コスト関連

【業界別動向】クリーニング業の効果的なコスト削減方法とは?利益率を改善するポイント

目次
  1. クリーニング業界の現状と課題
  2. クリーニング業のコスト削減の具体的方法
  3. デジタル化の導入
  4. 効果的なコスト削減でクリーニング業の経営改善を目指そう
  5. 賃料削減で悩んでいるなら専門のコンサルタントに相談してみませんか?

かつては当たり前だった衣服のクリーニング。しかし、ライフスタイルの変化やファストファッションの台頭により、クリーニング業界は縮小の一途をたどっています。需要減退に加え、人件費や光熱費の高騰も経営を圧迫する大きな要因となっています。こうした厳しい状況下で生き残りをかけ、クリーニング事業者が取り組むべき重要な課題が「利益率の改善」です。

クリーニング業界の現状と課題

クリーニング業界現状

クリーニング業は、衛生的で快適な衣料や住環境を提供し、家事労働の代替サービスとして国民生活に貢献してきました。しかし、近年では形態安定素材の衣料の普及、大規模企業による取次チェーン店の展開や無店舗型取次サービス、インターネット宅配型サービスの登場など、新しい営業形態との競争が激化し、経営環境は大きく変化しています。

クリーニング業の施設数は、2022年度末で74,083施設となり、10年前と比べて42,297施設が減少しました。従業クリーニング師の数も34,869人となり、10年前より16,243人減少しています。従業員数が5人未満の事業者が76.9%を占め、経営者の高齢化も進んでいます。2022年度には、経営者の42.5%が70歳以上であり、高齢化が顕著です。

クリーニング業界課題

経営上の課題としては、最も多いのが「客数の減少」、次いで「原材料費・諸経費の増加」、「客単価の減少」、「立地条件・環境の変化」などが挙げられています。日本政策金融公庫の調査によると、クリーニング業者の問題点として「仕入れ価格や人件費の上昇を価格に転嫁できない」との回答が57.9%を占め、次いで「顧客数の減少」が46.7%、「客単価の低下」が25.7%となっています。

仕入れ価格の上昇に対して、販売価格を引き上げた営業者は45.4%にとどまり、価格転嫁の難しさが浮き彫りになっています。また、従業員の過不足感については、70.7%が「適正」と感じており、22.4%が「不足」としています。

家業としてのイメージが強く、重労働や長時間労働のイメージが定着していること、また、IT化や自動化が遅れていることなどが経営を圧迫する要因として挙げられます。廃業を防ぎ、業界全体を活性化するためにも、若手の人材にとって魅力的な職場環境づくりが急務です。

参照:クリーニング業の振興指針(2024~2028年度/令和6~10年度)(厚生労働省)

クリーニング業のコスト削減の具体的方法

クリーニング業におけるコスト削減においては、単に支出を抑えるだけでなく、経営全体の効率化を図ることが重要です。そのためには、まず自社の収支を把握し、それぞれの項目におけるコスト削減の可能性を検討する必要があります。ここでは、クリーニング店におけるコスト削減の具体的な方法を紹介します。

具体的なコスト削減方法としては、以下のようなものが挙げられます。

①人件費

    *従業員の採用を見直し、人材派遣やパートタイマーを活用する

    *勤務時間の見直しや業務効率化による残業時間の削減

    *多能工化を促進し、従業員一人ひとりの生産性を向上

②光熱費

    *省エネタイプのクリーニング機器の導入やLED照明への切り替え

    *営業時間の短縮や、閑散期における機械の稼働台数の調整

    *断熱材の導入や空調設備の見直しによるエネルギー効率の向上

③消耗品費

    *洗剤やハンガーなどの消耗品をまとめ買いし、仕入れ値を削減

    *リサイクルハンガーの導入や包装資材の簡略化によるコスト削減

    *環境にやさしい洗剤を使用することで、排水処理コストの削減

デジタル化の導入

クリーニング業の課題解決には、デジタル活用が大きなポイントとなります。ここでは、クリーニング業の課題に対し、どのような対策が考えられるかデジタル化導入の例を紹介します。

①POSレジの活用でミスのない高品質な接客を目指す

POSレジは、売上や顧客管理を効率化し、店舗運営をサポートするツールです。導入の際には、自社の課題やニーズに合わせ、ターミナル型・パソコン型・タブレット型などから最適なタイプを選びましょう。また、導入コストを抑えるために、自治体や経済産業省の補助金制度の活用も検討してください。

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POSレジを導入すれば、売上・顧客・商品管理を一元化し、データをリアルタイムで把握できるので、売上状況の可視化や業務効率の向上が期待できます。また、顧客の好みや取引履歴を登録し、スタッフ間で共有することで、一貫したきめ細かな接客が可能になります。過去のデータをもとに需要を予測し、事前準備や対応策を講じることで、スムーズな接客対応も実現します。

②POSレジを活用した工場での作業状況を可視化

工場での作業状況を可視化し、生産性を向上させるためには、POSレジのデータを活用することが効果的です。POSレジを導入し、入荷から出荷までの作業情報を記録すれば、工場内の作業進捗をリアルタイムで把握できるようになります。例えば、入荷時に点数や日時を登録し、作業工程ごとに進捗を記録することで、作業が現在どの段階にあるかを簡単に確認が可能です。また、出荷情報も登録すれば、漏れがないかのチェックも容易になります。

次に、POSレジに記録された工場データをもとに、生産性の分析を行いましょう。各作業の開始時間や終了時間が記録されていれば、作業にかかる時間を自動的に算出でき、管理職が後から集計する手間が省けます。このデータを活用して、作業者ごとの生産性の差や改善点を特定し、効率化の施策を立てることが可能です。

さらに、POSレジと連動させれば、顧客から預かった商品の進捗状況も管理でき、商品がどの工程にあるかを可視化できます。このように、全体の工程管理を支援することで、作業の滞留や空き状況に応じた適切な管理が行えます。

最後に、経理のデジタル化も進めましょう。POSレジデータを経理ソフトに連動させることで、紙の伝票を使った経理処理が不要となり、電子帳簿保存法の要件にも対応可能です。デジタル化により、経理業務の時間と労力を大幅に削減できれば、残業の削減にもつながります。

POSレジの導入事例

山梨県にあるクリーニングうみのでは、現状の課題として、スタッフが業務に手一杯で、特に繁忙期には業務負担が増加してしまうこと、人件費の上昇により従業員の確保が難しいこと、さらには洗剤や燃料費の高騰により経費負担が大きくなっている一方で、価格の引き上げが難しいという問題に直面しています。これらの課題を解決するために、業務の合理化を進めて人手不足の解消を図るとともに、工場運営を含めた経費抑制策を模索しています。

現在、売上データを活用して顧客が来店する曜日や時間帯を分析し、効率的なスタッフ配置の実現を目指しているほか、POSデータを利用して入荷点数の季節変動を把握し、工場を含めたシフト管理やスケジュール管理の効率化を図っています。さらに、顧客がセルフ精算できるPOSレジの導入や、受付と商品の自動引き渡しが可能な機器の導入も検討しており、作業の効率化を通じて人手不足の解消を目指しています。

機器の導入にあたっては中小企業診断士との連携を深めながら、山梨県の助成金活用も視野に入れているとのことです。

参照:デジタル化による生産性向上のすすめ(厚生労働省)

③新規顧客開拓のためのホームページやSNSの活用

新規顧客の開拓には、ホームページやSNSを活用することが効果的です。Googleビジネスプロフィールに店舗情報を登録することで、Googleマップ上に掲載され、近隣の消費者から見つけやすくなります。オーナー登録をして、店舗の写真やメッセージを投稿し、情報発信に役立てましょう。また、地域紹介サイトなど無料で掲載できるサイトも活用するとよいです。

次に、ホームページの整備も重要です。現代では低コストでホームページが作成可能なので、店舗の基本情報やサービス内容を分かりやすく紹介し、アクセス方法や営業時間も明確に掲載します。さらに、店舗の強みや雰囲気が伝わる写真や動画、顧客の声を取り入れることで、新規顧客にも魅力が伝わりやすくなります。

また、SNSやホームページでは、エリアやクリーニングメニュー、専門技術に関連するキーワードやハッシュタグを設定することで、関連情報が検索されやすくなり、広範な層への認知向上が期待できます。動画を使ってこだわりや専門技術の丁寧な作業工程を伝えるのも効果的です。

参照:デジタル化による生産性向上のすすめ(厚生労働省)

収益性向上のための新しいビジネスモデル

従来の対面型のクリーニングサービスに加えて、新しいビジネスモデルを導入することも、収益の柱を増やし、安定的な経営基盤を築くことにつながります。

宅配クリーニングやサブスクリプションの活用

宅配クリーニングは、店舗に出向く手間を省き、自宅や職場でクリーニング品を受け渡しできるため、時間のない共働き世帯や単身者を中心に需要が高まっています。集客エリアを拡大できる点も大きなメリットです。例えば、都市部にあるクリーニング店が、郊外に住む顧客を獲得するために、宅配サービスを導入するケースも増えています。

サブスクリプションモデルは、毎月定額料金を支払うことで、決められた点数までのクリーニングを利用できるサービスです。顧客にとっては、利用頻度が高い場合に割安になる点が魅力です。クリーニング店にとっては、安定収入が見込めるため、経営計画が立てやすくなるメリットがあります。例えば、スーツやワイシャツなど、頻繁にクリーニングに出すビジネスパーソンをターゲットにしたサブスクリプションサービスを提供するケースが増えています。

効果的なコスト削減でクリーニング業の経営改善を目指そう

クリーニング業界の経営改善には、効果的なコスト削減が鍵となります。市場の変化に対応しつつ利益率を上げるためには、戦略的なコスト管理が欠かせません。

競争力を保つためには、環境に配慮しながら効率を高め、顧客満足度の向上を図る持続可能な改革が求められます。これらを実現することで、クリーニング業界はさらなる成長の可能性を広げられるでしょう。

賃料削減で悩んでいるなら専門のコンサルタントに相談してみませんか?

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