コスト関連

賃料の値上げが行われるタイミングとは?企業ができる備えと対応策を解説

目次
  1. 賃料の値上げが企業に与える影響
  2. 賃料が値上げされる一般的なタイミング
  3. 賃料が値上げされる理由
  4. 賃料の値上げへ事前対策が必要な理由
  5. 賃料の値上げ通知が届いたら?企業が取るべき5つの行動ステップ
  6. 賃料の値上げで悩んでいるなら専門のコンサルタントに相談してみませんか?

昨今、企業を取り巻く経済環境は目まぐるしく変化しており、経営上のコスト管理の重要性がますます高まっています。中でも、賃借人にとってオフィスの賃料は固定費として大きな割合を占めることが多く、賃料の値上げは企業経営に大きな影響を与える可能性があります。

本記事では、賃料が値上げされる背景やタイミング、そして企業が取るべき対策について、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説します。

賃料の値上げが企業に与える影響

賃料の値上げは、企業の収益を圧迫するだけでなく、従業員のモチベーション低下や事業縮小などにつながるリスクも潜んでいます。特に、スタートアップ企業や中小企業にとっては、賃料負担の増加は死活問題になりかねません。

賃料の値上げによる影響を最小限に抑えるためには、事前に対策を講じ、いざというときに備えて適切な行動を取ることが重要です。

賃料が値上げされる一般的なタイミング

賃料の値上げが行われるタイミングは、主に以下の2つのケースがあります。

それぞれについて詳しく解説します。

契約更新時

一般的に、賃料の見直しは賃貸契約の更新時に行われます。2年や5年といった契約期間にかかわらず、更新時に賃貸人から賃料の値上げの申し出があることは珍しくありません。

契約期間中

契約期間中であっても、固定資産税の増額や大規模な修繕工事の実施など、法律で定められた正当な理由があれば、賃料の値上げが認められる場合があります。

賃料が値上げされる理由

賃貸人が賃料の値上げを要求する主な理由としては、次の3点が挙げられます。

それぞれについて詳しく解説します。

周辺の賃料相場との乖離

賃貸人が賃料の値上げを求める理由の一つとして、周辺の賃料相場との乖離が挙げられます。周辺地域で新規物件の建設や既存物件のリノベーションが進み、地域全体で賃料相場が上昇した場合、既存のテナントに対しても賃料の見直しを打診することがあります。

例えば、周辺に最新設備を備えた賃料の高いオフィスビルが完成し、多くの企業が移転した場合、既存のオフィスビルの賃料は割安になります。既存のオフィスビル自体の設備が変わっていなくても、人気の物件や人が集まる施設が新しくできた地域は賃貸物件の需要が高まるため、賃料相場が上がります。そうなると、賃貸人としては、賃料を維持すると相対的に損をしてしまうので、周辺相場とのバランスを取るために賃料の値上げを検討する状況になります。

賃貸人は、所有する物件の収益性を最大化するため、常に市場動向を注視しています。周辺相場の変動は、賃料改定の大きな要因となり得るため、テナント側も事前に情報収集を行うことが重要です。

物件価値の維持・向上

賃貸人が賃料の値上げを検討するもう一つの理由は、物件価値の維持・向上です。建物の老朽化対策や設備の更新、共用部分の改修など、物件の魅力を維持・向上するためには、多額の費用が必要となります。

例えば、エレベーターや空調設備の更新、エントランスの改修工事、セキュリティシステムの導入など、快適性や安全性を向上させるための投資は、賃料収入から賄われるケースがほとんどです。

テナントとしても、快適で安全なオフィス環境は重要な要素です。物件価値の維持・向上のための投資は、賃料の値上げという形で負担を求められる可能性があることを理解しておきましょう。

固定資産税・管理費等の増加

固定資産税や建物の管理費、修繕積立金など、賃貸人が負担する物件所有にかかる費用は、年々増加傾向にあります。これらの費用増加は、賃貸人にとって大きな負担となり、賃料に転嫁せざるを得ないケースが少なくありません。

例えば、3年に1度評価額が見直される固定資産税は、近年続いている地価上昇の影響を受ける費用です。

固定資産税収は2012年度以降、増加の一途を辿っており、近年もその勢いは衰えていません。

参照:人口減少社会を迎えた我が国の固定資産税収の動向等について(総務省自治税務局固定資産税課)

また、建物の管理費も、人件費や光熱費の高騰、老朽化に伴う修繕費の増加などにより、上昇傾向にあります。

賃貸人は、これらのコスト増加分を賃料収入で賄う必要があるため、やむを得ず賃料値上げを検討せざるを得ない状況に陥ることがあります。

賃料の値上げへ事前対策が必要な理由

賃料の値上げは企業の財務状況に重大な影響を与える可能性があります。そのため、事前に対策を講じておくことが不可欠です。

賃料の値上げへ事前対策が必要な主な理由としては、次の4点が挙げられます。

それぞれについて詳しく解説します。

突然のコスト増加を避ける

賃料が急に上昇すると、企業の固定費が大幅に増加し、利益率が圧迫される可能性があります。これにより、企業は他の重要な投資や経費削減を余儀なくされることがあります。企業は事前に交渉の準備を整え、賃料の見直しが必要になる可能性を早めに察知することで、これらの影響を最小限に抑えることができます。

交渉力の強化

賃借人が賃貸人と賃料交渉をする際には、準備が不可欠です。市場の動向を把握し、地域の相場を理解することは、企業が賃貸人と有利に交渉するための鍵です。事前に市場データを収集し、交渉戦略を策定することで、賃料の値上げを抑える交渉力を持てるようになります。

長期的な事業計画の維持

賃料は、企業の運営コストの主要な部分を占めます。そのため、賃料の値上げが長期的な事業計画に悪影響を及ぼすことがあります。事前に対策を講じて安定した賃料を維持することが、企業が計画通りに事業を進行させ、成長を続けるために不可欠です。

不動産市場の変動への対応

不動産市場は流動的であり、賃料は地域の経済状況や開発計画の影響を受けやすいものです。日頃から市場のトレンドを監視し、賃料値上げのリスクを分析することで、実際に賃貸人から賃料値上げを打診された際に迅速に対応できるようになります。このように、賃料の値上げへの事前対策は、企業の安定的な経営の基盤を支える重要な要素です。

賃料の値上げ通知が届いたら?企業が取るべき5つの行動ステップ

賃料の値上げ通知を受け取ると、焦りや不安を感じてしまうかもしれません。しかし、冷静さを失わず、戦略的に行動することが重要です。

賃料の値上げ通知が届いた際、企業が取るべきステップは、次の5つです。

それぞれについて詳しく解説します。

賃料改定通知の内容確認

賃貸人から賃料改定通知を受け取った場合、企業はまず、その内容を冷静に確認する必要があります。

確認する点は、次の3点です。

  • 通知内容の確認
  • 不明点の確認
  • 賃料交渉の可能性

通知内容の確認

まず、通知書に記載されている内容をしっかりと確認しましょう。新しい賃料はいくらになるのか、値上げの理由は何か、そしていつから新しい賃料が適用されるのかといった点が重要です。特に、値上げの理由が明確に記載されているかを確認しましょう。

不明点の確認

通知内容に不明な点があれば、賃貸人や管理会社に問い合わせて、丁寧に説明を求めましょう。例えば、「なぜ今回の金額になったのか」「他のテナントも同様の値上げをしているのか」など、具体的な質問をすることで、通知内容についての理解を深めることができます。

賃料交渉の可能性

賃借人は賃料値上げに納得がいかない場合は、そのまま受け入れる必要はありません。賃借人は、賃貸人に対して賃料交渉を行う権利が与えられているからです。

社内で対応方針を検討

賃料の値上げの通知内容を確認したら、社内で対応方針を検討します。まず、現状の事業計画や予算を踏まえ、賃料値上げが業績に与える影響を分析します。そして、賃料値上げを受け入れる余裕があるのか、それとも交渉によって値上げ幅の縮小や現状維持を目指すのか、あるいは移転も視野に入れるのかなど、具体的な対応方針を決定します。

このとき、経営層だけでなく、財務担当者や現場責任者など、関係部署と連携し、多角的な視点から検討することが重要です。

周辺の賃料相場を調査

賃借人が賃貸人と賃料交渉を行う場合、周辺の賃料相場を調査することは非常に重要です。

周辺の賃料相場は、賃貸人が提示してきた賃料が、相場と比べて高いか低いかを客観的に判断する材料となります。インターネットの不動産情報サイトや不動産会社に問い合わせるなどして、類似物件の賃料水準を調べましょう。

築年数、広さ、設備、アクセスなどの条件が、現在利用している物件と似たものと比較することで、より精度の高い情報収集が可能となります。

賃貸人と交渉

賃料の値上げに納得できない場合は、賃借人は賃貸人に対して交渉を行います。

交渉の際には、感情的にならず、冷静かつ丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。また、周辺相場や物件の状態など、具体的な根拠に基づいて交渉を進めることが重要です。

賃料の減額や現状維持を求めるだけでなく、更新期間の延長や共用部分の改修などを条件に提示するなど、賃貸人にとってもメリットのある提案をすることで、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。

店舗・オフィス家賃の値上げを求められたら拒否可能?交渉成功のためのコツを解説
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専門家への相談

賃貸人との賃料交渉が難航したり、専門的な知識が必要になったりした場合は、弁護士や不動産鑑定士などの専門家に相談することも有効な手段です。

専門家は法的観点からのアドバイスや、より有利な条件で交渉するためのサポートを提供してくれます。特に、契約内容が複雑な場合や、賃料の値上げの理由に疑問がある場合などは、専門家の意見を聞くことで、問題解決への糸口が見つかることがあります。

賃料の値上げは企業にとって避けることが難しい課題ですので、計画的に準備し適応する力を得ることが大切です。長期的な視点で考え、持続可能なビジネスを構築するために必要な手順を踏みましょう。

賃料の値上げで悩んでいるなら専門のコンサルタントに相談してみませんか?

賃料の値上げに対応するため、企業としては持続可能性を重視し、事前の対策を行うことが求められます。

賃料の見直しや交渉は、一見難しそうに思えるかもしれませんが、専門家のサポートを受けることで、そのプロセスが大幅に簡略化され、成功の可能性が高まります。ビズキューブ・コンサルティングでは、コスト削減や経費の見直しを考える賃借人様に向けて賃料適正化コンサルティングを実施しております。
不動産コンサルタントならではの視点で、お客様の店舗経営に関わるコスト削減に向けサポート致します。店舗経営やコスト削減でお悩みの際は、ぜひ一度ご相談ください。

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