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店舗・オフィスの家賃は減額できる?ガイドラインや事例に基づいて解説

- 目次

店舗・オフィスの家賃はランニングコストの中で大部分を占める項目です。
- どのような条件だと家賃減額が認められるのか知りたい
- 家賃減額交渉の進め方を知りたい
収益率向上のために店舗・オフィスの家賃を減額する際、上記のような悩みを抱えるオーナー様もいるでしょう。本記事では、店舗・オフィスの家賃を減額する際に必要な条件や進め方を、ガイドラインや裁判例を用いながら解説します。
最後まで読むことで、賃貸人との関係性を維持したまま家賃減額交渉ができるようになるので、ぜひ参考にしてください。
家賃の減額と借家借地法の関係
家賃の減額をするにあたって、借家借地法について把握しておきましょう。借家借地法とは、賃貸人と賃借人の間での土地や建物の賃貸借に関する法律です。その中に賃料増減請求権が存在します。
賃料増減請求権とは、経済事情の変動などにより家賃が不相当となった場合、家賃の増減を請求できる制度です。経済事情は賃貸人、賃借人双方が互いに影響を受けるため、それぞれ家賃の増額、減額を請求できるようになっています。
以下の記事では、賃料増減請求権についてくわしく解説しているので、気になった方は参考にしてください。
賃料減額は以下の条件の場合に請求が可能です。
一つずつ解説していくので、参考にしてください。
条件その1:近隣の家賃相場が下落した場合
近隣の家賃相場が下落し、自社の家賃が周囲の物件と比べて高い状態だと、家賃減額請求が認められる可能性があります。店舗・オフィスの家賃は、条件が近い周囲の物件の影響を受ける傾向にあります。
元々予定していた大規模な再開発に合わせて家賃を設定していても、計画が中止されると相場が変動することもあるでしょう。このようなケースでも、賃料減額請求権を請求できる可能性があります。
ここで重要なのが、近隣の家賃相場が下落したからといって、賃料減額請求権が必ず認められるわけではないという点です。店舗・オフィスの家賃を考える際、さまざまな要素から判断する必要があるため、あくまで「認められる可能性がある」と理解しておきましょう。
以下の記事では、店舗・オフィスの家賃相場の適正化について詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
条件その2:土地建物に対する租税その他の負担が減額した場合
土地建物に対する租税や、その他の負担が増減した場合は賃料減額請求権が請求できる可能性があります。
具体例については、以下の通りです。
増減する項目 | 具体例 |
土地建物に対する租税 | 固定資産税都市計画税 |
その他負担 | 建物の維持管理費建物の修繕費損害保険料 |
土地建物に対する租税は、周囲の環境の変化に大きく影響されます。もともと住宅地としていた土地の近くに商業施設ができると、土地や建物の評価額が上がり、固定資産税も上がる傾向にあります。
都市計画税は固定資産税と同様、周囲の土地や建物の評価額が引き上げられるにつれて上がっていく税金です。以前と比べて、物件周囲の開発が進んでいたら、固定資産税や都市計画税を意識しましょう。
条件その3:土地建物に対する価格の低下その他の経済事情が変動した場合
土地建物に対する価格の低下その他の経済事情が変動した場合、賃料減額請求権を行使できる可能性があります。
変動する項目と具体例は、以下の通りです。
変動する項目 | 具体例 |
土地建物に対する価格 | 経年劣化地価の変動地域の変化 |
その他の経済事情 | 物価所得水準経済活動 |
上記の項目は、家賃に関連づけられるもので、賃料減額の理由として考慮されるべきとされています。物価の上昇は賃借人の経済的負担が増加するため、賃料減額の正当な事由として認められやすいです。
また、所得水準が変動した結果、賃借人の経済的負担が増加したのであれば、賃料減額を請求しやすくなります。
店舗・オフィスの家賃減額が認められた裁判例
ここでは、経済事情に大きな変化があったことによって過去に店舗・オフィスの家賃減額が認められた裁判例を紹介します。
判決日 | 東京地裁平成17年3月25日判決 |
原告 | オフィスビルの賃借人 |
家賃減額率 | 約11% (従前家賃月額82,594,900円から73,672,472円へ減額) |
理由 | 本件対象建物が存する地域における竣工5年以上の大規模ビルの新規家賃は、平成12年時点から平成14年時点では11.28%の下落平均募集家賃は、4.59%の下落地価公示価格は、平成12年時点から平成14年時点では6.9%の下落 |
この裁判例では、家賃を約11%減額することに成功しています。家賃減額を成功できたポイントとして、近隣の比較対象物件がどのくらい変化しているのかを示せた点が大きいようです。
判決日 | 東京地裁平成8年7月16日判決 |
家賃減額率 | 約28% (実質家賃月額1,016,600円から月額730,000円へ減額) |
理由 | 本件賃貸借契約の平成7年1月28日時点における正常実質支払家賃は月額632,000円本件店舗が所在する地区における貸しビルの家賃は、平成6年には平成3年のピーク時の約60%の水準になっています。 |
この裁判例では、家賃を約28%減額することに成功しています。土地や建物の価値は周囲の環境や時代の流れとともに、変化していくことに着目できている点がポイントです。
店舗・オフィスの賃料減額請求のやり方
店舗・オフィスにおける賃料減額請求権の行使方法について解説します。店舗・オフィスの賃料減額請求権は、賃借人の権利ですが、念のため交渉の前に契約書を確認しておきましょう。

手順その1:賃料減額の意思を伝える
賃貸人に対して賃料減額の意思を伝えてから、賃料減額請求をしましょう。意思を伝える方法は口頭でも可能ですが、意思を伝えた証拠を残すために配達証明付内容証明郵便で送付すると安心です。
賃料減額請求をする際、意思表示が賃貸人に到達した時点で賃料減額請求権を行使したという法的な効果が発生します。日付が記載されている書類などは、重要な証拠となるためしっかりと残しておきましょう。
意思表示に必要な記載事項は、以下の項目を参考にしてください。
送付する日付賃貸人の住所と氏名賃借人の住所と氏名家賃を減額する理由家賃減額開始の希望月減額後に希望する家賃減額請求を行う対象物件の所在地 |
内容証明郵便は有効な証拠ですが、賃貸人にとっては心理的な負担となってしまうこともあるため、事前に電話や手紙などでワンクッション挟んでもよいでしょう。
手順その2:交渉をする
賃料減額権を行使する意思を賃貸人へ伝えたら、家賃減額のための交渉をしましょう。交渉の場で、家賃を減額する理由と希望の家賃を伝えられるように、関連する資料を用意します。
賃貸人が賃料減額請求に合意するのであれば、書面にサインをもらうなどしてから大切に保管しておきましょう。
賃貸人が賃料減額請求に応じないのであれば、法的措置によって解決を検討することもあります。
店舗・オフィスの家賃減額交渉のポイント
店舗・オフィスの家賃減額交渉のポイントは以下の通りです。
店舗・オフィスの家賃減額交渉を成功させるために、上記の項目は最低限守っておく必要があります。
ポイントその1:賃貸人と今後の関係に影響が出ないようにする
店舗・オフィスの家賃減額交渉の際は、賃貸人と今後の関係に影響が出ないように注意する必要があります。
既存の物件で営業を続けていく以上、賃貸人と良好な関係性を維持するに越したことはありません。しかし、家賃交渉という賃貸人にとっても緊張感のある場で、賃借人が横柄な態度で交渉に臨んでしまうと、交渉が決裂するどころか今後の付き合いが難しくなっていくでしょう。
ポイントその2:家賃減額のための理由を用意しておく
店舗・オフィスの家賃交渉の場では、家賃減額のための理由を用意しておきましょう。
家賃減額請求をする際は、家賃が不相当な理由を用意しておく必要があります。家賃相場が乖離していることを交渉の理由として持ち出すのであれば、不動産鑑定士が作成した適正家賃評価額の算定資料などを用意しておきましょう。
経済事情の変動を交渉の理由として持ち出すのであれば、消費者物価指数や失業率などを示せる資料を用意しておくと安心です。
店舗・オフィスの家賃減額交渉を断られた場合の解決策
家賃減額交渉のために準備を整えていても、断られてしまうことがあるでしょう。しかし、断られたからといって、家賃減額を諦める必要はありません。
店舗・オフィスの家賃減額交渉を断られた場合の解決策は以下の通りです。
解決策その1:各種支援金を活用する
家賃減額交渉を断られて家賃減額が難しくなってしまった場合、各種支援金を活用するのも一つの手です。
新型コロナウイルスが蔓延してから、経営に苦しんだ企業は多く存在します。新型コロナウイルスによって営業不振となった企業に対し、国や自治体は支援策を打ち出しました。
支援金制度は、世間の状況に応じて申請可能期間が設けられているため、経済産業省や各自治体のホームページを確認しましょう。
解決策その2:不動産の専門家に依頼する
店舗・オフィスの家賃減額交渉を断られた場合は、不動産の専門家に依頼してみましょう。不動産の専門家は、専門的な知識を持っているだけでなく、交渉を成功させるためのノウハウも持ち合わせています。
賃貸人との関係性を悪化させたくない賃借人は、不動産の専門家へ依頼することがおすすめです。
以下の記事は賃料の適正化について解説しているので、あわせて参考にしてください。
家賃減額が可能か悩んだときはビズキューブ・コンサルティングへ相談を
以前と比べると法整備も進み、賃借人が家賃減額のために動きやすくなっています。裁判例でも紹介したように、正当な理由であれば家賃を約20%減額できることもあるでしょう。
店舗・オフィスの家賃減額は、条件に当てはまれば実現可能です。しかし、専門的な知識をそろえたうえで、適切な進め方で交渉をしなければ成功率は下がるでしょう。
ビズキューブ・コンサルティングでは、無料賃料適正診断を行っています。不動産の専門家が多数在籍しており、たしかな実績もあります。家賃減額が可能かどうか悩んだ場合は、一度ビズキューブ・コンサルティングへご相談ください。

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【監修者】幸谷 泰造(弁護士)
東京大学大学院情報理工学系研究科修了。ソニー株式会社で会社員として勤めた後弁護士となり、大手法律事務所で企業法務に従事。一棟アパートを所有する不動産投資家でもあり、不動産に関する知識を有する法律家として不動産に関する法律記事の作成や監修、大手契約書サイトにおいて不動産関連の契約書の監修を行っている。