企業の進出やオンライン学習サービスの普及などもあり、塾業界では競争が激化しています。
2024年5月1日時点での日本の総人口は約1億2394万1000人で、前年同時期と比べて53万6000人(0.43%)減少しました。年齢層別では、15歳未満が前年比34万人(2.38%)減少し、15〜64歳も23万6000人(0.32%)減少、65歳以上は4万人(0.11%)増加し、75歳以上は69万7000人(3.52%)増加しています。
参照:人口推計(2024年(令和6年)5月確定値、2024年(令和6年)10月概算値) (2024年10月21日公表)総務省統計局
このような状況下で生徒を集めるためには、質の高い教育サービスを提供しながら、適正な価格設定を行うことが求められます。地域密着型や大手ブランド力に頼るだけでは、安定した経営を維持するのはますます難しくなってきています。加速する少子化の中で生き残る塾経営には、サービス向上だけでなく経費削減も欠かせない状況だと言えます。
固定費削減と変動費削減の違い
経費削減には、大きく分けて固定費削減と変動費削減の2種類があります。
固定費
生徒数に関わらず、毎月ほぼ一定額が発生する費用のことを指します。例えば、賃料、人件費(正社員の給与)、コピー機のリース料などが挙げられます。
変動費
生徒数や授業回数によって変動する費用のことを指します。教材費、光熱費、印刷費などが代表的なものです。
経費削減を行う際には、固定費と変動費、それぞれの性質を理解した上で、適切な対策を講じることが重要です。
賃料適正化による経費削減
多くの塾では、賃料が固定費の大部分を占めているため、賃料の見直しこそが安定した塾運営に直結する重要な要素となっています。
賃料適正化の方法とメリット
賃料は、塾経営の固定費の中で大きな割合を占めています。賃料を適正化することは、固定費の大幅な削減につながります。賃料の適正化には、主に以下の3つの方法があります。
①賃料交渉
賃借人は近隣の賃料相場を調査し、賃貸人に対して賃料の減額を交渉してみましょう。賃料交渉では、入居実績や長期契約の提案、他の賃借人の事例を参考にするなどのコツがあります。
②移転
より賃料の安い物件への移転も検討してみましょう。オンライン授業の導入などで、駅近である必要性が薄れている場合もあります。
③縮小
教室数を減らし、コンパクトな運営を目指すのも有効です。オンライン授業との併用で、教室数を減らせる可能性があります。
人件費削減と業務効率化
賃料に次いで、塾経営における大きなコストを占めるのが人件費です。特に、正社員講師の人件費は、固定費として大きな負担となる場合があります。
適切な人員配置と業務分担の見直し
人件費を適正化する上で重要なのが、人員配置と業務分担の見直しです。
①時間帯別講師
時間帯によって生徒数が異なる場合は、時間帯講師の活用を検討しましょう。
②講師の適正配置
講師の得意科目を考慮し、生徒数や科目に応じて、適切な授業を担当してもらうようにしましょう。
③事務スタッフの増員
事務作業を効率化することで、事務スタッフの配置の見直しや人員削減を検討できる場合があります。
④アルバイトの活用
授業以外の業務にアルバイトを活用することで、人件費を抑えられます。
IT導入によるスマート教育環境の構築
IT導入は、コスト削減にとどまらず、教育の質向上や業務効率化も実現します。オンラインプラットフォームや学習管理システムを使うことで、授業の成果を見える化し、生徒一人ひとりの学習進捗を詳しく把握できます。さらに、デジタル教材を活用すれば、教材費を削減しながら、常に最新のコンテンツを提供することが可能です。IT環境の整備には初期投資が必要ですが、運営効率や学習成果の向上により、投資を回収できる可能性が高く、IT導入は未来の塾経営を支える重要な要素となります。
①顧客管理システム
生徒情報や勤怠管理システムなどを一元管理すれば、事務作業の効率化につなげられます。
②オンライン学習プラットフォーム
オンライン教材を活用することで、教材作成や採点などの負担を軽減できます。
③ビデオ会議システム
授業や面談をオンライン化することで、移動時間やコストの削減につながります。
コミュニケーションツールと学習管理システム
ITツールはコミュニケーションを円滑にし、生徒や保護者との連絡を効率化します。リアルタイムでの通知やアンケート機能を使えば、生徒のニーズを迅速にキャッチ可能です。また、クラウドベースの学習管理システム(LMS)によって、教室の垣根を越えたつながりをもて、生徒同士、講師との積極的な交流をサポートします。これにより、学習への意欲を高め、結果的に生徒の満足度向上につながります。
セキュリティとデータ管理の重要性
ITを導入する際には、個人情報保護法や関連する法令に従い、データの管理やプライバシー保護を徹底することが求められます。塾の信頼性が高まるだけでなく、法令に準拠した運営も可能となります。
ITの導入をすることで、塾は現代的な教育機関としての地位を強化できます。持続可能な成長を見据え、ITの力を最大限に活用し、塾全体のスムーズな運営と収益性向上を追求しましょう。
広告宣伝費の見直しと最適化
新規生徒獲得のために広告宣伝費は欠かせない費用ですが、闇雲に広告を出稿すればよいというわけではありません。効果が低い広告を続けていると、無駄なコストが発生してしまいます。
効果的な広告手法の選択と予算配分
・広告手法の選択:ターゲットとする生徒や保護者に効果的に届く広告手法を選ぶ。
・予算配分の最適化:広告の効果を測定し、費用対効果の高い広告に予算を集中させる。
・口コミの活用:満足度の高い教育サービスを提供し、口コミによる生徒獲得を目指す。
上記を考慮しながら、最適な広告手法を選択し、予算配分を検討する必要があります。
生徒数増加施策と広告宣伝費の関係性
広告宣伝は、あくまでも生徒数増加施策の一つに過ぎません。生徒募集の方法は、広告以外にも、
・紹介制度既存生徒からの紹介を促進する。
・地域貢献:地域イベントへの参加やボランティア活動を実施する。
・無料体験:無料体験授業や説明会を実施する。
などの方法があります。広告だけに依存するのではなく、さまざまな施策を組み合わせることで、より効果的に生徒数増加を目指しましょう。
無駄な経費の排除とコスト意識の向上
経費削減を行う際には、現状を把握することが重要です。過去のデータなどを参考に、費目ごとに支出内容を分析し、無駄な経費が発生している箇所を特定しましょう。
経費の見直しには、以下のような方法があります。
・経費の洗い出し:全ての経費を明らかにして、必要性を検討する。
・無駄の特定:使用頻度の低い設備や、効果の乏しい取り組みを見直す。
・代替案の検討:より安価で効果的な代替案がないか検討する。
また、スタッフのコスト意識を高めることも重要です。経費削減の必要性を伝え、アイデアを募集するなど、全員で取り組む体制を作ります。コスト意識の高い組織文化を育むことで、継続的な経費削減が可能となります。
教材費が塾経営の変動費に与える影響
教材費は、変動費の中でも大きな割合を占める項目です。教材費を削減するには、以下の方法が考えられます。
・デジタル教材:デジタル教材の導入により、印刷費や配送費を削減できます。
・共同購入:近隣の塾と共同で教材を購入すると、ボリュームディスカウントを受けられる場合があります。
・教材作成: オリジナル教材を作成することで、市販の教材よりもコストを抑えられる場合があります。
教材の選定と仕入れ方法の見直し
教材を選ぶ際には、価格だけでなく、質や生徒の学習効果も考慮することが大切です。また、複数の教材会社から見積もりを取り、比較検討することで、より低価格で教材を仕入れることができる可能性があります。
適切な価格設定によるコスト削減と利益率向上
教材費などのコストを削減することで、授業料に還元できる余裕が生まれ、価格競争力が高まります。また、高品質な授業を提供することで、生徒満足度が高まり、退塾率の低下にもつながります。
経営計画の見直しと継続的な改善
経費削減を実現するには、経営計画の見直しと継続的な改善が欠かせません。
・経費削減目標の設定:具体的な経費削減目標を経営計画に織り込む
・PDCAサイクルの実践:計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のサイクルを回し、継続的に改善する。
・成果の測定と報告:経費削減の成果を定期的に測定し、スタッフに報告する。
経営計画の見直しにより、経費削減の取り組みを組織全体で共有し、実行することができます。PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善を実現します。
経営計画における経費削減目標の設定
経費削減は、短期的な視点ではなく、長期的な視点を持って取り組むことが重要です。まずは、現状を分析し、具体的な数値目標を設定しましょう。
・目標設定: 達成可能な現実的な目標を設定する。
・期間: いつまでに達成するのか、明確な期限を設定する。
・担当者: 各項目の責任者を決め、担当者を明確にする。
PDCAサイクルを用いた継続的な改善
経費削減は、一度行えば終わりというわけではありません。 PDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)を回し、継続的に改善していくことが重要です。また、目標達成度を定期的に測定し、課題や改善点を見つけ出すことが鍵となります。また、経費削減の成果を従業員に共有することで、モチベーションの維持につなげましょう。
資金調達と補助金・助成金活用
経費削減によって生まれた資金は、さらなる事業拡大やサービス向上のための投資に活用することができます。しかし、塾経営は、生徒数の季節変動や景気の影響を受けやすいといった側面があるため、安定した資金繰りを維持することが重要です。
銀行融資や投資による資金調達
事業拡大や設備投資などの際には、自己資金だけでなく、銀行融資なども視野に入れ、資金調達を検討しましょう。近年では、教育業界への関心の高まりから、ベンチャーキャピタルからの投資による資金調達も増加しています。
補助金・助成金制度の活用
国や地方自治体では、教育機関に対して様々な補助金・助成金制度を設けています。これらの制度を積極的に活用することで、設備投資や人材育成にかかる費用を抑え、事業の安定化を図ることができます。
例えば、IT導入補助金は、学習塾経営においても重要なサポートとなり、IT技術の導入を促進します。この補助金は、オンライン授業システムや生徒管理システム、学習進捗管理ツールなどの導入時にかかる経費を補助し、最大450万円までの支援が受けられるため、最新の技術を低コストで導入できるチャンスを提供します。
参照:IT導入補助金2024(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
おわりに
今回は、塾経営におけるコスト削減の重要性と、具体的な方法について解説しました。経費削減は、決して楽な取り組みではありません。 しかし、コスト意識を持ち、創意工夫を重ねることで、必ず成果につながるはずです。本記事で紹介した、さまざまな角度からのアプローチを実践してください。本記事が、塾経営者の方々にとって、コスト削減に取り組むきっかけとなり、ひいては塾業界全体の活性化に繋がれば幸いです。
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