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オフィス賃料の目安とは?相場や適正額を算出するポイントを解説

目次
  1. オフィス賃料の基本知識
  2. オフィス賃料の目安
  3. オフィス賃料を減額できる可能性があるケース
  4. オフィス賃料の適正化交渉のポイント
  5. オフィス賃料の適正化で経営改善をはかろう

オフィスの賃料は周辺の環境や市場相場で決まりますが、長年にわたり一定の賃料を支払い続ける中で、気づかず適正賃料よりも高い額を払っているかもしれません。オフィスの賃料は適正な金額を知ることで、減額できる可能性があります。

オフィス賃料を減額できないかと思案している経営層や責任者の中には、以下の悩みを持っている方もいるでしょう。

  • オフィスの賃料の相場は?
  • 自社のオフィスの賃料は適正なの?
  • 賃料を削減して経営状態を改善できる?

本記事では、オフィス賃料の適正な目安や、相場と経営状態を踏まえた賃料の算出方法を詳しく紹介します。賃料の減額交渉を成功させるためには、賃料を減額できる法的根拠や賃料の市場相場に対する知見を持っておくことが大事です。

適正なオフィス賃料を理解することで、賃料の見直しや賃料減額交渉にお役立てください。

オフィス賃料の基本知識

オフィス賃料の適正価格を知り、減額交渉を進める上で、次の基本知識をおさえておくと良いでしょう。

それぞれの基本知識を詳しく解説します。

オフィス賃料の相場を知る

2024年3月末、東京主要7区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、品川区、江東区)の大規模オフィスビルの空室率と平均募集賃料の動向が公表されました。

三菱地所リアルエステートサービスによると、平均空室率は5.73%と2021年4月以来の5%台まで下がり、減少傾向で推移しています。特に中央区の晴海エリアなどで大型物件の募集を終了したことが空室率の減少につながっています。

参照:<2024年3月末>東京主要7区 大型オフィスビル空室率・平均募集賃料の動向|産経新聞

一方、賃料の相場として、平均募集賃料は坪単価27,649円と前月の2024年2月から111円下落し、特に中央区、新宿区、品川区では大型物件の募集終了による下落が顕著です。

参照:<2024年3月末>東京主要7区 大型オフィスビル空室率・平均募集賃料の動向|産経新聞

以上のデータは、都心でのオフィス選びにおける賃料減額交渉や戦略立案の重要な基準となります。

オフィス賃料は減額できる可能性がある

オフィス賃料は法的根拠に基づいて減額を主張することが可能な場合もありますが、最終的な判断は裁判所や調停によることが多いです。

関係する法律は、借地借家法と改正民法です。2つの法律の要点をおさえて、賃料の減額交渉のための準備を整えましょう。

借地借家法

借地借家法に基づく賃料増減請求権は、賃料の適正化を求めるための重要な法的根拠です。

土地の賃料に関しては、借地借家法第11条が、建物の賃料については同法第32条が規定しています。賃貸借契約が長期間継続する中で、経済事情の変動により、又は近傍の同種土地建物の賃料に比べて不相当となった場合、賃料の増減を請求できます。

賃料増減請求権は、不動産の価値変動等に伴い、当初の契約時の賃料が不相当になった場合に、賃借人と賃貸人いずれも適正な賃料への調整を請求できる場合があります。賃料増減請求権は、契約の公平性を維持し、市場の変化に応じた適正賃料を促進するために重要な権利です。

民法

2020年の改正民法により、賃貸借契約に関する重要な変更が導入されました。

改正民法第611条1項は、以下の通り。

「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。」

引用:民法|e-Gov法令検索

改正前は、賃借物の一部滅失と判断される場合には、減額事由として定められていましたが、改正民法第611条第1項においては、建物が借主の過失や故意によらない理由で使用・収益できなくなった場合にも、賃料の減額が認められることが明記されました。

たとえば、コロナ禍での営業自粛要請により事業者が物件を使用できなくなった場合でも、個別の事情によっては賃料減額交渉ができる可能性があります。

設備故障など賃借人の責任がない場合において、建物が使用収益できなかった場合の賃料減額交渉ができる可能性もあります。賃料の適正化を推し進めるための法的根拠を理解しておくことは重要です。

賃料減額の法的根拠や交渉の注意点を詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

オフィス賃料の会計処理が変わる

2027年以降に予定されている新リース会計基準の導入により、オフィス賃料の会計処理に大きな変更が生じる可能性があります。

新リース新基準では、従来のオペレーティングリース取引でも、賃貸借契約により賃借している不動産がリース資産としてバランスシート上に計上されます。オフィスビルや店舗などの不動産賃貸に関する経理処理の負担が増加する見込みです。

新リース会計基準への変更は賃料の適正評価を行い、賃料の減額交渉にも影響を与える可能性があります。リース会計基準の変更に備え、適切な時期に賃貸借契約を見直し、適正化を目指すことが推奨されます。

新リース会計基準について詳しくまとめた記事もありますので、気になる方はチェックしてください。

新リース会計基準への変更のポイントとは?家賃・賃貸借契約への影響も徹底解説
新リース会計基準への変更のポイントとは?家賃・賃貸借契約への影響も徹底解説

オフィス賃料の目安

賃料の目安を算出する方法ですが、賃料減額交渉を進める前に算出しておくと交渉がスムーズになる可能性があります。

オフィス賃料が適正かを判断するために、次の3つの算出方法を紹介します。

それぞれの目安の算出方法を1つずつ見ていきましょう。

目安その1:周辺物件の賃料の相場から算出

オフィスや店舗の賃料設定において、周辺物件の賃料相場を参考にすることは大事です。

特に、同じエリア内で類似した物件の賃料相場を調査することで、適正な価格帯を見定められます。ただし、単にエリアの相場だけでなく、具体的な立地や周辺環境が賃料に与える影響も考慮する必要があります。

たとえば、交通の便が良い場所や商業施設が充実しているエリアでは、賃料が高くなる傾向があります。近隣に新たな施設が建設されたり、地域の人口動態が変化したりすることも、賃料を見直す良いタイミングです。

周辺環境から総合的に考慮して、現在の賃料が市場価格として妥当かを判断することは、賃料適正化に必要なステップです。

目安その2:粗利から算出

オフィス賃料を決定する際には、企業の粗利(売上総利益)を基準とする方法もあります。

粗利とは、売上から売上原価(仕入れ費用など)を引いた後の利益で、賃料設定の重要な指標です。一般的に、オフィス賃料は粗利の10〜20%の範囲で設定されることが望ましいとされています。

粗利による算出では、企業の業種や利益構造によって異なる可能性があるため、1つの目安として捉えておくと良いでしょう。粗利による算出は、企業の収益に見合った賃料水準を把握するためにもおさえておきたい数字です。

目安その3:必要な広さから賃料を算出

オフィスを選ぶ際に、企業の従業員数や業務の性質を考慮して、必要なオフィスの広さを見積もる方法があります。

オフィスの広さを考える場合、まず労働安全衛生法の規定に基づく事務所衛生基準規則により「労働者一人あたり10㎥以上を確保すること」が定められている点を把握しておきましょう。

この数値は容積なので、床面積を求めたい場合は天井高も加味する必要があります。

高さはオフィスによって異なりますが、たとえば建築基準法で定められている天井高2.1mを基準にすると、一人当たりの床面積は約1.4坪となります。

しかし、上記はあくまで法律上最低限必要な面積であり、実際には一人当たり1.4坪では手狭になりがちなので、一般的な目安として、従業員1人あたり約3坪のスペースを計算に入れることが多いです。必要な広さを把握できたら、希望するエリアの坪単価をかけ合わせて月額の賃料を出します。

たとえば、従業員が10人の場合、最低でも30坪のオフィスが必要となり、エリアの坪単価が1万円だとすると、月額賃料は30万円です。

必要な広さから賃料を算出する方法により、予算内で適切な広さのオフィスを選べるため、効率的な業務運営を支える環境を整えられます。

オフィス賃料を減額できる可能性があるケース

オフィス賃料を減額できる可能性があるのは3つのケースです。

次のいずれかもしくは複数該当する場合は賃料減額交渉を検討してみましょう。

それぞれのケースを詳しく解説します。

ケースその1:周辺の賃料相場と乖離している

オフィス賃料が周辺の相場と乖離している場合、適切な交渉によって賃料を減額できる場合があります。

同じエリアの類似オフィスの坪単価平均と比較して、自社の賃料が高い場合、賃料減額交渉の根拠となります。さらに、現在の経済情勢や地域の発展状況などの外的要因も考慮すると、より公正な賃料を目指すことが可能となることがあります。

正確な情報を持って賃料減額交渉に臨むことで、不当に高い賃料を見直し、経営の効率化をはかれる可能性があります。

オフィス賃料が適正価格かを知りたい方は、適正賃料診断がおすすめです。

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ケースその2:建物や設備に不具合がある

設備の故障や建物の不具合が生じ、建物が使用できなくなった場合には、法的根拠に基づき適切な賃料減額を求めることができる可能性があります。

2020年の民法改正によって、建物の一部滅失以外にも、建物や設備の不具合により建物が使用収益できなくなった場合の賃料減額について明文化されたため、より減額を求めやすくなったといえます。

設備が故障し建物が使用収益できなくなり、それが賃借人の責任でない場合、賃料減額交渉ができる可能性があります。

なお、建物や設備に不具合がある場合に減額できる賃料の割合は、民法上では明確な基準が定められていないため、実際に賃料減額交渉をするときは、専門家へ相談することをおすすめします。

ケースその3:経営が悪化している

経済環境の激変により賃貸物件の使用価値が下がった場合や、収益活動が困難になった場合には、賃料の減額交渉ができる可能性があります。

たとえば、コロナ禍のような大規模な経済的影響により、多くの企業が経営の危機に直面しているようなケースです。新型コロナウイルスの影響で収入が大幅に減少し、賃貸物件を活用できない期間が続いた場合、賃借人は賃料の減額交渉ができる可能性があります。

企業努力でコントロールできない経済環境の変化による経営悪化においては、賃料の減額を求めることは1つの解決策となり得ます。

賃借人と賃貸人との間で適切な交渉が必要となり、互いの経済的な負担を考慮しながら公平な解決をはかることが望ましいです。

オフィス賃料の適正化交渉のポイント

オフィス賃料の適正化交渉のポイントは次の4つです。

賃貸人との良好な関係性を保ちながら、裏付けとなる情報を収集しておくことが大事です。それぞれのポイントを詳しく解説します。

ポイントその1:賃貸人との信頼関係悪化に注意する

賃料の適正化交渉を行う際には、賃貸人との信頼関係を損なわないよう注意が必要です。

交渉が適正化ではなく、単なる値切りになってしまうと、賃貸人側が不信感を持つ原因となります。賃料の適正化を目指す交渉は、市場の賃料相場や物件の状態など、客観的なデータに基づいて行わなければなりません。

事実に基づかない闇雲な賃料の適正化交渉は、賃貸人との関係を悪化させ、将来的に更なる交渉や協力を得にくくなる可能性があります。

適切な情報と資料を準備し、賃貸人にも理解しやすい形で説明を行い、双方にとって公平な価格に落ち着くことが重要です。

なお、賃料の適正化交渉は契約更新時のタイミングで行うのが一般的です。

法的な規定はないため契約期間中の交渉も可能ですが、賃貸人は、契約期間中に契約の内容を変更する義務はありません。賃貸人との信頼関係悪化を防ぐためにも、できるだけ契約更新時を目安に行うことをおすすめします。

ポイントその2:賃料の適正化交渉の裏付けとなる情報を収集する

賃料の適正化交渉を成功に導くためには、賃料減額の裏付けとなる情報収集が重要です。

特にオフィス賃料の適正化をはかる際には、最低限、次の情報を集めておくと良いでしょう。

  • 市場の賃料相場
  • 物件の条件
  • 周辺の経済状況

情報不足のまま交渉してもうまくいかないだけでなく、賃貸人との信頼関係にも悪影響を与えかねません。

賃料の適正化交渉では、集めた情報を基に双方が納得できる理由を明確にし、対話を進めることが重要です。

情報の正確性と充実度が、公正かつ効果的な賃料の適正化交渉の鍵を握ります。

ポイントその3:新リース会計への対応の機会を利用する

2027年に予定されている新リース会計基準の導入に伴い、企業はすべての賃貸借契約を見直す必要がある可能性があります

新リース会計新基準では、賃料を含むオペレーティングリース取引もリース資産として計上することになり、会計処理の方法が大きく変わります。

会計基準の変更は、財務報告において大きな影響を及ぼすため、賃貸借契約の洗い出しが必要になる場合があります。そこで、契約書の一括収集と再評価は、賃料の適正化交渉を進める絶好のタイミングになります。

契約書見直しの機会を活用して、賃料の適正化をはかりつつ、新しい会計基準に対応する準備を進めることが有効です。

新リース会計基準への変更のポイントとは?家賃・賃貸借契約への影響も徹底解説
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ポイントその4:知識がない場合は専門家の力を借りる

賃料の適正化交渉において十分な知識がない場合、専門家の支援を求めることは有効です。

賃料に関する複雑な市場データや法律知識が必要とされる交渉では、プロの経験や専門知識を活かすことで、適切な賃料の適正化を可能にします。専門家は、適切な資料の準備、市場分析、そして交渉戦略の立案に至るまで全面的にサポートします。

賃料の適正化コンサルティングを専門家に依頼することで、内部リソースの節約と本業への集中が可能となり、賃貸人との関係悪化のリスクも最小限におさえられる可能性があります。

特に法規制や市場条件が複雑である場合には、特に専門家の支援を受けることをおすすめします。

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2001年の創業以来積み重ねてきた圧倒的なコンサルティング件数とノウハウの蓄積をもって、賃貸人との関係性を良好に保ちながら賃貸人と賃借人の賃料交渉をサポートします。気になる方は下記リンクをチェックしてみてください。

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オフィス賃料の適正化で経営改善をはかろう

経営の効率化を目指す企業にとって、オフィス賃料の適正化は重要な施策の1つです。

不必要に高い賃料は企業の財務に大きな負担となりますが、市場相場や業務の実情に合わせた適正な賃料に見直すことで、コスト削減が可能になります。

本記事では、オフィス賃料の目安や適切な賃料を算出する方法を紹介しました。賃料の適正化交渉をスムーズにするためには、値引き交渉ではなく、適正価格に落ち着かせるというスタンスが大事です。

そのためには、根拠となる明確な数字や周辺環境を整理しておく必要がある点をおさえておくと良いでしょう。

オフィス賃料の適正化をスムーズに行い、経営改善をはかるための情報としてお役立てください。

ビズキューブ・コンサルティングでは、賃料適正化のパイオニア企業として、20年間積み重ねた経験に裏付けられたノウハウとデータベースを基に、お客様の現在の賃料が市場価格と比較して適正かどうかを診断します。診断サービスは無料で提供しておりますので、自社の賃料適正化を検討する際には、ぜひ利用してみてください。

【監修者】幸谷 泰造(弁護士)

東京大学大学院情報理工学系研究科修了。ソニー株式会社で会社員として勤めた後弁護士となり、大手法律事務所で企業法務に従事。一棟アパートを所有する不動産投資家でもあり、不動産に関する知識を有する法律家として不動産に関する法律記事の作成や監修、大手契約書サイトにおいて不動産関連の契約書の監修を行っている。