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店舗・オフィス家賃の値上げを求められたら拒否可能?交渉成功のためのコツを解説

- 目次

賃借人は店舗やオフィスの家賃が値上げされる際、状況によっては拒否できたり値上げ幅の譲歩を引き出せたりする可能性があります。賃貸借契約を管理する経営者や担当者の中には、以下のような悩みを抱えている方もいるでしょう。
- 物価高騰が家賃値上がりの正当な理由になるのか知りたい
- 家賃値上げ拒否を成功させるための情報を事前に集めておきたい
- いつ家賃の値上げ要請が来ても、迅速に対応できるように準備しておきたい
本記事では、店舗やオフィスの家賃値上げ要求に対して拒否が可能かどうか、賃借人が家賃交渉を円滑に進めるためのポイントなどを詳しく解説します。家賃の値上げは珍しいことでなく、よくあることだと受け止め、適切な対応を心がけましょう。
家賃の値上げにつながる正当な理由
家賃の値上げにつながる正当な理由は、次の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
理由その1:物価の高騰などの経済状況
物価が高騰すれば、建築資材や労務コストも増加し、賃貸物件の維持費にも影響を与えます。維持費の増加は賃貸人にとって経済的な負担となるため、カバーするために家賃の値上げが必要となる場合もあるでしょう。
経済状況によっては家賃の値上げが適切な対応の1つであり、賃貸経営を安定化させるための手段として正当化される場合があります。
理由その2:物件の維持費や固定資産税の増加
物件の維持費や固定資産税の増加も、家賃値上げの正当な理由となり得ます。
地域の開発や地価の上昇などによって固定資産税が増加した場合、賃貸人は負担を軽減するために家賃を引き上げる場合があります。また、老朽化した建物の修繕やメンテナンス費用の増加も、家賃の値上げが求められる要因となるでしょう。
物件の維持費や固定資産税の増加に対応するための家賃の値上げは、物件を良好な状態に保つために必要な選択肢です。
理由その3:周辺の家賃相場との乖離
契約している物件の家賃が周辺の家賃相場と比較して著しく低い場合も、値上げの正当な理由となることがあります。
地域の地価や他の類似物件の家賃が上がることで、現行の家賃が不相応に低くなるケースがあります。賃貸人としては、適正な収益を確保するために周辺相場に合わせた家賃設定が求められるため、家賃の見直しや値上げが正当とされることがあるでしょう。
店舗の家賃相場が気になる方は次の記事を参考にしてください。家賃の適正化の方法を詳しく解説しています。
不当な家賃値上げと見なされるケース
家賃の値上げは違法ではありませんが、不当な理由と見なされる場合もあります。
例えば、賃貸人が単に収入を増やしたいという理由で値上げを行う場合、正当な理由とは言えず、拒否できる可能性があります。賃借人は、賃貸人の都合だけで値上げが求められた場合、妥当性を疑っても良いかもしれません。
また、周辺の家賃相場に比べて不当に高い値上げの場合や、賃貸借契約書に「家賃の値上げを行わない」旨の内容が明記されている場合も、拒否できる可能性があります。
賃借人は賃貸人に対して不当な家賃値上げを拒否する権利があります。不当な値上げに対しては、賃借人が冷静に対処し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。
家賃の値上げが行われやすいタイミング

家賃の値上げが通知されるタイミングとして多いのは、賃貸借契約の更新時期です。契約更新時は、契約内容を見直す良い機会でもあるため、賃貸人が値上げを提案することがあります。
契約満了時や周辺地域の地価が上昇した場合なども、値上げが検討されるタイミングです。特に、地域の開発やインフラの整備により地価が急激に上昇した場合、賃貸人が地価の変化を反映して家賃の値上げを求めることはよくあります。
契約更新のタイミングであれば、賃借人は交渉の余地も生じやすいため、適切な対応が求められます。準備不足によって不利な条件を受け入れることを避けるためにも早めに対応策を検討しておくのが賢明です。
家賃の値上げは拒否できるのか
賃貸人が提示する値上げに納得できない場合は、賃借人も交渉する権利があります。家賃の値上げは双方の合意が必要であり、一方的な値上げは成立しません。もし提示された値上げが不当であると感じた場合、賃借人はその理由や根拠を明確にし、交渉に臨むことが重要です。
しかし、一方的に拒否し続けると、賃貸人との関係が悪化し、最悪の場合は退去を求められるリスクもあります。適切な根拠を示しながら、冷静に話し合うことが重要です。
周辺相場や物件の状態、契約内容などを詳細に確認し、必要であれば第三者の意見や専門家のアドバイスを求めることで、交渉を有利に進められるでしょう。
家賃の値上げ要求に対して交渉を円滑に進めるためのコツ
家賃の値上げを求められた場合に、賃借人が賃貸人との交渉を円滑に進めるためには次の6つのコツをおさえておくと良いでしょう。
それぞれのコツを見ていきましょう。
コツその1:冷静な対応を心がける
家賃の値上げ通知を受け取った際、まず大切なのは冷静な対応です。感情的になってすぐに交渉に挑んだり、拒否したりするのは避けるべきです。
まず通知内容をしっかり確認し、賃貸人が値上げを求める理由を理解することから始めましょう。事実を把握し、準備を整えた上で交渉を進めることが、良好な関係を保ちながら解決策を見つけるために重要です。
賃借人は交渉に臨む前には、長く物件を使用したいなどの希望や要望を整理しましょう。賃貸人の立場を尊重しながらも、希望をしっかりと主張することで、双方にとって納得のいく結果を目指せます。
コツその2:家賃交渉を優位に進めるための情報を集める
家賃値上げの通知を受けた際、賃貸人はすぐに賃貸人と値上げ拒否の交渉を始めるのではなく、まず必要な情報を集めることが重要です。
まず賃貸借契約書に記載された家賃値上げに関する条項を確認しましょう。必要に応じて周辺の家賃相場を調査することが重要です。また、借りている物件の空き状況も確認しておくと良いでしょう。複数空きが出ている物件であれば、賃借人は交渉を有利に進められる可能性があります。
賃借人は集めた情報を基に冷静に交渉を進めることで、適正な家賃設定を目指せます。事前にしっかりと調査を行い、自身の立場を強化することで、家賃交渉をより有利に進められるでしょう。
賃貸人からの家賃増額請求への対応が気になる方は次の記事をチェックしてください。家賃の増額に関する交渉のポイントを詳しく解説しています。
コツその3:借地借家法の該当部分を把握しておく
家賃の増減に関する交渉を円滑に進めるためには、借地借家法の該当部分を把握しておくことが重要です。
借地借家法は賃貸人と賃借人の権利を守るためのものであり、家賃の値上げや値下げに関するルールが定められています。例えば、家賃の増減請求権など、法律に基づいた権利を理解しておくことで、交渉をより有利に進められます。
必要に応じて法律の専門家に相談するのも1つの手段です。特に、長期的な契約を結んでいる場合や、家賃値上げの理由が不透明であると感じる場合には、専門家の意見を仰ぐと良いでしょう。
家賃の値上げについて、借地借家法の該当部分を知りたい方は次の記事を参考にしてください。賃料増減請求権が明記されている借地借家法32条1項を詳しく解説しています。
コツその4:代替物件も検討する
賃借人は家賃の増額に関する交渉が難航した場合に備えて、代替物件の候補を検討しておくことも重要です。特に、交渉が決裂し、退去の可能性が出てきた場合でも、他の選択肢を持っていることで強気の交渉を続けられます。
新しい物件の候補をリサーチし、引っ越し費用や条件を把握しておきましょう。万が一退去を迫られた場合にも冷静に対応できるよう準備を整えておくことが大切です。代替物件を探しておくことで、現在の店舗やオフィスの条件が本当に最適かどうかを再確認する機会にもなります。
引っ越しが必要になった場合でもスムーズに移行できるよう、賃貸情報サイトや不動産会社を活用して、現実的な選択肢を見つけておくと良いでしょう。
コツその5:賃貸人との良好な関係を維持する
家賃の値上げを求められた場合も、賃貸人や管理会社との良好なコミュニケーションを心がけることで、信頼関係を築けるため、賃借人は円滑な交渉が可能になります。賃貸人の立場を尊重しつつ、冷静に家賃値上げの理由を確認し、賃借人の意見や希望を伝えることで、双方にとって納得のいく結果を目指せます。
賃貸人や管理会社と長期的に良好な関係を維持することが、将来的なトラブルを防ぐためにも重要です。定期的なコミュニケーションを通じて、互いの立場や考えを理解し合うことで、協力的な関係を築けます。また、賃借人は交渉後のフォローアップも怠らず、双方が納得する形で契約が続けられるよう努めることが望ましいです。
コツその6:根拠に基づき値上げ拒否または条件緩和を交渉する
賃借人は適切な根拠を集めた上で、家賃の値上げを拒否するか、値上げ幅の緩和を交渉することが重要です。
例えば、賃借人は周辺の家賃相場や契約書の内容を根拠に、具体的な数値や事実を基に交渉を進めることで、賃貸人に納得してもらいやすくなります。感情的にならず、冷静に状況を把握し、根拠に基づいて話し合いを行うことで、賃借人にとって有利な条件を引き出す可能性が高まるでしょう。
長期的に住み続ける意思を示すなど、賃貸人にとってもメリットのある提案をすることで、交渉が円滑に進む可能性が高まります。合理的な根拠と共に、双方にとって納得のいく解決策を見つけることを目指しましょう。

家賃の値上げ拒否が失敗しても避けるべきNG行為
家賃の値上げ拒否が失敗しても、次の行為は控えましょう。
それぞれのNG行為を詳しく見ていきましょう。
行為その1:賃貸人との連絡を絶つ
家賃の値上げ要求に対して、正当な理由があるにもかかわらず、無視したり連絡を絶ったりすることは避けるべきです。
賃貸人とのコミュニケーションを断つことは、関係悪化を招き、最終的には退去を迫られる可能性もあります。一方的な拒否ではなく、まずは賃貸人の立場や理由を理解し、冷静に対話を続けることが重要です。
連絡を絶つことで、信頼関係が損なわれ、円滑な交渉が難しくなるだけでなく、法的手続きに発展するリスクもあります。
賃貸人との関係は長期的に維持すべきものであり、例え意見が合わない場合でも、話し合いの場を持つことで妥協点を見つける可能性が高まります。無視や連絡断絶は避け、対話を通じて双方が納得できる解決策を探る努力が必要です。
行為その2:家賃の支払いをやめる
家賃の値上げに不満を持ち、家賃の支払いを完全に止めてしまうことは、望ましくないやり方です。
家賃の支払いを停止すると、家賃滞納と見なされ、賃貸人が法的に退去を求める正当な理由になり得ます。家賃滞納により、退去を余儀なくされる可能性が高まります。例え値上げ後の家賃が不当であると感じても、家賃の支払いは続けることが重要です。
もし賃貸人が値上げ後の家賃でなければ受け取らない場合には、供託制度を利用することで、法的に支払っている証拠を残せます。供託制度を利用することで、賃借人は法的に守られ、不利な状況を避けられます。
したがって、家賃の支払いを止める前に、他の対策や専門家のアドバイスを求めることが重要です。冷静に対応し、賢明な判断を下すことで事態が悪化するリスクを避けられます。
店舗・オフィス家賃の交渉はプロに任せるのがおすすめ
賃借人が行う店舗やオフィスの家賃交渉は、複雑で時間と手間がかかるため、専門家の助けを借りることが有効な場合もあります。
特に複数の物件を管理している場合、各賃貸人との交渉には詳細な準備が必要であり、専門的な知識が求められます。家賃値下げ交渉のサポートを得意とするコンサルタントは、現状を的確に分析します。賃貸人は、賃貸人との良好な関係を維持しながら、最適な条件で交渉を進めることが可能です。
また、専門家に依頼すると経営者や担当者は他の業務に専念でき、経営の効率化が期待できます。
家賃の適正化は、固定費削減につながり、経営を安定させるための重要な施策です。プロに任せることで、賃借人は交渉にかかる手間を省き、交渉の精度を高められるでしょう。
賃料適正化コンサルティングに興味がある方は次の記事を参考にしてください。コンサル導入の効果や注意点を詳しく解説しています。
店舗・オフィスの家賃の値上げ要請には適切に対処しよう
賃借人は店舗やオフィスの家賃の値上げを求められた際には、適切に対処することが重要です。本記事では、家賃の値上げを拒否できるかどうかの判断基準や、交渉を円滑に進めるためのコツについて詳しく解説しました。
家賃値上げの要請に対しては、感情的にならず、冷静に対応することが肝要です。賃借人が交渉を有利に進めるための根拠を集めることや、必要に応じて専門家の助けを借りることも大切です。
値上げの理由が周辺の家賃相場と乖離している場合は、賃料適正診断を利用して適正な家賃を把握しておきましょう。賃貸人との円滑な交渉を望む賃借人は、ぜひ無料の賃料適正診断を活用してください。