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オフィス原状回復の費用と範囲を徹底解説|トラブル回避とコスト削減のポイント

- 目次
原状回復とは?オフィス退去時に必要な対応を解説
オフィスを退去する際には、「原状回復」は必ず対応すべき重要なプロセスの一つです。原状回復とは、借りた物件を契約開始時の状態に戻すことを指し、賃貸契約に基づく借主の義務とされています。退去に際しては、契約書の内容や特約を事前に確認し、必要な対応を把握しておくことが大切です。こうした準備をしておくことで、原状回復に関するトラブルを未然に防ぐことができます。
原状回復の定義と法律上の位置づけ
原状回復は、民法に基づく借主の義務の一部です。民法第621条では、借主は物件を適切に使用し、契約終了時には元の状態に戻す必要があると定められています(ただし通常損耗・経年変化は除外)。ただし、契約書に記載された「特約」によって、原状回復の範囲や内容が大きく変わることがあります。
参考:e-Gov法令検索「譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(令和七年法律第五十七号)」
オフィスにおける原状回復の範囲とは
オフィス退去時に求められる原状回復の範囲は、契約内容や使用状況によって異なりますが、一般的には以下のような項目が含まれます。
該当箇所 | 詳細 |
壁紙や塗装 | 壁に傷や汚れがある場合は、補修や再塗装が必要です。特に、ポスターや棚の設置による穴や日焼け跡などは、原状回復の対象となることが多く、張替え費用が発生します。 |
床材(カーペット・フローリングなど) | 椅子や什器の移動による擦り傷、飲食によるシミなどがある場合は、張替えや部分修繕が求められます。カーペットの場合、1坪あたりの張替え費用は約5,000〜10,000円が目安です。 |
配線・設備 | 照明器具、空調設備、LANケーブルなどを取り外した場合は、元の状態に戻す必要があります。特に、天井や壁に穴を開けて設置した設備は、撤去後の補修も含めて原状回復の対象になります。 |
これらの範囲は、賃貸契約書に記載された特約や条件によって変わるため、退去前に契約書を確認し、どこまで対応が必要かを明確にしておくことが重要です。場合によっては、通常使用による損耗が免除されるケースもあるため、契約書の条項を読み込んだうえで、貸主や管理会社と事前にすり合わせを行うことが推奨されます。
「借りたときの状態に戻す」の誤解
「借りたときの状態に戻す」という表現は、原状回復の場面で誤解を招きやすい言い回しです。実際には、通常の使用による自然な劣化(例:床の擦り傷、壁紙の色あせ、照明の経年劣化など)については、借主が修繕費を負担しなくてもよいとされるケースが多くあります。
一方で、過失による損傷(例:什器の設置による壁の穴、飲食によるカーペットのシミ、配線の撤去による天井の破損など)は、借主の責任で修繕が必要になる可能性があります。
こうした責任の範囲は、契約書に記載された特約条項によって定められているため、退去前には契約書をよく読み、どの部分が借主負担になるのかを確認することが重要です。特に、原状回復義務の範囲が曖昧な場合は、貸主や管理会社に事前に確認しておくことで、不要な費用負担やトラブルを防ぐことができます。
契約書の特約に要注意!原状回復の義務と法的リスク
オフィスの原状回復に関する責任は契約書に明記された特約によって大きく変わる可能性があります。このため、特に契約書に記載される特約条項を十分に理解し、法的リスクを回避することが求められます。
契約書に記載される原状回復に関する特約条項の例
賃貸契約書には、原状回復に関する特約が記載されていることが多く、退去時の費用負担や対応範囲に大きく影響します。代表的な特約には以下のようなものがあります。
特約条項 | 詳細 |
全額負担特約 | 退去時の原状回復費用を借主が全額負担するという内容。例えば、通常使用による損耗も含めて、壁紙・床材・設備の修繕費をすべて借主が支払うケースがあります。 |
免除特約 | 契約期間が長期(例:3年以上)である場合や、設備の状態が次の入居者にも使用可能と判断される場合など、一定条件を満たすことで原状回復義務が免除される条項です。 |
修繕範囲の明確化特約 | 借主が負担する修繕工事の範囲を具体的に定めた条項。たとえば、「壁紙の張替えは借主負担だが、天井の塗装は貸主負担」といったように、項目ごとに責任範囲が明記されていることがあります。 |
これらの特約は、契約締結前に必ず確認し、内容を理解したうえで合意することが重要です。曖昧なまま契約すると、退去時に予期せぬ費用を請求される可能性があります。
民法改正による影響と注意点
2020年の民法改正により、賃貸借契約における借主・貸主の義務がより明確化されました。原状回復に関しては、以下の点に注意が必要です。
- 通常損耗の扱いが明文化:
改正後の民法では、「通常の使用による損耗や経年劣化は借主の原状回復義務に含まれない」と明記されました。これにより、借主が不必要な修繕費を負担するリスクが減少しています。 - 特約の有効性には厳格な条件が求められる:
契約書に特約が記載される場合に、その内容が法的に有効と認められるためには、厳格な条件を満たす必要があります。具体的には、借主が負担する範囲が契約書に具体的かつ明確に記載されていること、そして借主がその内容を十分に理解し、合意していることが求められます。抽象的な表現や包括的な記載では、裁判で無効と判断される可能性があるため、契約書の内容を慎重に確認することが重要です。
契約内容に不安がある場合は、弁護士(不動産法務に詳しい専門家)や宅地建物取引士、不動産管理会社の担当者などに相談することをおすすめします。例えば、以下のようなケースでは専門家の助言が有効です。
- 契約書に記載された特約の意味や法的効力が不明な場合
- 原状回復の範囲や費用負担について、貸主と認識が食い違っている場合
- 敷金返還の条件や相殺額に納得できない場合
- 民法改正の影響で、従来の契約内容との違いが気になる場合
専門家に相談することで、法的根拠に基づいた判断ができるようになり、不要な費用負担やトラブルを未然に防ぐことが可能になります。特に退去前のタイミングで相談しておくと、交渉や準備がスムーズに進みます。
よくあるトラブル事例とその回避策
オフィス退去時の原状回復に関しては、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
トラブル事例 | 詳細 |
敷金返還トラブル | 退去後、貸主から原状回復費用として高額な請求があり、敷金がほとんど返還されないケース。たとえば、壁紙の軽微な汚れや床の通常使用による摩耗まで借主負担とされることがあります。 |
修繕範囲の認識違い | 借主は「通常損耗」と認識していた箇所について、貸主が「修繕対象」と主張することで、費用負担を巡って対立が生じるケース。特に、契約書に修繕範囲が曖昧に記載されている場合に起こりやすいです |
これらのトラブルを防ぐためには、以下の対策が有効です。
対策 | 詳細 |
契約書の事前確認 | 退去前に、契約書の「原状回復義務」や「特約条項」を丁寧に読み込みましょう。たとえば、「通常損耗は借主負担外」と記載されているか、「全額負担特約」があるかなどを確認し、不明点は貸主や管理会社に質問しておくことが重要です。 |
業者との綿密な打ち合わせ | 原状回復工事を依頼する業者とは、現地調査の段階で修繕箇所や工事内容を詳細に確認しましょう。具体的には、以下の点を確認することが重要です。 |
また以下の項目を事前に契約書や貸主に確認するようにいたしましょう。
確認項目 | 具体例 |
どの箇所が修繕対象となるのか | 壁紙、床材、天井、設備など |
修繕の理由 | 通常損耗か、借主の過失によるものか |
工事の方法と範囲 | 全面交換か部分補修か |
見積もりの内訳 | 材料費・施工費・諸経費など |
工事の必要性と妥当性 | 貸主の要求に基づくものか、業者の判断か |
見積もりの内訳が不明瞭な場合は、項目ごとの費用や工事の必要性について説明を求めることで、不要な工事を防げます。
これらの対策を講じることで、原状回復に伴う不要な費用負担や貸主との認識違いによるトラブルを未然に防ぐことが可能です。退去は事務的な手続きであると同時に、契約理解と交渉力が求められる場面でもあります。

原状回復にかかる費用相場と内訳
オフィスの原状回復にかかる費用は、物件の広さや状態、工事内容、依頼する業者によって大きく異なります。初めて退去を経験する中小企業の経営者や総務担当者にとっては、事前に費用の相場感を把握し、予算を立てておくことが重要です。以下では、2025年時点の最新相場をもとに、坪単価の目安、工事内容別の費用内訳、実際の事例をご紹介します。
2025年時点の坪単価の目安と規模別の費用感
原状回復費用は一般的に「坪単価」で算出されます。地域や業者によって差はありますが、以下が目安です。
オフィス規模 | 坪単価の目安 | 想定条件 |
小規模(〜30坪) | 約4.0〜6.0万円 | 一般的な内装、標準設備 |
中規模(31〜100坪) | 約6.0〜11.0万円 | 床・壁・天井の更新含む |
大規模(101坪〜) | 約11.0〜15.0万円 | 高機能設備やスケルトン戻し含む |
物件のグレードや立地、契約条件によっては、坪単価が6万円を超えるケースもあります。自社の坪数をもとに概算し、複数業者の見積もりを比較することで、適正価格を把握しやすくなります。
工事内容別の費用内訳
原状回復工事にはさまざまな項目が含まれます。代表的な工事項目と単価の目安は以下の通りです。
工事項目 | 単価目安 | 備考 |
壁紙(クロス)張替え | 1,400〜2,000円/㎡ | 素材・厚みにより単価変動 |
タイルカーペット張替え | 3,500〜5,000円/㎡ | 接着方法で単価変動 |
天井塗装 | 1,800〜2,600円/㎡ | 下地状況で単価変動 |
配線復旧工事 | 40,000〜150,000円/件 | LAN・電源系統など |
設備の取り外し | 30,000〜80,000円/件 | 空調・照明・什器など |
これらの費用は、オフィスの状態や工事の難易度によって変動します。必ず複数業者から見積もりを取得し、工事内容と金額の妥当性を確認しましょう。
原状回復にかかる期間とスケジュールの立て方
オフィスの原状回復にかかる期間を正しく把握し、余裕を持ったスケジュールを立てることは、退去トラブルを防ぎ、業務に支障を出さないために非常に重要です。ここでは、一般的な工事の流れ、退去通知から逆算したスケジュール例、そして急ぎの場合の対応策について具体的に解説します。
工事の流れと各工程の目安
原状回復工事は、以下のようなステップで進行します。
ステップ項目 | 詳細 |
現地調査(1日) | 業者がオフィスを訪問し、壁・床・天井・設備の状態を確認。電気・空調・配線の撤去範囲や、スケルトン戻しの有無などもこの段階で判断されます。 |
見積もり提出(3〜7日) | 調査結果をもとに、工事項目ごとの費用を記載した見積書が提出されます。内訳の明確さや、通常損耗の扱いに注意して確認しましょう。 |
契約締結(1日) | 見積もりに納得したら、正式に契約を締結。工期・費用・支払い条件・追加費用の有無などを明文化しておくことが重要です。 |
工事準備(2〜3日) | 資材の手配、作業員のスケジュール調整、ビル管理会社への工事申請などを行います。ビルによっては工事可能時間帯が制限されているため、事前確認が必要です。 |
工事実施(約1週間) | オフィスの広さや工事内容によって変動します。スケルトン戻しや空調・電気工事が含まれる場合は1〜2週間かかることもあります。 |
完了検査(1日) | 貸主または管理会社立ち会いのもと、工事内容を確認。不備があれば再工事が必要になるため、余裕を持った日程設定が望ましいです。 |
この流れを把握しておくことで、退去日から逆算した計画が立てやすくなります。
退去通知から逆算したスケジュール例(1ヶ月前通知の場合)
例えば、退去通知を1ヶ月前に出す場合のスケジュールは以下のようになります。
期間 | やること |
退去通知提出(30日前) | 管理会社・貸主に退去の意思を伝える |
通知後1週間以内 | 業者に現地調査を依頼、見積もり取得 |
通知後10日以内 | 見積もり確認後、契約締結 |
通知後2〜3週目 | 工事準備・資材手配・ビル申請など |
退去日2週間前 | 原状回復工事スタート(5〜7日間) |
退去日1〜2日前 | 完了検査・鍵の返却・引き渡し |
ビルによっては「退去30日前までに原状回復完了が必要」とされる場合もあるため、契約書や管理規約の確認が必須です。
急ぎの場合の対応方法(1〜2週間で退去したい場合)
急ぎで原状回復を進める必要がある場合は、以下の対応が有効です。
対応 | 詳細 |
即日対応可能な業者を選定 | 「原状回復専門業者」や「短納期対応可」と明記された業者を事前にリストアップしておくと安心です。 |
短期工事プランの交渉 | 「工事内容を最小限に絞る」「夜間・休日工事を活用する」など、納期優先のプランを相談しましょう。 |
早めの現地調査依頼 | 退去通知前でも、仮見積もりや現地調査を依頼しておくことで、スムーズに着手できます。 |
必要最低限の工事に絞る | 貸主と協議のうえ、「次の入居者がそのまま使う設備は残置可」などの合意が取れれば、工期短縮につながります。 |
急ぎの原状回復では、「段取りの早さ」と「確認の丁寧さ」がトラブル回避のカギになります。
トラブルを避けるための事前準備と交渉術
原状回復に関するトラブルは、契約書の確認と貸主・管理会社との円滑なコミュニケーションによって、未然に防ぐことができます。ここでは、契約書の確認ポイントや、貸主・管理会社とのやり取りで注意すべき点について解説します。
契約書の確認ポイントと質問例
契約書には、原状回復に関する重要な情報が記載されています。退去前にしっかりと確認しておくことで、不要な費用負担や認識違いによるトラブルを防ぐことができます。以下は、確認すべき主なポイントと、貸主に対して行うべき質問例です。
- 原状回復義務の範囲:「どこまで戻す必要がありますか?」
- 特約の内容:「この特約は具体的にどのような意味がありますか?」
- 修繕負担のルール:「通常損耗は借主負担になりますか?」
- 敷金返還の条件:「敷金はどの条件で返還されますか?」
これらの項目は、契約書の条文だけでなく、実際の運用や過去の事例も踏まえて確認することが重要です。
原状回復業者は誰が選ぶのか?
契約書の確認において、原状回復工事を誰が手配するかも見落とせないポイントです。多くの事業用物件では、貸主が指定する業者での施工が求められるケースがあり、「貸主指定業者による施工」と契約書に明記されていることがあります。これは、貸主が工事品質や建物の維持管理を重視しているためです。
一方で、業者指定がない場合や、貸主の了承が得られれば、借主が業者を選定できるケースもあります。たとえば、過去に同じビルで退去したテナントが自社で業者を選定した事例がある場合、交渉の余地がある可能性もあります。
費用や工期に直接影響するため、業者選定の自由度についても契約書で確認し、必要に応じて貸主と事前にすり合わせておくことが、トラブル回避につながります。
貸主・管理会社との円滑なコミュニケーション
契約書の確認だけでなく、貸主や管理会社とのコミュニケーションも、原状回復をスムーズに進めるための重要な要素です。以下のような対応を心がけましょう。
- 定期的な連絡:
退去予定が決まったら、定期的に貸主や管理会社と連絡を取り、現在の状況を共有します。これにより、誤解を招く可能性を減少させることができます。 - 明確な意思表示:
自社の意向や不安については、なるべく明確に伝えるように心がけましょう。誤解を避けるため、具体的な事例や状況を交えて説明すると良いでしょう。 - 問題発生時の迅速な対応:
万が一問題が発生した場合は、すぐに連絡を取り、解決策を協議します。早期の対応がトラブルを大きくしないための鍵です。 - 書面による記録:
重要なやり取りについては、メールや書面に記録を残しておくことが推奨されます。後日、確認が必要な場合に役立ちます。 - 柔軟な姿勢:
払い戻しや交渉に対して柔軟な姿勢を持つことで、相手との信頼関係を構築しやすくなります。特に貸主との関係を重視し、相手の立場にも配慮することが重要です。
このように、契約書の確認と貸主との丁寧なコミュニケーションを通じて、原状回復に関するトラブルを未然に防ぐことが可能です。事前準備と信頼関係の構築が、スムーズな退去の鍵となります。
敷金返還と原状回復|損しないための実務ポイント
敷金返還と原状回復の関係とは?損をしないための基本知識
オフィス退去時における「敷金返還」と「原状回復費用」は密接に関係しています。契約内容や退去時の対応次第で、敷金が全額返還されるかどうかが大きく変わるため、事前の準備と理解が不可欠です。ここでは、敷金がどこまで返ってくるのか、原状回復費用との相殺の仕組み、トラブルを避けるための準備について解説します。
敷金はどこまで返ってくる?返還額に影響する3つの要因
敷金は、賃貸契約時に貸主へ預ける保証金であり、退去時に原状回復費用などを差し引いた残額が返還されます。返還額に影響する主な要因は以下の通りです。
- 原状回復義務の履行状況:
借主が契約に基づく原状回復義務を適切に履行しているかどうかが、返還額に直結します。たとえば、壁紙の汚れや床の傷を放置したまま退去すると、修繕費が敷金から差し引かれる可能性があります。 - 通常使用による損耗の扱い:
2020年4月1日に施行された改正民法により、通常の使用による損耗(経年劣化など)は借主の負担対象外と明記されました。例えば、日焼けによる壁紙の色あせや、椅子による軽微な床の凹みなどは、敷金から差し引かれるべきではありません。 - 貸主の請求根拠の妥当性:
貸主が原状回復費用を敷金から差し引く場合、その請求内容が契約書や特約に基づいているかが重要です。たとえば、ハウスクリーニング代を敷金から差し引くには、契約書に明記されている必要があります。
敷金がどこまで返ってくるかは、契約内容や退去時の状況に大きく依存します。
原状回復費用との相殺の仕組み
退去時に発生する原状回復費用は、敷金から差し引かれるのが一般的です。以下の流れで相殺が行われます。
- 費用の算定:
業者による現地調査と見積もりをもとに、原状回復にかかる費用が算定されます。たとえば、クロスの一部汚れでも全面張替えが必要とされる場合があり、費用が高額になることもあります。 - 敷金との相殺:
確定した費用が敷金から差し引かれ、残額が返還されます。費用が敷金を上回る場合は、追加請求されることもあります。 - 記録の保管:
原状回復の見積書や請求書は必ず保管しておきましょう。万が一トラブルが発生した際の証拠になります。退去立会時の写真や動画も有効です。
このように、原状回復費用と敷金の相殺に関しては、事前にしっかりとした理解を持ち、業者からの見積もりの妥当性を確認することが必要です。
返還トラブルを避けるための準備
敷金返還に関するトラブルを未然に防ぐためには、以下の準備が効果的です。
- 契約書の確認:
原状回復義務や敷金の取り扱いについて、契約書の該当条項を事前に確認しておきましょう。特約の有無や内容も重要です。 - 現状記録の保存:
入居時や退去前に、オフィスの状態を写真や動画で記録しておくことで、損傷の有無を客観的に証明できます。特に壁紙や床材、設備の状態は重点的に記録しましょう。 - 業者との事前協議:
原状回復工事の内容や費用について、業者と事前に打ち合わせを行い、認識のズレを防ぎます。見積もりの内訳や工事範囲の説明を求めることが大切です。 - 交渉資料の準備:
敷金返還に関する交渉では、契約書や入居時の状態を記録した写真・動画や工事見積書・請求書の控えといった記録資料をもとに自社の立場を明確に伝えることが重要です。過去の事例やガイドラインを参考にするのも有効です。 - スケジュールの確認:
退去日が近づく前に、貸主や業者とスケジュールを共有し、余裕を持った対応を心がけましょう。完了検査や精算のタイミングも事前に確認しておくと安心です。
このような準備を行うことで、敷金返還に関するトラブルを未然に防ぎ、スムーズな退去手続きを進めることができます。契約書の理解と記録の徹底が、損をしないための最大のポイントです。
原状回復が不要になるケースも?契約書の特約を確認
オフィスの原状回復については、契約書に特約が設けられている場合があります。特約によっては原状回復が免除されるケースもあるため、事前に確認することが重要です。ここでは、原状回復免除の特約例や交渉の可能性、契約時に確認すべきポイントについて解説します。
原状回復免除の特約例
オフィスの原状回復については、契約書に特約が設けられている場合があります。特約によっては、原状回復義務が一部または全部免除されることがあり、退去時の費用負担を大きく軽減できる可能性があります。以下は代表的な特約の例です。
特約例 | 詳細 |
期間限定特約 | 契約期間が3年以上など一定期間を超える場合、通常損耗や経年劣化に伴う修繕費用を借主が負担しないとする特約。 |
特定設備の取り扱い特約 | 家具付きオフィスなどで、設置済みの設備について「原状回復不要」とする条項。たとえば、備え付けの棚や照明器具をそのまま残して退去できるケース。 |
設備の使用条件に関する特約 | 設備が老朽化しており、次の入居者も同程度の状態で使用することが前提の場合、原状回復を免除する条項。 |
営業用施設の特殊事情による特約 | 飲食店や美容室など、業種特有の内装について、貸主が次のテナントに引き継ぐ意向がある場合、一部の原状回復を免除することがある。 |
これらの特約は、契約書に明記されている必要があり、口頭での合意や曖昧な記載では無効となる可能性があります。また、借主がその内容を十分に理解し、納得したうえで契約していることが法的にも求められます。
交渉で原状回復を減らせる可能性
契約書に原状回復義務が記載されていても、交渉によって負担を軽減できる場合があります。交渉のポイントは以下の通りです。
ポイント | 詳細 |
退去理由の説明 | 経営状況の悪化や事業縮小など、合理的な事情を説明することで、貸主の理解を得られる可能性があります。 |
契約更新時の交渉 | 契約期間の延長と引き換えに、原状回復の条件を緩和する交渉も有効です。たとえば「次回更新時は壁紙の張替えを免除する」など。 |
市場状況の共有 | 工事費用の高騰や賃貸市場の空室率などを背景に、貸主にとっても早期退去や次の入居者確保が優先される場合、交渉の余地が生まれます。 |
相手方に納得してもらえる理由を示すことで、原状回復の条件を見直すチャンスを得られるかもしれません。
契約時に確認すべき原状回復・敷金のポイント
賃貸借契約書を締結する際には、以下の点を必ず確認しましょう。
確認すべきポイント | |
原状回復義務の範囲 | どの部分まで借主が修繕する必要があるか。壁紙、床材、設備などの具体的な対象を確認。 |
免除特約の有無 | 原状回復が不要となる条件や範囲が明記されているか。曖昧な表現は避け、具体的な金額や対象を記載しているかが重要です。 |
敷金・保証金の扱い | 返還条件や原状回復費用との相殺ルール。償却条項がある場合は、その金額や理由も確認。 |
除外条件・制限事項 | 原状回復義務に関する例外や、借主に不利な条項(例:自然損耗まで借主負担とするなど)が含まれていないか。 |
これらを事前に確認し、納得したうえで契約を結ぶことで、退去時の負担やトラブルを防ぐことができます。特約の有効性は、借主が内容を理解し、合理的な理由があるかどうかで判断されるため、契約時の説明と記録も重要です。
退去前に確認したい原状回復チェックリスト
オフィスの退去前には、原状回復に関するポイントをしっかりと確認しておくことが重要です。これにより、費用の予測が立てやすくなり、貸主との認識違いによるトラブルを防ぐことができます。以下のチェックリストを参考に、必要な準備を進めましょう。
退去通知前にやるべきこと
退去通知を出す前には、以下の点を確認することが必要です。
確認項目 | 詳細 |
オフィスの現状把握(損傷箇所のリストアップ) | 壁紙の汚れ、床の傷、設備の不具合など、損傷箇所をリストアップ。写真や動画で記録しておくと、後の交渉資料になります。 |
契約書の再確認(原状回復・敷金条項) | 原状回復義務や敷金返還に関する条項、特約の有無を確認。特に「貸主指定業者」や「全額負担特約」があるかどうかは重要です。 |
工事業者のリサーチと見積もり準備 | 契約上、借主が業者を選べる場合は、原状回復の実績がある業者を複数比較。概算見積もりを取得しておくと予算計画に役立ちます。 |
移転スケジュールの立案と関係者への共有 | 退去日から逆算して、工事期間・検査日・引き渡し日を設定。社内の担当者やビル管理会社とも共有しておきましょう。 |
退去通知は原則撤回できないため、これらの準備をしっかり整えておくことが望ましいです。
工事前に確認すべき項目
原状回復工事が始まる前には、以下の項目を確認することが求められます。
確認項目 | 詳細 |
業者による現地調査の実施 | 壁・床・天井・設備の状態を確認し、工事範囲を明確化。貸主立ち会いが必要な場合もあるため、日程調整を早めに。 |
見積もり内容の確認(内訳・金額の妥当性) | 工事項目ごとの内訳、単価、諸経費の有無を確認。不明点は業者に質問し、追加費用のリスクを減らします。 |
工事範囲の明確化(通常損耗の扱い含む) | 契約書に基づき、借主が負担すべき範囲を確認。経年劣化や通常使用による損耗は原則負担不要です。 |
工事スケジュールの調整と共有 | 工事開始日・完了予定日・検査日を業者とすり合わせ。ビルの工事可能時間帯(例:平日9〜17時)にも注意が必要です。 |
これらの確認をすることで、原状回復工事がスムーズに進行します。
貸主・管理会社との確認事項
退去前には貸主や管理会社とのコミュニケーションを忘れずに行いましょう。以下の点を確認することが重要です。
確認事項 | 詳細 |
退去日の正式確認 | 契約書に記載された通知期限や退去日を再確認。口頭ではなく、メールなどで記録を残すのが安心です。 |
原状回復ルールの再確認(特約の有無) | 貸主が独自のルールを設けている場合もあるため、契約書と実際の運用に差がないか確認します。 |
敷金返還の条件と手続き | 返還時期、相殺の有無、精算方法などを確認。敷金の償却条項がある場合は、その金額と根拠も明確にしておきましょう。 |
業者選定に関する承認の有無 | 借主が業者を選べるかどうか、貸主の承認が必要かを確認。貸主指定の場合は、見積もりの妥当性もチェックポイントです。 |
このように、退去前に必要な確認事項を整理しておくことで、原状回復に関するトラブルを未然に防ぎ、安心して退去手続きを進めることができます。
まとめ|原状回復は「早めの準備」と「正しい知識」がカギ
オフィス退去時における原状回復は、企業にとって重要なプロセスです。特に初めて退去・移転を経験する中小企業の経営者や総務担当者にとっては、「早めの準備」と「正しい知識」が、費用の無駄やトラブルを防ぐための鍵となります。
指定業者であっても、原状回復の費用は削減できる
原状回復工事の業者が貸主指定であっても、費用を抑える余地はあります。たとえば、工事内容の見直しや不要な作業の削減を業者と交渉することで、見積もり金額が下がるケースがあります。
また、通常損耗(経年劣化)に該当する箇所は借主負担ではないため、契約書や国土交通省のガイドラインをもとに、工事対象から除外できる可能性もあります。貸主指定業者であっても、見積もりの内訳を確認し、「なぜこの工事が必要なのか」「どこまでが借主負担なのか」を明確にすることで、不要な費用を防ぐことができます。
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実は原状回復費用だけでなく「別拠点のオフィス賃料」も見直しできる
原状回復費用は、退去時に一度だけ発生するスポット費用(変動費)ですが、テナント経営において継続的にかかる固定費の代表格が「賃料」です。
「長年同じ条件で借りている」「周辺相場と比べて高い気がする」といった場合に、賃料の見直しによって、毎月のコストを継続的に削減できる可能性があります。
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