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ビズキューブ・コンサルティング株式会社
賃料適正化コンサルティング部 事務局

ビズキューブ・コンサルティング株式会社は、店舗・オフィスといった事業用不動産を対象とした
「賃料適正化コンサルティング」を日本で初めて事業化した企業です。
累計3,600社・年間約4,600件の支援実績をもとに、店舗・オフィスの賃料に関する情報を発信いたします。

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店舗・オフィスの賃料値上げ通知は拒否できる?企業が取るべき対応と判断基準を解説

目次
  1. 店舗・オフィスの賃料値上げ通知は拒否できる?まず押さえるべき結論
  2. 賃料値上げを拒否した後に何が起きるか|時系列で整理する
  3. 賃料増額通知を受けたらまず確認すべき3点
  4. 賃料値上げを拒否・協議するための根拠はどう整理するか
  5. 賃料値上げを拒否する場合の回答文書・メールの考え方
  6. 社内説明のために整理すべき判断材料
  7. まとめ|賃料値上げ通知は「拒否できる」、ただし判断を左右するのは根拠の質

貸主から賃料増額通知が届いても、その時点で新しい賃料が自動的に確定するわけではありません。借主である企業側には、提示された条件に納得できない場合、賃料の改定に応じず、協議を求める余地があります。

ただし、初動の対応を誤ると、その後の交渉や契約更新に影響が出やすくなります。よく見るのは、通知を受け取った担当部署が「とりあえず保留」のまま数週間が経過し、気づけば貸主側が提示した条件のまま話が進んでいるケースです。返答を先送りにした結果、後から「あの時点で了承したと思っていた」と言われ、交渉のテーブル自体が消えていた、というケースも弊社では複数件確認しています。

本記事では、店舗・オフィスを賃借している企業を想定し、賃料増額通知を受けた際にどの情報を確認し、どの順番で動くべきかを実務の流れに沿って解説します。

店舗・オフィスの賃料値上げ通知は拒否できる?まず押さえるべき結論

賃料増額通知が届いても、その通知だけで新しい賃料が確定するわけではありません。テナント企業側には、提示された条件に納得できない場合、内容を精査したうえで協議に入る余地があります。

ただ、「拒否できる」という一点で判断を終わらせてしまうのは危険です。
契約条項の読み方、支払い対応の仕方、貸主とのやり取りの初動によって、その後の交渉の進み方は大きく変わります。同じ"拒否"でも、進め方次第で条件の落としどころが変わる、というのが実務の実感です。

借地借家法32条では、租税負担の増減や物価変動、近隣賃料との乖離などにより賃料が不相当と認められる場合、貸主・借主の双方に賃料増減額請求権が認められています。つまり、貸主だけが一方的に値上げできるものではなく、法的にも「協議前提」の建てつけになっています。

参考:e-Gov法令「借地借家法」

当事者間で折り合いがつかない場合は、協議・調停・訴訟といった手続きを通じて妥当性を詰めていく流れになります。

ここで見落とされやすいのが、後から増額が正当と判断された場合の差額処理です。
借地借家法32条3項の規定により、不足分には年1割の利息が付きます。「とりあえず保留」のつもりで先送りにしていると、時間の経過とともに想定外のコストになる点は押さえておきたいところです。

感情的に受け入れる・拒否するという話ではなく、「どう判断し、どう動くか」を早い段階で固めておくことが重要です。

賃料増額通知は「請求」であり、届いた時点で金額は確定しない

貸主から「賃料増額のご請求」や「○月より賃料を改定したい旨のご連絡」が届いた場合、増額請求としての効力はその時点で生じます。
ただし、具体的な金額が確定するのは当事者間の合意、または調停・裁判による決定時点です。それまでの間、借主は自社が相当と考える額(通常は従前賃料)を支払い続ければよく、通知が届いた時点で貸主の提示額に自動的に従う義務は生じません。なお、後日、調停または裁判により、従前賃料より高い額を賃料として定められた場合、遡ってその差額及び差額に対する年1割の利息が付く可能性があります

もっとも、「義務がない」ことと「どう対応してもよい」は別の話です。
このタイミングで十分な確認をせずに現場判断で返答してしまうと、後から取り返しがつかなくなることがあります。特に店舗系では、本部の承認を得る前に現場担当者が「前向きに検討します」と口頭で答えてしまい、その発言が事実上の合意として扱われたケースも珍しくありません。一度受け入れに近い反応をしてしまうと、交渉の余地は急速に狭まります。初動での発言は慎重にコントロールする必要があります。

まずは賃貸借契約書を手元に置き、以下の点を確認してください。

確認項目確認する理由
賃料改定条項値上げの条件や手続きが定められている場合がある
協議条項「協議のうえ改定」といった文言がある場合の前提条件となる
自動改定条項一定条件で自動的に賃料が変更されるケースがある
契約類型普通借家か定期借家かで運用が変わる
不増額・不減額特約賃料改定の可否に制限が入っている場合がある

特に定期借家契約は要注意です。定期建物賃貸借では賃料改定をしない特約が有効とされるケースもあり、「一般的にはこうだから」という感覚のまま判断すると、契約上の前提と実態がずれます。

定期借家契約とは?メリット・デメリットと契約前のチェック項目
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また、賃料に争いがある状態でも、支払いをどうするかは別の論点です。
実務上は、従前賃料または自社が妥当と考える額を支払い続けながら、「現時点では合意していない」という意思と「協議を継続する意思」を書面・メールで残しておくのが基本です。この点を曖昧にしたまま進めると、後で「未払い」なのか「協議中」なのかの区別がつかなくなり、不要なトラブルに発展します。

拒否してもすぐ退去になるとは限らない|退去リスクが高まる本当の理由

賃料の値上げを拒否しただけで、直ちに退去に直結するケースは多くありません。問題になるのは、拒否した後の動き方です。

貸主との交渉を見ていると、「拒否したかどうか」よりも、その後の対応で評価が分かれます。たとえば回答を放置したり、支払いを止めたりすると、それだけで交渉の土台が崩れます。

特に避けたい対応は次の3つです。

対応想定されるリスク
通知を無視する協議の意思がないと判断されやすい
支払いを止める滞納扱いとなり、契約解除のリスクが現実的になる
口頭だけで対応する後から条件を巡って認識齟齬が生じる

これらは「合意していない」状態ではなく、「対応していない」状態と見なされるのが問題です。貸主側からすれば、交渉できる相手なのかどうかを見極める材料になります。

一方で、従前賃料を払い続けながら「現時点では合意できないが、内容を精査したい」という姿勢を明確に示しておけば、すぐに契約解除へ進むとは限りません。この状態で数回のやり取りを経て条件調整に入るケースも実際にあります。

貸主とのやり取りとは別に、社内の承認・経緯説明も並行して進める必要があります。誰がいつどの条件で回答したのか、どの資料をもとに判断したのか。こうした記録が残っていないと、社内にて後から経緯を説明できなくなります。交渉対応と同じくらい、やり取りの証跡をどう残すかを意識しておいてください。

テナント企業は「拒否するか否か」ではなく「何を根拠に判断するか」が問われる

店舗やオフィスの賃料改定では、「高い気がする」という印象だけで判断すると、社内承認も通しづらく、貸主との交渉でも根拠が弱くなります。最終的には、なぜその結論にしたのかを説明できる状態にしておく必要があります。

まずは、以下の5つの観点を洗い出してください。

比較すべき視点主な確認内容
相場妥当性周辺相場、成約賃料、立地・設備条件
契約条件更新料、原状回復、フリーレントなど総合条件
固定費影響年間コスト、複数拠点への波及
移転比較原状回復、移転費用、営業停止リスク
社内説明稟議・経営判断に必要な根拠

特に固定費影響は、月額だけで見ていると判断を誤りやすい観点です。
たとえば月額5万円の増額でも、3年契約なら180万円です。さらに複数拠点で同様の改定が続けば、固定費全体の前提が変わります。現場では「今月の話」として単発で判断してしまい、後から経営側と数字の認識がずれるケースも少なくありません。

賃料増額通知を受けた際には、初手で「受け入れるか」「拒否するか」は決めるのではなく、相場・契約条件・総コストを横に並べた上で結論を出す流れが現実的です。

必要に応じて第三者の賃料査定やデータを活用するのも有効です。定量値で比較することができるため通知額の妥当性を判断しやすく、社内説明時の材料になります。

ビズキューブ・コンサルティングでは、こうした判断に使える「賃料適正診断」を無料で提供しています。約15万件の実態分析賃料データと、お客様からお預かりする診断対象物件の賃貸借契約書をもとに適正賃料を算出しており、社内稟議の根拠データとして活用いただくケースも大変多いです。

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賃料値上げを拒否した後に何が起きるか|時系列で整理する

賃料値上げ対応の3ステップフロー

賃料値上げを拒否したとしても、すぐに裁判や退去に進むケースは多くありません。実際には、一定の手順を踏みながら条件を詰めていく流れになります。

段階主な内容借主側で押さえるべき対応
Step1貸主との任意協議通知受領・根拠確認・記録の保全
Step2調停第三者を交えた条件交渉
Step3訴訟・差額精算賃料支払いの継続と差額対応

ポイントは、「拒否したかどうか」ではなく、その後の動き方です。
初期対応や記録の残し方によって、交渉の展開が変わる場面は少なくありません。特に複数店舗・拠点を抱える企業では、店舗・拠点ごとの対応のばらつきがそのまま数十万〜数百万円単位のコスト差になって現れることがあります。

Step1:貸主への回答と任意協議

まずは「通知を受け取った」という事実を返すことが重要です。そのうえで、「内容を確認中であること」「社内での検討が必要であること」を明示します。

ここで結論を急ぐ必要はありません。
早い段階で方向性を固めてしまうと、その後の調整余地が狭くなります

初期対応として、以下の4点を押さえておけば大きなズレは出にくいです。

  • 通知受領をメールで返信する
  • 合意していない旨を明示する
  • 値上げ理由と根拠資料の提示を求める
  • 回答時期の目安を共有する

貸主側から提示される値上げ理由は、おおよそ次の範囲に収まります。

主な値上げ理由確認したいポイント
固定資産税の上昇実際にどの程度増加しているか
修繕費の増加修繕内容と費用の妥当性
周辺相場の上昇比較物件の条件が近いか
物価・人件費上昇増額幅との整合性

注意したいのは、「理由が理解できる=金額も妥当」ではないという点です。
特に「周辺相場が上がった」という説明は要注意で、築年数や契約条件の違いを考慮せずに比較しているケースが多く、坪単価だけを横並びにしても条件差が反映されていません。弊社で扱う案件でも、貸主が提示した相場データと実際の成約水準を比較すると、実は1〜2割程度の乖離があったというケースも珍しくありません。

この段階でどこまで条件を分解して見られるかが、その後の交渉の質を左右します。

やり取りはこの時点から記録に残しておいてください。
後から条件が動いたときに「どこで何を前提にしたのか」を遡れる状態にしておくことが重要です。

Step2:合意できない場合は調停へ|裁判所を通じた整理

任意協議で折り合わない場合、調停に進む可能性があります。ここで一気に対立構造になるわけではなく、あくまで第三者を入れて条件を詰めるプロセスです。

賃料増減額請求では、いきなり訴訟には進めず、原則として調停を経る必要があります。いわゆる「調停前置主義」です。

進み方としては、一方当事者が申立て→裁判所で調停期日を設定→双方が資料と主張を提出→合意すれば成立、難しければ訴訟へ、という流れになります。

賃料増減額請求権とは?借地借家法32条をわかりやすく解説
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この段階では、提出できる資料の質と量で結果の見え方が変わります
必要になる主な資料は以下のとおりです。

  • 契約書・賃料改定条項
  • 周辺相場データ(成約ベース)
  • 貸主側の根拠資料
  • 現状の負担状況
  • 条件比較資料

実務では、調停用に新たに資料を作るより、社内説明用に用意していたものをそのまま使うケースがほとんどです。裏を返せば、初期段階での情報整備が甘いと、調停直前で慌てて資料を作り直す羽目になります。

Step3:訴訟・差額精算|支払いは止めないのが前提

調停でも合意できない場合、訴訟に進む可能性があります。ただし、この間も賃料の支払いは止めません。

賃料に争いがあっても、支払いそのものを止めると滞納と扱われる可能性があります。従前賃料を払い続けるか、自社が妥当と考える額を支払うかのどちらかが基本です。

裁判などで増額が妥当と判断された場合は、差額を後から精算します。この際、借地借家法32条3項の規定により不足分には年1割の利息が付きます。長期化すればするほど、利息負担も積み上がる点は念頭に置いてください。

項目実務上の考え方
支払い従前賃料または相当額を継続
差額後から精算される
利息年1割(借地借家法32条3項)
未払い滞納扱いになる可能性

参考:e-Gov法令「借地借家法 第32条3項」

賃料水準が高い案件や多拠点に影響が及ぶケースでは、法務や外部の専門家を交えて判断することを勧めます。対応を誤ると、後のコスト差が予想以上に大きくなります。

賃料増額通知を受けたらまず確認すべき3点

賃料増額通知を受けたらまず確認すべき3点

賃料増額通知を受けたときに、いきなり「受け入れる」「拒否する」を決めてしまうと、その後の選択肢が狭くなります。まずは以下の3点を確認してください。

確認項目主な確認内容目的
①契約書・特約改定条項、自動改定、不増額・不減額特約契約上の前提を把握する
②貸主の根拠資料相場、修繕費、固定資産税提示額の妥当性を検証する
③やり取りの記録メール、通知書、面談内容後の説明・交渉に備える

①賃貸借契約書と改定条項・特約を確認する

まず賃貸借契約書を手元に出してください。増額通知の内容より、「契約上どう扱われるか」のほうが判断の起点になります。

確認項目確認ポイント
賃料改定条項どの条件・タイミングで改定できるか
協議条項協議が必要とされているか(法的拘束の範囲も含めて確認)
自動改定条項改定基準・時期・計算方法が明確か
通知期限改定通知の期限・適用時期が定められているか
更新条件更新時の条件変更の有無
不増額・不減額特約増額・減額が制限されているか(特約の有効性含む)
契約類型普通借家か定期借家か

特に定期借家と普通借家の違いには注意が必要です。定期借家では賃料改定をしない特約が有効とされる場合があり、「一般的にはこうだから」という理解で判断すると実態とずれます。

また、自動改定条項が入っている場合、貸主の通知よりも契約条項が優先されます。通知を起点に考えるのではなく、「契約上どうなっているか」から出発することが重要です。

店舗の賃貸借契約書の基本と押さえるべき記載事項|賃料・契約期間・原状回復などを徹底解説
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②貸主が示す値上げ理由と裏付け資料を確認する

貸主に値上げの理由があることと、その金額が妥当かどうかは別の問題です。ここを混同したまま進むと、数字の根拠を検証できないまま結論を出すことになります。

よくある理由は、固定資産税の上昇、修繕費・管理費の増加、周辺相場の上昇、物価・人件費の上昇、地価や再開発による環境変化などです。

ここで特に注意が必要なのは「相場が上がっている」という説明です。
そもそも「相場」は物件ごとに築年数・設備・契約条件が異なるため、坪単価だけを横並びにしても条件差が無視されています。実際に弊社の案件でも、貸主が根拠として提示してくる相場データは、新築・築浅の募集物件が混在していることが多く、自社物件と同条件で比較できていないケースが目立ちます。

通知額の妥当性を検証する際は、以下の項目を揃えたうえで比較することが必要です。

比較時の確認項目見るべきポイント
面積・坪単価面積差による単価のブレ
建物条件築年数・設備・グレード
契約条件フリーレントや更新料
共益費表面賃料との合算で判断
原状回復実質的な負担差

また、募集賃料と成約賃料は一致しないことが多い点も見落とされがちです。
ポータルサイトの数字だけで判断すると、実勢より高い水準を基準にしてしまいます。数字を並べるだけでなく、「どの条件で比較するか」を揃えて初めて交渉の土台が作れます。

③やり取りはすべてメール・書面で記録する

交渉内容は必ず記録として残してください。後から条件が変わった際に「当初の前提」を確認できず、認識のずれが起きやすくなるためです。

記録すべき内容理由
値上げ通知書条件と時期の確認
メール履歴協議の経緯を追うため
電話メモ発言内容の補完
面談記録条件変更の確認
貸主資料根拠検証のため
社内共有資料決裁履歴の管理

電話だけで終わらせると、後から認識がずれやすくなります。その日のうちに要点をメールで送るだけで、不要な手戻りはかなり減ります。
内容は下記のような簡単なもので構いません。

>○月から改定希望との理解
>理由として修繕費増加の説明あり
> 関連資料の提供を依頼

このレベルでも十分機能します。

多店舗・多拠点の場合はさらに注意が必要です。
拠点ごとに対応が分かれると、同じ条件でも判断にばらつきが生じます。本部側で記録の取り方と共有ルールを揃えておかないと、後から全社として見直すことができなくなります。

賃料値上げを拒否・協議するための根拠はどう整理するか

「高いので拒否します」と伝えるだけでは、貸主との協議材料として機能しません。重要なのは、提示された増額幅が契約条件や周辺相場と比べて妥当かどうかを説明できる状態にすることです。

「なぜ受け入れが難しいのか」「どの条件であれば協議できるのか」を先に整理しておく。感情的な拒否ではなく、根拠に基づく協議に持ち込むことが目的です。

主に確認すべき観点は3つです。

判断ポイント確認すべき内容
相場の精度募集賃料だけでなく、成約賃料や条件差も確認する
実質負担坪単価だけでなく、共益費・管理費・設備条件も含めて比較する
移転総コスト増額を受け入れた場合と移転した場合の総額を比較する

①相場の精度|募集賃料だけで比較すると相場判断を誤る

ポータルサイトや募集資料に掲載されている賃料は、あくまで貸主側の希望額です。実際の成約時にはフリーレントや条件調整が入ることが多く、表示金額どおりに決まっているとは限りません。

たとえば、表面賃料が月30万円の物件でも、フリーレント6か月が付いていれば1年間の実質負担は180万円です。同じ月30万円でフリーレントなしなら360万円で、180万円の開きになります。同じエリアでも、駅距離・築年数・設備仕様によって賃料帯は異なります。

比較時には以下の項目まで確認する必要があります。

  • 成約時の実質賃料
  • フリーレントの有無・期間
  • 更新条件や契約期間
  • 原状回復条件
  • 保証金・敷金条件
  • 同グレード物件との比較

②実質負担|賃料だけで判断すると総コストを見誤る

表面上の賃料だけでなく、実際の総負担まで含めて見ることが重要です。共益費・面積・設備・原状回復条件によって、企業側の総負担額は大きく変わります。

比較項目確認ポイント
共益費・管理費月額の総支払額はいくらか
面積専有面積と実際に使える面積に差はないか
設備空調・電気容量・耐震性能に不足はないか
原状回復退去時負担が重くないか
フリーレント実質賃料にどの程度影響するか
更新条件更新料や再契約条件に不利な点はないか

たとえば、坪単価が同じでも原状回復でスケルトン返しを求められる物件では、退去時に数百万円単位の負担差が出ます。共益費を合算すると表面賃料より実質負担が高くなるケースもあります。賃料相場との比較だけでなく、最終的にいくら負担するのかを軸に見てください。

③移転総コスト|移転した場合の総コストと比較する

コスト比較チャート

値上げに納得できない場合、移転の選択肢も視野に入ります。ただし、増額額だけを見て移転を判断すると、かえって総負担が増える可能性があります。

移転時に発生する主なコストは以下のとおりです。

主な移転コスト内容
原状回復費現拠点の退去工事
新装工事費新拠点の内装・設備工事
引越し費用什器・在庫の移設
初期費用敷金・保証金・仲介手数料
営業影響工事期間中の売上減少
社内工数総務・IT・法務対応

月額5万円の増額は3年間で180万円の固定費増加です。一方で移転には数百万円単位の初期費用がかかることも多く、単純に「増額通知が来ても移転すればよい」とはなりません。以下を並べて比較した上で判断してください。

  • 増額を受け入れた場合の累計コスト
  • 移転にかかる初期費用
  • 移転後の運用コスト
  • 営業停止や売上への影響
  • 従業員・顧客への影響
  • 将来的な賃料上昇リスク

多店舗・多拠点企業では、1拠点の判断が他拠点にも影響します。短期的な賃料差だけでなく、全社の固定費管理として捉えることが重要です。

値上げ妥当性を判断するための比較チェックリスト

チェック項目確認ポイント
坪単価周辺相場との差
共益費・管理費実質月額負担
面積専有面積と実効面積
設備空調・耐震・電気容量
契約条件更新料・契約期間
原状回復退去時負担
フリーレント実質賃料への影響
成約賃料募集賃料との差
移転総コスト初期費用・営業影響
他拠点影響条件の前例化リスク

ここまで情報を揃えると、「なんとなく高い」ではなく、提示額のどこが問題なのかを具体的に説明できるようになります。

ビズキューブ・コンサルティングでは、無料の賃料適正診断を提供しています。約15万件の実態分析賃料データと、お客様からお預かりする診断対象物件の賃貸借契約書をもとに適正賃料を算出しており、社内説明の際の根拠データとして活用いただいています。

賃料値上げを拒否する場合の回答文書・メールの考え方

賃料値上げの通知を受けた際に、「返事の仕方」で交渉を難しくしてしまうケースは意外と多くあります。

よく見るのは次の3つです。

  • 担当者が電話で曖昧に了承してしまう
  • 「社内で確認します」だけ返して、その後連絡をしない
  • 感情的に「高すぎるので拒否します」と返す

貸主側も「この借主は協議する意思があるのか」を見ながら動いています。初回の返答次第で、その後のやり取りの温度感が変わることがあります。

重要なのは、強く反論することではありません。現時点では合意していないこと、ただし協議を続ける意思があること、この2点を記録に残る形で伝えることです。

たとえば以下のような返信が機能します。

>ご通知を受領いたしました。
>現時点では、提示条件での合意には至っておりません。
>まずは増額理由および根拠資料をご共有いただけますでしょうか。
>社内確認のうえ、○月○日を目安に改めてご連絡いたします。

重要ポイント実務上の目的
未合意であることを明示する黙認と受け取られないため
協議継続の姿勢を示す関係悪化を防ぐため
記録に残る表現にする後の説明・確認に備えるため

「拒否したかどうか」より「どう返答したか」で揉めるケースが実際にあります。回答文書は「拒否のための文章」ではなく、「協議を進めるための記録」として作成してください。

社内説明のために整理すべき判断材料

賃料値上げへの対応では、貸主との交渉と並行して、社内でどう説明するかが重要になります。総務・店舗開発部門だけで判断が完結するケースは多くありません。経営層・法務・経理など複数部門が関与するため、「なぜその方針を取るのか」を数値と根拠で説明できる状態にしておく必要があります。

①固定費影響を年額・契約期間・拠点数で示す

社内説明では、月額増額だけでは経営層に判断材料として機能しません。年額、契約期間全体、拠点波及時の影響まで換算して提示することが重要です。

確認項目整理例
月額増額月5万円増
年間影響額年60万円増
契約期間影響3年で180万円増
拠点波及時5店舗で年間300万円増
将来影響次回更新時の基準化リスク

月額では小さく見える増額も、拠点数と契約期間で見ると判断が変わります。現場が「今月5万円の話」として処理してしまい、経営側が後から「それが全社で年間300万円の話だったのか」と気づく、というケースは実際に起きています。

②協議・拒否した場合のリスクと工数を整理する

「拒否すれば得」という話ではありません。協議・拒否には一定のリスクと社内工数が伴います。

主なリスク内容
調停・訴訟リスク解決まで時間がかかる可能性
社内工数法務・総務・経理対応が必要
関係悪化修繕・更新協議へ影響する可能性
意思決定負荷稟議・承認プロセスが増える
営業影響店舗運営へ影響する場合がある

増額幅が月1〜2万円程度の場合、協議にかかる工数のほうが大きくなることもあります。逆に、多店舗展開では月数万円でも全社影響は大きくなります。「協議すべきか否か」ではなく、総コストとして合理的かどうかを判断軸にしてください。

社内説明では以下を並べて提示することが効果的です。

  • 受け入れた場合の固定費増加(累計)
  • 協議・拒否した場合のリスクと工数
  • 移転した場合の負担
  • 更新時期や営業への影響

なお、「工数が取れないが、増額は阻止したい」という場合、ビズキューブ・コンサルティングでは、累計50,000件の賃料適正化支援実績をもとに、貸主の属性や実態分析賃料データを踏まえた交渉シナリオの提供も行っています。完全成功報酬型のため、まずはお気軽にご相談ください。

③多店舗・多拠点企業では前例化リスクも見る

同一オーナーや同一管理会社が複数拠点を管理している場合、1件で受け入れた条件が他拠点にも展開されることがあります。

例えば、下記のような例です。

固定費影響
月3万円増×1店舗年36万円増
月3万円増×10店舗年360万円増
月5万円増×20店舗年1,200万円増

「この店舗だけの話」として現場が処理した条件が、翌年の更新時に他の全拠点への交渉基準として使われた、というケースは実際にあります。一度認めた条件が今後の改定時の前例になるリスクは、チェーン展開企業では特に意識する必要があります。現場判断だけでなく、本部主導で全社方針を固めておくことが重要です。

社内説明チェックリスト

チェック項目確認ポイント
年間影響額月額増額×12か月
契約期間影響3年・5年での累計額
拠点波及他店舗へ同条件が広がる可能性
貸主根拠増額理由と資料の有無
協議リスク調停・工数・関係悪化
移転比較移転総コストとの比較
判断方針受け入れ・協議・拒否・移転

特に多店舗・多拠点企業では、1件の判断が全社コストへ波及するため、客観データをもとにした根拠がないまま経営層に説明しても承認が取りにくくなっています。社内説明を行う際には、数字で語れる状態を作ることが前提になります。

まとめ|賃料値上げ通知は「拒否できる」、ただし判断を左右するのは根拠の質

賃料増額通知が届いても、その通知だけで新しい賃料が確定するわけではありません。借主企業側には、協議・条件調整・一部受け入れ・拒否といった選択肢があります。

ただし、どの方針を選ぶにしても、以下の情報を手元に揃えておかないと、貸主との交渉でも社内説明でも根拠として機能しません。

  • 契約書・改定条項の内容
  • 貸主が示す値上げ根拠
  • 周辺相場や成約水準(条件を揃えたもの)
  • 坪単価以外の実質負担
  • 移転した場合の総コスト
  • 多拠点への波及リスク
  • 固定費への中長期影響

ビズキューブ・コンサルティングの「賃料適正診断」では、約15万件の実態分析賃料データをもとに対象物件の適正賃料を算出します。提示された賃料の妥当性を数値で検証でき、社内稟議や経営層への説明時の根拠としても活用いただいています。
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払いすぎている賃料、放置していませんか?

実は、相場よりも高いテナント賃料を支払い続けている企業は、少なくありません。
その差額は、毎月数十万円から数百万円に及ぶ可能性があります。

ビズキューブ・コンサルティングは、賃料適正化コンサルティングのパイオニアとして、
これまでに【35,558件・2,349億円】の賃料削減を支援してきました。

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