SDGs

地方創生×SDGs|注目度・注意点・取り組みに欠かせない官民連携プラットフォームを解説

目次
  1. 企業に注目される「地方創生×SDGs」
  2. SDGsが地方創生に役立つ理由
  3. 地方創生でSDGsに取り組む際の注意点
  4. 企業が取り組むために欠かせない地方創生SDGs官民連携プラットフォーム
  5. 成功事例としての自治体SDGsモデル事業

企業のSDGs推進を担当しているものの、自社の経営へSDGsをどのように反映するべきかお悩みではないでしょうか。本コラムでは、ビジネスシーンで注目される「地方創生×SDGs」のメリットや注意点、導入時に活用できるプラットフォーム、企業の事例集などをご紹介します。SDGsとの相乗効果が期待できる地方創生の観点も含めながらお伝えするので、自社のSDGs推進の方針を策定する際にぜひお役立てください。

企業に注目される「地方創生×SDGs」

近年では、「SDGs」と「地方創生」の2つを掛け合わせた取り組みに多くの企業が注目しています。初めに、SDGsと地方創生それぞれの基礎知識をお伝えした上で、ビジネスシーンにおける「地方創生×SDGs」の注目度をご紹介します。

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略語で、2015年の国連サミットで全会一致にて採択された、国際的な開発目標のことです。その内容は、17の目標(ゴール)、169のターゲット、232の指標から構成されています。SDGsへの取り組みでは、「誰一人取り残さない」と誓われています。そのため、開発途上国から先進国まで、全ての国がユニバーサルに目標達成へ向けて行動することが必要です。また、SDGsは各国の政府だけではなく、企業や個人による取り組みも求められています。

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地方創生とは

地方創生とは、日本全国の各地域が、地域活性化により良好な住環境の確保や地域経済の強化へとつなげ、持続可能な地方社会を実現することです。地方創生が必要な背景には、人口の東京一極集中、地方の人口減少や地域経済の縮小などがあります。そこで、2014年には地方創生の政策として「まち・ひと・しごと創生法」が制定されました。さらに、地方創生の中長期的な展望を示す「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」、5カ年の政策目標を示す「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が策定されています。

地方創生SDGsは上場企業や機関投資家の注目度が高い

前述の地方創生とSDGsを組み合わせた「地方創生SDGs」が注目されています。地方創生SDGsとは、官民連携の取り組みで、地方の活性化と持続可能なまちづくりを目指す新たな施策です。近年では、地方創生SDGsへ積極的に参加する企業や自治体が多くなっています。

地方創生SDGsへの注目度の高さは、内閣府地方創生推進事務局による地方創生SDGsに関する調査データからも読み取れます。こちらの調査は上場企業と機関投資家を対象に実施されました。回答企業のうち東証1部に上場しているのは約69%です。以下では、『「令和元年度上場企業及び機関投資家等における地方創生SDGsに関する調査」報告書』を元に、上場企業および機関投資家のデータをご紹介します。

上場企業のデータ

調査データによれば、SDGsの達成へ向けて「既に取組んでいる」と回答した上場企業は約49%、SDGsを「経営戦略へ反映している」と回答した上場企業は39%以上(複数回答)でした。また、地方創生SDGsの達成へ向けて「既に取組んでいる」と回答した上場企業は約37%となっています。

SDGsの達成へ向けて「既に取組んでいる」と回答した上場企業のうち、約67%は地方創生SDGsに関しても「既に取組んでいる」と回答しています。このデータから、上場企業において地方創生とSDGsの双方への関心が高い状況が伺えるでしょう。

機関投資家のデータ

調査データによれば、投資の際にSDGsを考慮している投資家は全体の約61%、ESGを考慮する投資家は、全体の約81%です。このようにSDGsに関する取り組みが業績に影響すると考えられる理由として、「企業としての持続可能性の向上が期待できるため」が最多(複数回答)となっています。

投資家のうち、SDGsに関する政府の方針や施策を知っているのは全体の61.1%でした。さらに、地方創生SDGsへ取り組む企業に積極的に投資する投資家は全体の約54%という結果になっています。地方創生SDGsに関して投資意向が高い状況が伺えます。

【出典】内閣府地方創生推進事務局『「令和元年度上場企業及び機関投資家等における地方創生SDGsに関する調査」報告書』

https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/kaigi/pdf/sdgs_houkokusho_20200330.pdf

SDGsが地方創生に役立つ理由

近年では、地方創生とSDGsを掛け合わせた施策に取り組む企業や自治体が多くなっています。というのも、SDGsは地方創生に役立つ側面があるからです。ここではその理由について紹介します。

施策の相性が良い

SDGsは地方創生の施策と相性が良く、相乗効果を期待できます。例えば、SDGsの達成へ向けた持続可能なまちづくりは、中長期的な視点が求められる地方創生と合致することが多くあります。SDGsのゴールやターゲットが複数の組織をつなぐ共通言語となることで協業が進めば、幅広いステークホルダーとの連携が可能となります。同じ目的へ向けた連携強化により、地域課題の解決が加速化されるようになるでしょう。

注目を集めやすい

SDGsは世界的に共通した目標のため関心を集めやすく、地方創生の取り組みに注目を集められるというメリットがあります。取り組みが広く知られて地方活性化へとつながり、地域経済に好循環が生まれるようになれば、持続可能なまちづくりが実現することができ、地域住民は大きな恩恵を受けられるでしょう。また、注目を集めることで地方創生への理解が促され、取り組みをさらに深めていける可能性もあります。

地方創生でSDGsに取り組む際の注意点

企業や自治体がうまく連携し、地方創生SDGsに取り組めるような状態なっても、いくつか陥りがちな問題があります。ここでは取り組む際に押さえておきたい注意点について解説します。

地域課題を企業や自治体だけで抱え込まない

施策を決める前段階から地元住民の声を聞いたり、住民が施策を評価できる「参加型評価」の形式を取り入れるのも良いでしょう。地元住民を巻き込むことで、地域課題をあぶり出していくことが大切です。施策を成功へ導くには、そのためにも、SDGsの達成期限である2030年時点の地域をイメージした上で、ステークホルダーとの連携を積極的に推進し、情報共有など協働していく姿勢を持ちましょう。

すでに行っている取り組みをSDGs施策に安易にすり替えない

既存の取り組みをSDGsに紐づけて、SDGsに取り組んでいるとアピールすることは本質的な課題解決につながりません。SDGsのゴールに照らし合わせず、施策の中身を変えない状態でSDGsに取り組んでいるように見せる行為は、悪質な場合「SDGsウォッシュ」と呼ばれ、企業や自治体のイメージ低下を引き起こします。

SDGsウォッシュとは?企業にもたらす悪影響と避けるためのポイント
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SDGs施策自体に持続性を持たせる

施策や事業を継続させるには高い自律性が求められます。補助金の期限切れや財源不足などで地域課題を解決できない状態を作り出さないためにも、自治体や企業などステークホルダーが深く連携し、財政的基盤を強固にし、地域を経営していく姿勢を身に付けていくことが重要です。

企業が取り組むために欠かせない地方創生SDGs官民連携プラットフォーム

地方創生SDGsに関する情報交換や、ビジネスパートナーとのマッチングを希望するなら、地方創生SDGs官民連携プラットフォームを活用しましょう。ここでは、内閣府が提供する便利なサービスをご紹介します。

地方創生SDGs官民連携プラットフォームとは

地方創生SDGsの構想を実現するには、他社や自治体との協業が欠かせません。「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」は、そんな地方創生SDGsの推進へ向けた官民連携の場です。こちらは内閣府が提供するプラットフォームで、ステークホルダーとのパートナーシップ促進が期待できます。サービスに会員登録すると、Webサイト上のデータベースを活用し、地域別や取り組み別に会員を検索できる仕組みです。2022年9月現在、会員数は約6,800団体を超え、全国各地で利用されています

活用するメリット

地方創生SDGs官民連携プラットフォームを活用すると、プラットフォーム上で情報発信を行い、地方創生SDGsの普及促進活動ができます。また、会員同士のマッチング支援を受けられるのもメリットです。課題の解決を求める会員と、解決策やノウハウを持つ会員がつながる仕組みとなっています。さらに、会員は分科会へ参加し、学ぶ機会を得られます。地方創生SDGsの知見を深めることが可能です。

地方創生SDGs金融フレームワークとは

地方創生SDGsの推進に関して、併せて押さえておきたいのが、内閣府が提案する「地方創生SDGs金融フレームワーク」です。地方創生SDGs金融フレームワークとは、SDGsに取り組む地域企業へのESG投資を促し、地域経済の活性化を目指すものです。自治体が地域企業を登録・認定し、地域企業へ地域金融機関が投融資を行い、機関投資家・大手銀行・証券が地域金融機関へ投融資を行う仕組みとなっています。SDGsを通じてステークホルダーが連携し、地方創生につなげるというコンセプトがあります。

成功事例としての自治体SDGsモデル事業

今後、地方創生SDGsの施策を検討しているなら、まずは先行して取り組む企業や自治体による成功事例を参考にすると良いでしょう。そこで確認しておきたいのが、内閣府地⽅創⽣推進室の事例集です。

内閣府地方創生推進室では、地方創生SDGsの優れた取り組みを「SDGs未来都市」や「自治体SDGsモデル事業」として選定し、事例紹介を行っています。SDGs未来都市とは、地方創生SDGsへ戦略的に取り組む自治体の、公募による認定制度のことです。その中でも先導的かつ優れた取り組みとして認められると、自治体SDGsモデル事業として支援の対象となります。

SDGs未来都市および自治体SDGsモデル事業の事例集ページでは、他社の優れた取り組み事例を地域別に閲覧できます。地方創生SDGsのご担当者様は、ぜひ一度目を通してみてください。

【参考】内閣府地⽅創⽣推進室「SDGs未来都市・⾃治体SDGsモデル事業 事例集」

https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/pdf/bessatsu1.pdf