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プラスチック資源循環促進法をわかりやすく解説!概要と取り組み事例

目次
  1. プラスチック資源循環促進法と法律が作られた背景
  2. 事業者が取り組むべきプラスチック資源循環とは
  3. 企業の主な取り組み事例

プラスチック資源循環促進法に関する知識は、プラスチック製品を扱う事業者にとって必要不可欠です。しかし、本法律にはさまざまな制度や国家間の取り決めなどが関係しており、わかりにくい印象を持っている方も多いでしょう。

そこで本コラムでは、プラスチック資源循環促進法の概要や事業者が取り組むべき項目、実際の施策例などをわかりやすく解説します。プラスチック資源の適切な循環を促すために、お伝えする情報を参考に自社に適した取り組みを検討しましょう。

プラスチック資源循環促進法と法律が作られた背景

プラスチック資源循環促進法は、持続可能な(サステナビリティ)社会の実現に向け、社会で使われるプラスチック資源の循環を促して環境に配慮した経済活動の流れを整えるための法律になります。
こちらでは、法律の概要や制定の目的、背景について解説します。

プラスチック資源循環促進法とは

プラスチック資源循環促進法とは、「事業者」「自治体」「消費者」が連携しながら、プラスチックのライフサイクル全般における資源循環の取り組みを求める法律です。2022年(令和4年)4月1日に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の略称で、「プラスチック新法」とも呼ばれます。プラスチック製品の設計・販売、廃棄物の処理というプロセスの中で、プラスチック資源循環などの取り組み( 3R + Renewable )を促進する目的で制定されました。

3R + Renewable によるプラスチック資源循環とは

3R + Renewable とは、プラスチック資源循環促進法における基本原則のことです。 3R + Renewable を実践することでプラスチックのライフサイクル全体を通じた資源循環を目指します。

3Rは、「Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」の3つを指します。Reduceは製品に使用する資源の量や廃棄量を減らすこと、Reuseは使用済みの製品や部品を再利用すること、Recycleは廃棄物を新たな製品の原材料やエネルギー源として活用することを意味する言葉です。また、Renewable(リニューアブル)は再生素材や再生可能資源(紙・バイオマスプラスチック等)に切り替える取り組みを指します。

プラスチック資源循環促進法が作られた背景

プラスチックは汎用性が高く、多くの製品や容器包装に使用されているため、プラスチックに関して包括的に資源循環体制を強化する必要性が高まっています。実際、昔と比べてプラスチックの使用量が増えることでさまざまな問題も生じています。具体的には、海洋プラスチックごみ問題や気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化などが代表例です。日本は多くのプラスチック問題に対応するため、次に挙げるような戦略を打ち出しています。

  • プラスチック資源循環戦略

プラスチック資源循環戦略では、3R+Renewableに関する具体的な目標が設定されました。例えば、Reduceでは2030年までにワンウェイ(使い捨て)プラスチックの累計排出量を25%減らすことや、Renewableでは2030年までにバイオスマスプラスチックを約200万トン導入するなどの目標を掲げています。また、Reuse・Recycleについては、分別回収やリサイクルを推進することも求められています。

  • 大阪ブルー・オーシャン・ビジョン

大阪ブルー・オーシャン・ビジョンとは、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をなくすことを目指す計画のこと。2019年(令和元年)に開催されたG20大阪サミットで各国首脳に共有されました。日本は、途上国の廃棄物の排出抑制能力を向上させるため、インフラ整備等の支援を行っています。

  • 2050年カーボンニュートラル

カーボンニュートラルとは、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標のことです。具体的には、関連する事業への出資制度の制定や成長が見込まれる産業への積極投資、地球温暖化対策計画の見直しなどに取り組み、脱炭素社会の実現を目指しています。

事業者が取り組むべきプラスチック資源循環とは

プラスチック資源循環に取り組む事業者は、「製造事業者」「販売・提供事業者」「排出事業者」に分類できます。こちらでは、対象事業者が取り組むべき内容を解説します。

制度概要

こちらの表は、プラスチックのライフサイクルごとに求められる資源循環に関する取り組みや対象物、対象者などをまとめたものです。該当する対象物(製品や廃棄物)を扱う事業者や自治体は、ライフサイクルの段階に応じてプラスチック資源循環促進法で定められた措置を講じる必要があります。

例えば市区町村の場合、プラスチック製品の製造や販売のフェーズではほとんど関わりがないため、分別収集や再商品化が取り組みの中心です。一方、製造事業者や販売事業者の場合、設計から製造、販売、回収まで多くのプロセスで役割を果たすことが求められます。下記で詳細を確認しましょう。

事業者に求められる内容

製造事業者

製造事業者は、まず設計・製造のフェーズでプラスチック使用製品設計指針をクリアし、設計認定を受けることが求められます。プラスチック使用製品設計指針とは、プラスチック使用製品の設計や製造の段階において製造事業者が取り組むべき事項や配慮すべき事項をまとめたものです。

具体的には、包装の簡素化や長期使用化・長寿命化、分解・分別の容易化などの構造面に関する内容となっています。プラスチック以外の素材への代替や再生プラスチックの利用、バイオプラスチックの利用などの材料に関係する事項、製品のライフサイクル評価などの項目がまとめられています。

また、設計認定制度とは、上記指針をクリアした製品について、主務大臣が特に優れた設計の製品を「認定プラスチック使用製品」として認定し、グリーン購入法上の配慮や支援を受けられるようにする制度です。指定された調査機関に設計調査の申請を行い、調査の結果が国に通知された後、国から設計認定を受けます。プラスチックの資源循環を実現するためには、製造事業者が設計段階から指針に配慮し、設計認定を受けられる製品を製造することが重要です。

次に、製造事業者には排出・回収・リサイクルのフェーズで、自治体や消費者と協力して自主回収・再資源化に取り組むことが求められています。具体的には、製造事業者は「自主回収・再資源化事業計画」を策定し、国の認定を受けることで自主回収・再資源化事業を行えます。多くの製造事業者が認定を受ければ、回収拠点が増加し、消費者が分別や回収に協力しやすくなるのがポイントです。事業者の効率的な資源回収にもつながるでしょう。

販売・提供事業者(小売り・サービス業など)

小売業やサービス業などの販売・提供事業者は、販売・提供のフェーズにおいて、「特定プラスチック使用製品」の使用の合理化が求められます。具体的には、特定プラスチック使用製品として定められた12品目について、「提供方法の見直し」や「提供する製品自体の工夫」などを通して特定プラスチック使用製品の使用の合理化に取り組む必要があります。

プラスチック資源循環促進法の12品目と、合理化の取組事例を紹介
プラスチック資源循環促進法の12品目と、合理化の取組事例を紹介

フォークやスプーン、飲料用ストロー、歯ブラシ、衣類用ハンガーなどが特定プラスチック使用製品の代表例です。それぞれの対象製品について、使用の合理化に取り組む必要のある業種が設定されています。詳細は以下の表をご確認ください。

対象製品(A)対象業種(B)
①フォーク
②スプーン
③テーブルナイフ
④マドラー
⑤飲料用ストロー
●各種商品小売業
(無店舗のものを含む。)
●飲食料品小売業
(野菜・果実小売業、食肉小売業、
 鮮魚小売業及び酒小売業を除き、
 無店舗のものを含む。)
●宿泊業
●飲食店
●持ち帰り・配達飲食サービス業
⑥ヘアブラシ
⑦くし
⑧かみそり
⑨シャワーキャップ
⑩歯ブラシ
●宿泊業
⑪衣類用ハンガー
⑫衣類用カバー
●各種商品小売業(無店舗のものを含む)
●洗濯業

また、販売・提供事業者は、製造事業者と同様に排出・回収・リサイクルのフェーズで自主回収・再資源化が求められています。なお、薬局(ドラッグストア)の業界団体である日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は法律の施行に先立って、2021年10月から店舗で日用品容器を回収するなどの取り組みを行っています。

排出事業者(事業所、工場、店舗等で事業を行う事業者の多くが対象)

排出事業者は、排出・回収・リサイクルのフェーズにおいて、排出の抑制・再資源化等に取り組む必要があります。小規模企業者等以外の事業所、工場、店舗等で事業を行う事業者の多くが対象です。こちらの仕組みの対象外である小規模企業者等とは、従業員の数が20人以下の商業・サービス業以外の事業者や、従業員の数が5人以下の商業またはサービス業の事業者のことです。

対象の排出事業者は、「排出事業者の判断基準省令」に基づいたプラスチック使用製品産業廃棄物等の抑制・再資源化に関する取り組みを行います。例えば、原材料の使用の合理化や端材の発生の抑制、包装の簡素化、再資源化等を阻害するおそれのあるものの混入防止、再資源化が難しい場合の熱回収の実施などが挙げられます。

排出事業者は、「再資源化事業計画」を作成し国の認定を受ければ、廃棄物処理法に基づく許可がなくても再資源化事業を行うことが可能です。また、主務大臣は排出事業者に対して必要な指導・助言を行えます。さらに。多量排出事業者に対しては、取り組みが著しく不十分な場合に勧告・公表・命令等を行うことができると規定されています。多量排出事業者とは、前年度のプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出量が250トン以上の事業者のことです。

企業の主な取り組み事例

プラスチック問題に対する実際の企業の取り組みについては、事例をまとめたサイトなどのWebメディアを参考にすると良いでしょう。

一般社団法人 日本経済団体連合会「SDGsに資するプラスチック関連取組事例集」

経団連がまとめたこちらのページでは、企業名とプラスチック問題に関連する取り組み内容を一覧で確認できます。ReduceやReuseなど、取り組みの例が項目ごとに分けてまとめられているのが特徴です。今後自社で導入予定の取り組みがもたらす効果や、似た取り組みを行っている企業の有無などを判断しやすいでしょう。例えば、ホテル業を営むある事業者では、ホテル内で使用するストローについて、生分解性プラスチックを使用した製品への切り替えを行ったようです。

※事例集URL:一般社団法人 日本経済団体連合会「SDGsに資するプラスチック関連取組事例集」
https://www.maff.go.jp/j/plastic/attach/pdf/pura_kaigi-21.pdf (概要版)
https://www.maff.go.jp/j/plastic/attach/pdf/pura_kaigi-55.pdf (追加事例)

 

環境省「プラスチック・スマートPlastics Smart」

環境省のホームページでも、プラスチック資源の循環に関する取り組み例を探すことが可能です。取り組みの内容や主体、エリア、業種、対応するSDGsの目標などを細かく指定して検索できます。例えば、レジ袋有料化を実施し、その売上の一部を寄付している動物園の活動や、コンビニでのレジ袋削減を呼びかけるためのポップを作成した市町村の事例などが紹介されています。ほとんどの紹介ページには、関連する写真・イラストなどが添付されており、文章だけでなく視覚的に施策内容を確認できるのがメリットです。

※事例集URL:環境省「プラスチック・スマートPlastics Smart」
http://plastics-smart.env.go.jp/caseslist

 

各自治体のホームページ

一部の自治体では、ホームページで事業者のプラスチック問題に対する活動を掲載しています。例えば埼玉県の場合、農業や林業、製造業などの業種別に取り組み例が紹介されています。県内でサービス業を営むある事業者は、3Rの推進を目的としたペーパーレス化の取り組みや、引き取った不用品を寄付する活動を行っているようです。一部の事業者については、取組報告の詳細も掲載されており、内容を細かく確認できます。

また、滋賀県のホームページでは、プラスチックごみやフードロスの削減に向けた事業者の事例が紹介されています。身近な企業の活動を調べたい場合は、各自治体のホームページを確認するのがおすすめです。

※事例集URL:
埼玉県 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0501/sdgs/kigyou-rist.html
滋賀県 https://www.pref.shiga.lg.jp/gomizero/work/effort/107126.html